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ソニー「aibo」は「先代」を超えられるか?

読売新聞メディア局編集部 中根靖明
 ソニーの新型ペットロボット「aibo(アイボ)」が、「戌年」の来年1月11日に発売される。1が3つ並ぶ「ワン・ワン・ワン」の日だそうだ。1999年に発売された初代AIBOは一部のファンの間で熱狂的な人気となり、2014年にサポート(修理対応)が打ち切られた後「合同葬」が営まれたほどだった。「新生aibo」はどこまで進化しているのか、また、先代のようにサポート打ち切りでファンを落胆させることはないのか。商品企画や開発を統括する矢部雄平、松井直哉両氏に話を聞いた。

「もう一度ロボットに挑戦」

 ――先代の発売から19年。新たにaiboを発売する狙いは何でしょうか。

  • 新生「aibo」。かつての「AIBO」より犬に近い風貌だ。
    新生「aibo」。かつての「AIBO」より犬に近い風貌だ。

 矢部 ソニーは99年に(初代)AIBOを発売し、2006年に販売を終えました。しかし、その後も社内ではロボットはもちろん、人工知能(AI)も含めて技術開発は継続して行っていました。特にAIはデジタルカメラやプレイステーションなどの製品にも生かされています。

 そして、無線ネットワークの環境や各種センサーの技術、クラウド(コンピューティング、遠隔サーバーに情報を蓄積する仕組み)を使ったAI、そしてアクチュエーター(駆動部品)などの準備環境がそろった。このタイミングが、「もう一度ロボットに挑戦しよう」というひとつのきっかけになりました。

 ――先代で「AIBOロス」を経験した人にも満足してもらえる出来栄えですか。

 松井 はい。もちろん先代のAIBOから進化させていますし、名前も引き継いでいます。そのあたりには自信を持っています。

 ――ユーザーはどんな年齢層を中心に想定しているのでしょうか。

 松井 先代は40~50代のユーザーの方が多かったんです。我々としてはまず、その年齢層をターゲットにしています。

成長する「クラウドAI」

 ――今回のaiboのAIの大きな特徴とは何でしょうか

  • インタビューに応じる矢部氏(左)と松井氏
    インタビューに応じる矢部氏(左)と松井氏

 松井 クラウドAI(共通AI)の特徴としては(全ユーザーのaiboのデータを蓄積する)「情報集約型」であるということです。ユーザーの皆さんとのインタラクション(やり取り)をどんどん学んでいくんです。ユーザーと顔を合わせるときや、ユーザーの問いかけなどのデータを取得し、どんどん(AIで)学習させていきます。そして、(クラウドを通じ、(すべてのaiboが)どんどん賢くなっていきます。

 ――一方で、一体一体のaiboの個性を表現するための一体ごとの「パーソナルAI」も備え、こちらもクラウドにデータを蓄積するのですよね。ここではどんな処理をするのですか。

  • aiboのAIの仕組み(ソニー提供)
    aiboのAIの仕組み(ソニー提供)

 松井 まず、それぞれのaiboがユーザーと接してくれた時の情報などをクラウド側(のパーソナルAI)に集約させます。そして(クラウドの共通AIにデータの一部を送って)ほかのaiboにもそういう行動をさせるようにしたり、(すべての)ユーザーとのコミュニケーションを円滑化させたり、全体的に「最適」な行動をとったりするようになっていくのです。

 ――では、最初はユーザーの言うことを聞かないということなのでしょうか。

  • 矢部雄平氏(やべ・ゆうへい) ソニーAIロボティクスビジネスグループ事業企画管理部統括部長。本社経営企画、プレイステーションの経営企画、事業企画を経て、aiboの開発当初から参画。45歳
    矢部雄平氏(やべ・ゆうへい) ソニーAIロボティクスビジネスグループ事業企画管理部統括部長。本社経営企画、プレイステーションの経営企画、事業企画を経て、aiboの開発当初から参画。45歳

 矢部 「言うことを聞かない」というより、人に興味を持って動いてしまったり、人の興味を引いたりするような行動をします。言うことを聞かないという設定をしているわけではないんです。

 ――成長して、いずれは「飼い主」との阿吽(あうん)の呼吸ができるようになるのでしょうか。

 松井 そういうこともできるようになる思いますよ。

 ――AIのシステムなどは一から自社開発しているのでしょうか。

 松井 はい。クラウドのシステムに関してはアマゾンの(クラウドサーバーである)AWS(アマゾン・ウェブ・サービス)を使っていますが、AIは自社で開発しています。

 ――今後もシステムの開発を続けられると思いますが、ほかの会社と協業したり、技術者の交流をしたりということはあるのでしょうか。

 矢部 まずはソニー単独でサービスを展開する予定ですが、昨年米国で「ディープ・リインフォースメント・ラーニング(深層強化学習)」に取り組むベンチャー企業に出資したので、今後、その企業のシステムを使うことも検討しています。

 ――深層強化学習とはどういうものなのでしょうか。

  • 松井直哉氏(まつい・なおや) ソニーAIロボティクスビジネスグループ商品企画部統括部長。携帯電話の商品設計、プレイステーションやカメラの商品企画を経て、aiboの商品企画・開発に参画。50歳
    松井直哉氏(まつい・なおや) ソニーAIロボティクスビジネスグループ商品企画部統括部長。携帯電話の商品設計、プレイステーションやカメラの商品企画を経て、aiboの商品企画・開発に参画。50歳

 松井 (aiboでいえば)ユーザーの行動を「正の報酬」と「負の報酬」に分け、ユーザーに褒められたら「正の報酬」、怒られたら「負の報酬」として解釈する、といったようなものです。

 ――人間の行動をプラス・マイナスで解釈するようなものですか。

 松井 そうですね。

 ――究極的にはどういった行動をするところまで想定しているのでしょうか。

 松井 aiboは「自律的」に動くので、(ユーザーとの)物理的な距離の面でも(一般的な家電などとは)大きく違いますし、心もユーザーに近づいてきたい。ユーザーが思っていることを(おもんぱか)れるまで進化させたいと思います。

 ――逆にユーザー側はaiboにずっと見られていて、行動情報もクラウドに集約され、悪用されるのでは、と恐れる人もいるかもしれません。

 矢部 基本的には、製品の成長のためにデータを使わせていただいているので、ほかの用途で利用することはありません。

 ――グーグルやアマゾンが最近、日本で販売を開始した「スマートスピーカー」もクラウドAIで人の言葉を学習していくシステムを使っていますが、グーグルのスピーカーではソフトウェアの不具合で「盗聴」状態になっていたという報道がありました。セキュリティー対策はされていますか。

 矢部 最新のセキュリティーシステムを搭載していますので、そこはご安心いただければと思います。

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2017年12月8日11:11 Copyright © The Yomiuri Shimbun