健康

心臓突然死を減らす!…救命のカギは「AED」

読売新聞調査研究本部主任研究員 坂上博
 心臓が原因で倒れる「心臓突然死」により、1年間に約7万人が亡くなっているとされる。しかし、だれが、いつ、どこで倒れるか分からない。唯一の救命手段が、一般市民が操作して電気ショックを与える自動体外式除細動器(AED=Automated External Defibrillator)だ。2020年の東京五輪・パラリンピックに向けてスポーツ熱が高まると見られるが、運動中の心臓突然死も多い。だれもがAEDを使いこなせるようにしよう。読売新聞調査研究本部で医療を担当する坂上博主任研究員が、AEDの最新事情を報告する。

胸にボール受け、フットサル中に倒れる

  • AEDで九死に一生を得た田中奨さん。現在は「ヴォスクオーレ仙台」の下部組織の選手として活躍している
    AEDで九死に一生を得た田中奨さん。現在は「ヴォスクオーレ仙台」の下部組織の選手として活躍している

 プロを目指すフットサル選手の田中奨さん(25)は2015年5月、東京都内の屋内専用コートで行われていた試合中、相手選手が放ったシュートを止めるため、スライディングしながら胸でボールを受けた。いったん立ち上がったが、数秒後に意識を失い、その場に倒れた。

 心臓の真上に強い衝撃を受けると、それが引き金となり、血液を全身に送り出す心臓の「心室」の筋肉が不規則に細かくけいれん(細動)する不整脈「心室細動」が起きることがある。心室細動が起きると、心臓のポンプ機能が失われ、血圧はほぼゼロになるので、脳に血液が行き渡らず、患者は意識を失う。心室細動は自然に治まることはまれとされ、そのまま続けば死に至る。胸に衝撃を受けるとすべての人に心室細動が起きるわけではないが、田中さんは不運にも発症してしまった。

 所属チームの女性トレーナーが駆けつけ、田中さんの脈をとったが、脈がなかった。まず、緊急措置として心臓マッサージ(胸骨圧迫)を始めた。周囲の人から「AEDを持ってきましょうか」と尋ねられ、女性トレーナーは即座に「お願いします」とこたえた。「AED」は、心室細動を起こした患者を救うことができる唯一の医療機器だ。患者の胸に貼った電極パッドを通して電気ショックを与え、心室細動を取り除き、心臓の機能を正常に戻す。

 周囲の人が、専用コートに備え付けられていたAEDを持ってきてくれ、女性トレーナーはすぐにAEDの電極パッドを田中さんの胸に貼り、電気ショックを与えた。すると、1回で心臓が正常に動き出し、田中さんは倒れてから3~5分後には意識を回復した。

 そのまま救急車に乗って近くの病院に運ばれたが、後遺症はなかった。医師から「すぐにAEDを使ってくれなかったら、君はこうして元気に生きているか分からなかったよ。そのトレーナーさんに感謝しないとね」と言われ、涙があふれた。翌日昼には退院し、念のため2週間休養したが、その後、フットサルを再開できた。

 田中さん自身はAEDに触れたことがなかったので、その年の6月、地元の消防署が開いた救急講習会に参加した。「自分の前で倒れた人がいたら、今度は自分が助ける」という強い思いがあったからだ。

 今は、当時所属したチームを離れ、仙台市を本拠とする「ヴォスクオーレ仙台」の下部組織の選手として活躍している。「健康な人でも心室細動で倒れることがあります。しかし、AEDさえ使ってくれたら、僕のように全く後遺症なく元気になれます。AEDを使える勇気を持つために救急講習会に、ぜひ参加してほしいです」と訴える。

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2017年12月19日05:20 Copyright © The Yomiuri Shimbun