文化

常に最先端で勝負…ライバルが見た羽生「永世七冠」

読売新聞メディア局編集部 田口栄一
 「永世七冠」を達成した羽生善治竜王(47)のライバルと言えば、森内俊之九段(47)の名前が浮かぶ。小学生時代から対戦を重ねた2人は、プロになってからも135局(2017年12月22日現在)戦い、数多くの名局を紡ぎ出した。対戦成績は羽生の77勝58敗だが、名人戦七番勝負は9回戦って森内の5勝4敗である。40代後半になっても結果を出し続ける羽生の強さはどこにあるのか、森内に聞いた。

トータルの強さで栄冠

  • 第30期竜王戦で圧倒的な強さを見せた羽生
    第30期竜王戦で圧倒的な強さを見せた羽生

 羽生が渡辺明竜王に挑戦した第30期竜王戦は、4勝1敗で羽生が竜王を奪還。通算7期で永世竜王の資格を得るとともに、七つ目の永世称号を獲得し、前人未到の「永世七冠」を達成した。

 「私が現地に行ったのは第1局だけでしたが、見ていて何が何でも勝つという強い気迫を感じました。シリーズ終了後の記者会見で羽生さんもおっしゃっていましたが、今回逃したら次はないという覚悟で臨んでいた。あれだけ実績のある方でも自分をぎりぎりの状態に追い込んで対局していたのだと改めて思いました」

 今回、羽生が第2局で「雁木(がんぎ)」を採用したことが話題を呼んだ。人工知能(AI)の一種である将棋ソフトが得意とする玉の囲いの名称で、古くからあった作戦だが、最近見直されてプロの間で大流行している。

 「我々が修業をしていた時代には、ちょっと損な戦法だと思われていました。私もやってみたことがあるのですが、指しこなすのは難しいと感じていました。第2局で羽生さんは(盤上の攻め駒と持ち駒を巧みに活用した)見事な攻めを見せ、切れ味鋭い勝ち方をしました。新しいものへの対応力もさすがです」

 シリーズの勝因はどこにあったのだろうか。

 「羽生さんは若いころと同じように、新しいものを追求していく探究心を持ち続けています。経験を積むにつれてだんだん難しくなるのですが、今もその姿勢は変わりません。また、現在の自分にあったペース配分も考えて対局に臨んでいて、そういうトータルの強さで勝ち取った栄冠だと思います」

不調だとは思わなかった

  • インタビューに答える森内。羽生とは小学生時代からのライバルだ
    インタビューに答える森内。羽生とは小学生時代からのライバルだ

 羽生と森内は直近では今年9月、「将棋日本シリーズ JT杯公式戦」で顔を合わせた。その将棋は、134手で羽生が勝っている。

 「今期、羽生さんは普段に比べるとちょっと成績が良くなかったので、どうなのかなと思って対局したのですが、特に調子が悪いとは感じませんでした。戦型は矢倉。自分たちが一番戦ってきた将棋ですし、力を出せる戦型です。若い頃のことを懐かしく思い出しながら指していました。途中、少し有利になったのですが、自滅してしまい、終盤まで競り合う将棋が指せなかったのが残念です」

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2017年12月23日05:20 Copyright © The Yomiuri Shimbun