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定年後の投資に潜む落とし穴

フリーライター 寺尾淳
 退職金を元手に投資を行う危険性は、繰り返し指摘されてきたが、低金利が続くなか、株価は比較的高値で推移している。政府主導で「貯蓄から投資へ」の流れも加速するなど、投資に手を出しやすい環境が整っている。金融機関も貯蓄より手数料収入が見込める投資信託を勧める傾向にあり、国民生活センターは「リスクの説明が不十分であったと思われる相談事例も見受けられる」と注意を喚起している。定年後の人が投資で陥りやすい落とし穴について、フリーライターの寺尾淳氏が解説する。

「退職金で株式投資をする人」は意外に多い

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 日本経済団体連合会(経団連)と東京経営者協会が2017年6月に発表した「2016年9月度 退職金・年金に関する実態調査結果」によると、大学卒で勤続38年、60歳で扶養家族が1人の場合、平均の退職金の支給額は2374.2万円となっている。

 退職金は労働法上も税法上も「賃金の後払い」とみなされているが、定年退職する本人は「勤めあげた功労金」「サラリーマン人生最後の特大ボーナス」のように思いがちだ。

 博報堂・新しい大人文化研究所の調査では、60歳代の男性で退職金を株式取引で運用した人は約40%、投資信託で運用した人は約34%を占めた。株式、投資信託のようなリスクのある金融商品に対しても、定年退職者の積極的な姿勢がみられる。調査時点は4年以上前だが、アベノミクス相場の株価上昇傾向は当時から現在まで連綿と続いているので、比率は増えこそすれ、減ってはいないと思われる。

 現在の低金利では、預金があっても資産はほとんど増えない。寿命も延びて、定年後の時間も長くなっているから、日々目減りしていく退職金をなんとか増やせないかと思う人もいるだろう。

 退職金をもらって、サラリーマン時代には使えなかった平日の午前9時から午後3時までが暇になることもあり、「趣味と実益を兼ね、退職金を元手に投資で老後資金を増やしたい」と考えると、そこには危険な落とし穴が潜んでいる。

金融機関も退職金を狙っている

 金融機関も、退職金を貯蓄より投資に回してくれたほうが手数料収入を見込めるので、投資商品を勧めてくる。株式より少額で始められ、専門家が運用する投資信託を紹介されるケースが多い。しかし、元本が保証されないことをしっかりと認識すべきだ。国民生活センターも、勧誘方法に問題があるケースやリスク説明が不十分であったと思われる相談事例が寄せられているので、注意を喚起している。

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2017年12月28日09:00 Copyright © The Yomiuri Shimbun