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“職場の主”に牛耳られる?雇用の2018年問題

人材コンサルタント 平賀充記

ベテランスタッフの意外な深層心理

  • (画像はイメージ)
    (画像はイメージ)

 職場には、だれも手をつけられないベテランスタッフや「お局さま」といった存在がいるものです。

 店長や管理職が、勤続年数の長いベテランスタッフの顔色をうかがい、毅然とした態度で接することができないのはなぜか。

 長年勤めていることで経験値が高く、仕事はできるという人が少なくありません。一方で、ほかのスタッフよりも実年齢が高いため、どうしても謙虚さや自制心が緩んできます。ミスをしても謝らない、他人の指摘は全て批判とみなす、嫌な仕事はだれかに押し付ける……。こんな高圧的と思われる振る舞いが目に付くようになるのは、確かに年齢によるところもあるでしょう。

 しかしながら、職場に「主的存在」が生まれる最大の要因は、彼ら・彼女らの深層心理に潜む「劣等感」にあるようです。長年働いているのに評価されない、若いスタッフばかりチヤホヤされる、どうせ期待されていない……。このような劣等感を強く持っているから、他人のあら探しをして、自分より弱い立場の人に支配的な態度をとろうとしてしまいます。自分の意見を押し通すことで劣等感を隠し、ときには感情的になって必死に自分を守ろうとしているのです。

 一見すると「勝ち気」で「自信がある」ように見えるのは、「自分が他人よりも劣っているのではないか?」という不安の裏返しなのです。ここを見誤るからコミュニケーションがうまくいかないのです。

「もっとグイグイきてよ!」

 我々、ツナグ働き方研究所は、ベテラン主婦パートと若手店長の「職場におけるコミュニケーションギャップ」について調査を行いました(2015年11~12月)。そこからは、若手店長がベテラン主婦パートに対して、コミュニケーション上で苦慮している姿が浮かび上がってきました。

  • パートの主婦と店長の考え方の違い。SNSでの友達申請はともにNGだ(執筆者提供)
    パートの主婦と店長の考え方の違い。SNSでの友達申請はともにNGだ(執筆者提供)

 店長はOK(許される)と思っているのに、パートの主婦はNG(受け入れられない)と考えている業務内容について、「個人目標設定」「リーダーへの任命」「キャンペーンへの協力」などの項目が上がり、負担が重くなるのを嫌う傾向が見受けられます。パートで働く主婦のほとんどが、仕事より家庭を優先せざるえない状況を考慮すると仕方のない面もありますが、仕事を依頼する立場にとっては難しい考え方のギャップです。

 これとは逆に、パートの主婦はOKだと思っているのに、店長のほうがNGだと考えているのは、「ニックネームで呼ぶ」「ダジャレ・おやじギャグ」「タメ語(友達同士の言葉遣い)での会話」といった日常のコミュニケーションばかりでした。

 「遠慮しないで、もっとグイグイきてよ!」というベテラン主婦パートの心の声が聞こえてくるようです。働く主婦全般に対する調査でさえ、このようなギャップが見られるのですから、気の強そうなベテラン主婦に対して、若い店長の腰が引けてしまうのは容易に想像できます。

 そもそも、年上の人へ敬意を払うことは、我々日本人に刷り込まれている儒教的な価値観の一つです。だから、年上の部下に対してのコミュニケーションが必要以上にデリケートになってしまうのも理解できなくはありません。

 ところが、店長が若いスタッフに対して「〇〇ちゃん」と呼ぶのに、ベテラン主婦には「〇〇さん」と呼ぶといったことがベテラン主婦にとってはカチーンとくるのです。「えっ? あの子は『ちゃん』なのに、アタシは『さん』なわけ?」と不満を感じたという主婦パートは想像以上にたくさんいました。「ちゃん」と「さん」は、まさに呼び方の“フォッサマグナ”(大きな溝)なのです。

 では、職場に君臨するベテランスタッフを、どうやってマネジメントすればいいでしょうか?

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2018年1月6日06:01 Copyright © The Yomiuri Shimbun