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文化

教科書に載らない?坂本龍馬を伝説にした“裏の顔”

読売新聞編集委員、BS日テレ「深層ニュース」キャスター 丸山淳一
 幕末の風雲児として数々の作品に描かれ、今も多くのファンを魅了する坂本龍馬。その名を「教科書から削るべき」という教育関係者たちの声に驚いた人は少なくないだろう。はたして龍馬という人物の真価は? その短い生涯をいかに燃やし尽くしたのか?

歴史上の役割大きくない?

 日本人が最も好きな歴史上の偉人のひとり、坂本龍馬(1836~67)が、歴史の教科書から消えるかも知れないという。

 高校や大学の先生でつくる研究会が、暗記中心の授業を改めるため、「歴史上の役割や意味が大きくない」用語を削ることを提案し、龍馬もクレオパトラ、武田信玄、上杉謙信、吉田松陰などとともに削減候補になったのだ。

 龍馬の出生地である高知県の尾崎正直知事は「龍馬は幕末維新期に日本を大きく動かす仕事をした。歴史的役割に鑑みて残してもらいたい」と異を唱えた。研究会は、大学入試で暗記が必須の「本文」からの削除を求めただけで、龍馬を教科書からすべて抹消すべきとはいっていないようだが、そもそも龍馬を「歴史上の役割が大きくない」と分類したことが許せないのだろう。

 気持ちはよく分かる。ただ、龍馬については、教科書に載ることにどれほどの意味があるのか、という気もする。

「行動力と柔軟さ」乃木坂メンバーも心酔

  • 「龍馬の行動力と柔軟さが魅力」と話す「乃木坂46」の山崎怜奈さん
    「龍馬の行動力と柔軟さが魅力」と話す「乃木坂46」の山崎怜奈さん

 そもそも龍馬の功績は、教科書の数行の記述で語り尽くせるものではない。龍馬の大ファンだという人気アイドルグループ「乃木坂46」の山崎怜奈さんは読売新聞のインタビュー(1月11日付朝刊)で、「大河ドラマや歴史小説が大好きで、高校の教科書は2冊買い、うち1冊には余白に登場人物の相関図などを書いてドラマ感覚で学んだ」と語っている。

 教科書の用語はかえってスカスカくらいの方が探求心が刺激され、図書館で本を(あさ)り、ゆかりの地を訪ね、教科書にいろいろ書き加えたくなるようになるかも知れない。特に龍馬には、そういう求心力があると思う。

 山崎さんは龍馬の魅力は「積極的に多くの人と交わる行動力、考えをしっかり持ちながら人の意見を受け入れる柔軟さにある」という。

 偉人の人物像はともすれば後世の歴史小説やドラマの影響を受け、龍馬についても「司馬遼太郎(1923~96)が小説『竜馬がゆく』で描いた人物像に引っ張られすぎている」という声をよく耳にする。しかし、龍馬は、後世の脚色をそぎ落とし、生きざまを史料で直接確認することができる数少ない偉人でもある。140点以上の自筆の手紙が残っており、その多くに行動記録や心情まで、あけっぴろげに記しているのだ。

 自分が寺田屋で襲撃された事件の顛末(てんまつ)を詳細にルポしたり、新婚旅行の様子を挿絵も交えて報告したりしている。「日本を今一度せんたく(洗濯)いたし申候」という名言があるかと思えば、「運が悪い人は風呂から出ようとして、きんたまを風呂の縁にぶつけて死ぬこともある」という下ネタも出てくる。

 山崎さんの思い描く龍馬像は、こうした史料からも裏付けられる。筋金入りの「アイドル歴女」なのだろう。

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2018年1月25日10:20 Copyright © The Yomiuri Shimbun