科学

AIは地球外生命体を発見できるか?

東工大教授 井田茂
 米航空宇宙局(NASA)が地球外生命体の発見につながる可能性のある発表を相次いで行っていることはあまり知られていない。惑星・衛星研究の第一人者で東工大教授の井田茂さんはAI(人工知能)など観測技術の急激な進歩で、近い将来に地球外生命体の姿を見ることができる可能性が高まっているといい、最新の研究とその可能性について聞いた。(聞き手・読売新聞メディア局編集部 河合良昭)

NASAの重大発表が相次ぐ

  • 探査機カッシーニが撮影した衛星「エンセラダス」から噴き出す水(NASA/JPL/Space Science Institute)
    探査機カッシーニが撮影した衛星「エンセラダス」から噴き出す水(NASA/JPL/Space Science Institute)

 2017年にNASAが地球外生命体の発見につながる可能性のある発表を相次いでしました。

 2月には地球から約39光年(1光年は約9兆4600億キロ・メートル)先にある恒星「トラピスト1」の周りに、七つの地球サイズの惑星がまわっていて、そのうちの三つの惑星の表面に液体の水が存在する可能性があると発表しました。

 4月には、土星の衛星「エンセラダス」の地下から噴出している海水の成分を調べたところ、水素分子が確認されたという発表でした。生命が利用可能な化学エネルギーが供給されている可能性が高く、地球外生命体が存在する期待が高まったのです。

 科学者は重大な発見と受け止めましたが、一般の人の間ではあまり話題にはなりませんでした。これはSFなどで描かれた「UFOに乗った人型やタコ型の宇宙人」の発見ではなかったからだと思います。

  • 米ニューメキシコ州ロズウェルにあるUFO博物館にある“宇宙人”の人形
    米ニューメキシコ州ロズウェルにあるUFO博物館にある“宇宙人”の人形

 こうした「人型」のイメージは20世紀初頭に、「火星に宇宙人がいるのではないか」という想像がブームになった頃のもので、あまりに古い考え方です。

 ただし、それは仕方のない面もあって、この頃に天文学者たちが火星に「運河」があると発信してしまった大スキャンダルがあり、地球外生命体に関する科学サイドからの発信がその後、約1世紀にわたって封印されてしまったことが大きな原因と考えられるからです。

 現在、その封印が解かれ、地球外生命体についての科学的議論が猛烈な勢いで進んでいます。20世紀後半からの遺伝子解析などによる生物学や地質学などの研究から、生物の進化の歴史を調べると、生命が誕生した時に、最初から現在の形になろうと進化してきたわけではないことがわかってきました。

 人も氷河期や隕石(いんせき)の衝突による自然環境の変化などに応じて進化してきた結果として、現在の形にたまたま落ち着いただけなのです。環境の変化の歴史が少し違っただけで、人類の進化も大きく変わっていたでしょう。

 従って、地球外生命体が人に似た姿になる必然性はなく、今の科学者は「人型」へのこだわりはありません。そして、地球外生命体は人類が現状では想像できない、新たな構造を持った生命である可能性が高く、この「未知との遭遇」が近い将来に実現しそうだという期待に胸を膨らませながら、日々観測しているのです。

2018年2月2日05:20 Copyright © The Yomiuri Shimbun