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シリア攻撃…トランプ流「力による平和」の限界

読売新聞調査研究本部主任研究員 岡本道郎
 米トランプ政権が4月13日、シリアのアサド政権が自国民に化学兵器を使用したと断定し、シリアの化学兵器関連施設に対して、英仏両国とともに軍事作戦を行った。トランプ大統領は「任務完了!」と作戦成功を強調したが、むしろ今回の作戦は、明確な戦略を欠く米国の対シリア政策の限界を露呈し、作戦規模などをめぐる政権内の迷走とあいまって、トランプ流「力による平和」路線の危うい実像を浮き彫りにしたのではないか。

作戦は「完璧に遂行された」のか?

  • シリアへの軍事攻撃を発表するトランプ大統領(4月13日)=AP
    シリアへの軍事攻撃を発表するトランプ大統領(4月13日)=AP

 「シリアの独裁者バッシャール・アサドの化学兵器関連施設に対する精密爆撃を行うよう米軍に命令した」

 13日夜(日本時間14日午前)、トランプ大統領はホワイトハウスで国民向けに演説を行い、シリア攻撃を発表した。トランプ大統領は、シリアの反政府勢力が立てこもる首都ダマスカス郊外の東ゴータ・ドゥーマ地区で7日、アサド政権が化学兵器を再び使用し、罪のない市民を殺りくしたと断定して、「人間のやることではなくモンスターの犯罪だ」と非難。「化学兵器製造・拡散・使用に対する強い抑止力の確立」が作戦の目的であり、それが安全保障上の米国の国益だと説明した。

 トランプ政権によるシリア懲罰攻撃は、今回で2度目だ。約1年前の2017年4月6日には、アサド政権が化学兵器を使用し「レッドライン(越えてはならない一線)を越えた」として、化学兵器を積んだ航空機が出撃したとみられるシリア空軍基地を巡航ミサイル59発で攻撃した。

 今回は英仏の参加を得た上で、攻撃目標を(1)首都ダマスカス近郊バルゼの化学兵器研究施設(2)中部ホムス周辺の化学兵器貯蔵施設(3)ホムス周辺の機器貯蔵施設と司令所――の3か所に増やした。周辺海域に展開したミサイル駆逐艦などの米艦艇やB1戦略爆撃機、英軍のトーネード戦闘爆撃機、仏軍のミラージュ戦闘機などから、前回攻撃の2倍近い105発のミサイルが撃ち込まれ、すべてが攻撃目標に命中したという。マティス米国防長官は攻撃後の記者会見で、「現時点では1回限り」と強調、追加攻撃については、アサド政権が化学兵器を再び使用するかどうかにかかるとした。

 では、アサド政権による化学兵器の使用は事実なのか?

 アサド政権側は、40人以上が死亡したといわれるドゥーマでの化学兵器使用を否定し続けている。だがトランプ政権は、現地からの映像や画像、「化学兵器を積んだたる爆弾がシリア軍ヘリから投下された」とする目撃証言など多くの情報をもとに、「(化学兵器攻撃が行われたことを)確信した」(マティス長官)という。

 厳密に言えば、米英仏は、誰が化学兵器を使用したかの明確な物証を示さないまま、「疑惑」の段階で軍事作戦に踏み切ったわけだ。ただ、自由世界の意思として、「現在の人類社会で非人道的な化学兵器の使用は許されない」というメッセージを発信するという目的については、作戦を通じて達成したと言えるだろう。

 しかし、軍事行動に踏み切るまでのトランプ大統領と政権の一連の動き、そして作戦の概要を総合的に検証すると、今回のシリア攻撃は「完璧に遂行された。任務完了だ」とする大統領の自画自賛とは裏腹に、その意義と効果には多くの疑問符がつくと言わざるを得ない。

2018年4月20日16:00 Copyright © The Yomiuri Shimbun