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北朝鮮の対話攻勢「制裁が効いた」とだけ見るのは早計

霞山会主任研究員 堀田幸裕
 朝鮮半島情勢は予想を超えるスピードで展開している。6月初めか5月末に予定される米朝首脳会談を前に、27日には南北首脳会談が開かれる。目の前の動きはひとまず置いておいて、そもそも、北朝鮮が対話攻勢に乗り出した背景には何があるのか。少ない手がかりの中で、その答えを探ってみる。一般財団法人「霞山会」の堀田幸裕主任研究員に解説をお願いした。

北の対話攻勢、朝鮮半島に新展開

  • 4月20日に開かれた朝鮮労働党中央委員会総会で、核実験とミサイル発射実験の中止、核実験場の廃棄などを表明した金正恩朝鮮労働党委員長。この写真は朝鮮中央通信によって配信された(ロイター)
    4月20日に開かれた朝鮮労働党中央委員会総会で、核実験とミサイル発射実験の中止、核実験場の廃棄などを表明した金正恩朝鮮労働党委員長。この写真は朝鮮中央通信によって配信された(ロイター)

 北朝鮮が次々と新しい動きを見せている。4月20日には朝鮮労働党中央委員会総会を開き、翌日から核実験と大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射実験を中止し、核実験場(豊渓里(プンゲリ))を廃棄するとともに、核の先制不使用、核兵器と核技術の移転をしないと宣言した。

 ただし、北朝鮮が今持っている核を全て廃棄する「非核化」については直接の言及はなく、「人類の共通の念願と志向に合致するように核兵器なき世界の建設に積極的に寄与しようとするわが党の平和愛護的立場」と述べるにとどまった。6か国協議への復帰や、在韓米軍の問題についても触れていない。

 北朝鮮のいわゆる「対話攻勢」は年始以来続いている。この間、北朝鮮は2月の平昌(ピョンチャン)冬季五輪開会式に高位級代表団を派遣し、金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長の実妹である金与正(キムヨジョン)・党中央委員会第1副部長と金永南(キムヨンナム)・最高人民会議常任委員長が、ソウルで韓国の文在寅(ムンジェイン)大統領と会談した。

 五輪後には文大統領の特使が平壌を訪問して金正恩委員長と会談。3回目となる南北首脳会談の開催が決定すると同時に、この時、北朝鮮が提案した米朝首脳会談を後日、トランプ大統領が受け入れると宣言し、事態は急展開を見せた。

 4月18日には安倍首相の訪米に合わせるかのように、トランプ大統領はポンペオ中央情報局(CIA)長官が訪朝し、金正恩委員長と極秘会談していたと発表。米朝首脳会談の準備が進んでいることをうかがわせた。

 北朝鮮側も米朝首脳会談に向けた布石を打っている。3月末には金正恩委員長が自ら北京へ出向き、習近平(シージンピン)国家主席と会談した。金正恩委員長は2012年に政権トップに就いて以来、一度も中国を訪問していなかった。

 中朝首脳会談の前、両国の関係は最悪の状態だった。国連安保理の対北制裁に中国が同意したことなどをめぐり、昨年は北朝鮮の党機関紙が中国を名指しで強く批判する論説を掲げるほどだった。しかし、そうした両国間のしこりを表向き一切うかがわせることなく、関係修復が演出された。金正恩委員長の北京滞在時間は実質1日未満であったが、習主席は到着日の晩餐(ばんさん)会と翌日の昼餐と2回も金正恩委員長と食事をともにしている。

2018年4月27日05:20 Copyright © The Yomiuri Shimbun