国際

「大国外交」のツケを払わされる中国・習近平政権

神田外語大教授 興梠一郎
 日中韓首脳会談が9日、東京で開かれた。同日行われた日中首脳会談では両首脳が10の協定・覚書に署名するなど、日中間には融和ムードが生まれている。一方、中国・大連では7日から8日にかけて 習近平 ( シージンピン ) 国家主席と北朝鮮の 金正恩 ( キムジョンウン ) 朝鮮労働党委員長が、今年3月以来2度目の中朝首脳会談に臨んだ。北朝鮮核問題で一時期、影の薄かった中国が巻き返しに出ている。中国が周辺国との関係改善に乗り出す背景には何があるのか。現代中国論が専門の神田外語大・興梠一郎教授に聞いた。(聞き手・読売新聞メディア局編集部次長 田口栄一)

3首脳が集まったことに意義

  • 日中韓首脳会談を前に記念撮影に臨む(左から)中国の李克強首相、安倍首相、韓国の文在寅大統領
    日中韓首脳会談を前に記念撮影に臨む(左から)中国の李克強首相、安倍首相、韓国の文在寅大統領

 ――2年半ぶりに開かれた今回の日中韓首脳会談には、どんな意義があったと思うか。

 「中国と韓国の首脳がとにかく日本に来たということ自体に画期的な意味があった。日本は来てくれと言ってきたが、中国も韓国もそれぞれの事情で来ることができなかった。

 共同宣言は出されたが、もともと大したことは決まらないだろうと思っていた。北朝鮮の核問題では、日本と中国、韓国では立場がずれている。経済交流とか、そういう分野でしか一致点がない。それでも日本が議長国なので、中国も韓国も真っ向から対立するという図式は作りたくない。北朝鮮を刺激せず、安倍首相の言っていることも否定せず、それぞれが自分の言える範囲のことを言いっぱなし、こういう会合だったと思う」

 

 ――中国からは李克強(リークォーチャン)首相が来た。中国首相の来日は7年ぶりだ。

 「私は現場で一部始終を見ていたわけではないが、新聞に載った3首脳の写真を見ると李首相だけが硬い表情をしている。この写真が中国でどう受け止められるかを考えると、彼はリラックスして笑えるような状況ではない。あれだけ敵視してきた安倍首相、ずっと緊張状態が続いている韓国の文大統領と握手している。

 かつて、毛沢東主席は周恩来首相がニュースで大きく扱われるのを嫌がった。周氏はそれに気付いて、下の人間に『私を大きく扱うな』と指示した。朱鎔基首相は2000年に来日し、日本の民放のテレビ番組に出演して二胡を弾いた。温家宝首相は07年に訪中した福田首相(肩書はいずれも当時)とキャッチボールしている。李首相は何もできない。習主席より目立ってはいけないからだ。

 北朝鮮問題に関していえば、李首相は最初から何かを決めるつもりで来たわけではない。それは習主席がやっている。中国が蚊帳の外に置かれていたのを、主導権の奪回に動いているので、李首相がそれをかき乱すことはできない」

2018年5月11日18:18 Copyright © The Yomiuri Shimbun