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死ぬときに「迷惑をかけたくない」…いくら必要?

ファイナンシャルプランナー 小澤美奈子

ああ、貯金が底をつきそう

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 「生活費が足りなくなった」

 「余裕がなく介護費用にまで回せない」

 年齢とともに高まる健康リスクとその治療費。入念に準備をし、やりくりをしても、年金が主な収入源となる高齢者の中には、こんな窮状を訴える人もいると思います。

 高齢者が新たにお金を借りることは容易ではありません。しかし、持ち家のある人なら、不動産担保型生活資金を利用できる可能性があります。

 これは、低所得の高齢者を対象に一定の不動産を担保として生活資金を借り入れできる国の制度で、自宅に住み続けながらお金を借り入れることができます。相談窓口は地域の社会福祉協議会です。

 このほか、銀行が提供する同様の商品にリバースモーゲージがあります。国の不動産担保型生活資金に比べると自由度の高い設計になっています。銀行ごとに商品内容が異なっているため、しっかり確認する必要があります。

 これらの貸し付けは、家の所有権が、借受人の死亡などによって契約終了とされ、不動産の売却で返済する仕組みです。利用を検討する際は、家族とよく話し合うことが重要です。

やっぱり気になる葬儀費用

 「日々の生活が苦しくても、葬儀費用くらいは残したい」

 こんなふうに考える高齢者も多いでしょう。家族葬や一般葬のほか、最近では、通夜を行わない一日葬、火葬のみの火葬式などさまざまな形態があり、葬儀費用の平均額は200万円前後と言われています。

 年間1万件以上の葬儀を扱っている公益社の1級葬祭ディレクター安宅(あたぎ)秀中さんは、「花や音楽にこだわる方や、宗派にとらわれず自分のスタイルで行う方など葬儀の多様化が進んでいるため、かかる費用にも幅があります」と説明します。

 費用を抑えるために、家族葬を選ぶ人もいるようですが、「むしろ参列者を多く呼ぶ一般葬の方が、香典が集まり、遺族の負担が軽くなるケースもある」(安宅さん)そうです。

 葬儀費用で後悔しないためには、「事前にいくつかの葬儀業者を見学し、見積書を取っておくこと」とアドバイスします。

おひとりさまに「葬祭信託」

 葬儀費用を事前に準備する方法は、互助会などの積み立てが知られているほか、葬儀費用を金融機関に「信託」する商品もあります。

 葬祭費用の信託は、生前に自分の葬儀費用を金融機関に信託財産として預けておき、葬儀が行われた後に一定の手続きを経て金融機関からお金が振り込まれる仕組みの金融サービスです。預けたお金は、葬儀社の固有財産とは分別して管理されるため、万が一手続きを行った葬儀社などが倒産した場合でも、全額が保護されます。

 「おひとりさまを中心に利用者が増えており、家族に負担をかけたくないという方や身寄りのない方にうってつけ」(安宅さん)

 初期費用や管理費用、解約手数料の有無などは、葬儀社ごとに異なります。実際に葬儀費用を信託する金融機関の健全性なども含め、事前に確認することが大切です。

 

死んだ時にもらえるお金・使える制度

 葬儀費用にも、自治体の助成金があります。

 例えば、75歳になると、加入する各都道府県の後期高齢者医療制度からは、「葬祭費」として3~7万円(自治体によって異なる)を受け取ることができます。

 75歳より前であれば、国民健康保険や健康保険組合から同様の助成金が支給されます。

 火葬場を使用した際の助成金や補助金制度を設けている自治体もあります。自治体と葬儀業者が連携して低廉な料金で行える「市民葬」や「区民葬」のある自治体もあります。

 葬儀費用を工面できないとあきらめる前に、自治体の窓口などで確認してみるべきです。

 生活保護を受けている場合は、「葬祭扶助」として、20万6000円を上限に葬祭費用が支給されます。

 高齢者をサポートするサービスや制度は多々ありますが、知らなければ使えないケースもあるでしょう。

 「高齢者にとって最も大切なことは、家族や地域とのつながり。困った時に、教えてくれて、誰かに伝えてくれて、寄り添ってくれる人の存在が何より助けになる」(小松田さん)

 「老後破産」「下流老人」などと高齢者の貧困が問題視されています。困った時には、必ず誰かに相談することを忘れないでください。

プロフィル
小澤 美奈子( おざわ・みなこ
 ファイナンシャルプランナー(FP)・ライター。大手損害保険会社勤務を経て独立。シニアのためのライフプラン、保険、貯蓄、初心者向け資産運用に関する記事を書籍やウェブなどで発表している。フォトライターとしても活躍。公式サイトは こちら

2018年6月5日07:25 Copyright © The Yomiuri Shimbun