生活

梅雨でも晴れやか…青学大・原監督夫人の「寮母力」

青山学院大学陸上競技部「町田寮」寮母 原美穂

「競う」選手たちを「支える」仲間に

  • 寮内の食堂に掲げた「その日の言葉」の隣で微笑む原さん。学生たちが毎日書くという
    寮内の食堂に掲げた「その日の言葉」の隣で微笑む原さん。学生たちが毎日書くという

 駅伝は「走る」という個人競技的な色合いが強い一方で、タスキ一本ですべてのメンバーが運命を共にするという究極のチーム競技でもある。勝ち続けるためには、強い団結力と連帯意識が不可欠だ。寮生活は、そうしたマインドを育む場でもある。大会出場に向け、「競い合う」立場の部員たちの「支え合う」心を育むために、何が必要なのか。

 「まず、ストレスのない空間を作ることです。そのために、どの部員にも差をつけず、平等にするように心がけています。(食事の際の)おかずの配ぜんは1年生の役目ですが、ご飯は各自がよそう決まりなので、4年生も含めて全員が列に並びます。差し入れ(の分配)は早い者順。タイムとか学年とかで態度を変えない、変えさせない。そういう点に特に気をつけています」

「歯車の一つとして」

 とは言っても、約50人の部員のうち、憧れの舞台である箱根路を踏めるのは、往路・復路を合わせて年に10人だけ。競争意識が上回り、ギスギスすることはないのだろうか。

 「よく聞かれるんですが、ありません。みんな、自分が(箱根を)走りたい気持ちは強くても、それ以上にチームに勝ってほしい。代表選手に選ばれた子が(大会前に)足の痛みなどを感じ、チームに迷惑をかけるからと辞退したこともありました。以前は『それでも自分が走りたい』という空気が強かった。チームとして熟成されてきたのだと思います」

 梅雨時の灰色の空は、ランナーたちばかりでなく、時にはサポートする側の心も重くするはず。めげることなく15年にわたって気配りを続けてきた原さんのモチベーションとは――?

 「チームの歯車の一つであることに、私はやりがいを感じています。聞こえは良くないかもしれませんが、歯車が一つなくても、例えば時計は動かない。このチームは、エース級の子が活躍したときだけでなく、誰かが記録を2、3秒縮めたときもみんなで喜ぶ。それでムードが高まる。誰もが歯車の一つで、(強さの)要因なんです。みんなもそう実感してくれていれば(うれ)しいですね」

プロフィル
原 美穂( はら・みほ
 1967年、広島県生まれ。大学卒業後、証券会社に就職。結婚し、専業主婦となる。2004年、夫の原晋氏が青山学院大学陸上競技部(長距離ブロック)の監督に就任し、夫婦で上京。同部「町田寮」の寮母を任される。著書に「フツーの主婦が、弱かった青山学院大学陸上競技部の寮母になって箱根駅伝で常連校になるまでを支えた39の言葉」(アスコム)。


2018年6月8日05:20 Copyright © The Yomiuri Shimbun