生徒主体の実践的グローバル教育…市川

  • 2003年3月に竣工した本校舎
    2003年3月に竣工した本校舎

 千葉県市川市に校舎を構える市川中学校・高等学校。

 同校が、とりわけ力を入れているのが英語力向上のためのグローバル教育だ。

ネイティブによる英語プログラム

 東京大学をはじめとする国公立大学や早慶上智といった難関私立大学にも多くの生徒を送り出す市川中学校・高等学校。今、時代の課題となっているグローバル教育にも余念がなく、英会話だけでなく、文化まで見定めた教育を行っている。中でも異彩を放っているのが、中学3年生を対象にしたイングリッシュプログラムだ。

 これは秋に予定しているシンガポール修学旅行の事前授業という位置付けで、英語力を養成するだけでなく、現地の文化や価値観まで理解することを目標としている。今年は、6月1日から3日まで東京の国立オリンピック記念青少年総合センターにおいて泊まり込みで行われた。

 「8人前後のグループにネイティブの講師1人をつけ、英語漬けの2日間になります。文法やつづりを学ぶ普段の授業とは違い、間違っていてもいいからとにかく英語を話すことで、英語だけしか通じない環境に慣れることが狙いです」と語るのは同プログラム担当の芳賀裕美教諭だ。

  • グローバル教育について語る芳賀教諭
    グローバル教育について語る芳賀教諭

 なるほど、教育の一環である修学旅行で海外を訪れるのならば、語学の実践の場として活用したいところ。そのためには予習が不可欠となるが、高校受験を控えた中学3年生には、その時間を捻出するのは難しい。同校のこのプログラムは、中高一貫校のメリットを十分に発揮した取り組みといえよう。

 いうまでもなく、語学は積み重ねと実践力がものをいう。2日間の学びでそれを補うことは難しい。それでも、単語の羅列でなんとかコミュニケーションが図れることを知る意義は大きく、グローバル時代をリードする若者育成の格好の場となっている。

 プログラムは自分の好きなものや興味のあるものを話す自己紹介から始まり、現地での買い物シーンで自分の求めるものをいかに店員に伝えるかといった、実践力を身につけるサバイバルイングリッシュと続く。

 例えば、弟のためにTシャツを買いたいと店員に伝えると、どんなものが好きかと聞かれる。生徒は身ぶり手ぶりを交えた英語でそれに答える。すると、希望と全く違ったものや値段の高いものが出てきてしまう。つまり、予想だにしない展開に生徒は慌ててしまう。そこでネイティブ講師がうまい断り文句や、違うものを出してもらう方法などをアドバイスする。まさに生きた英語教育といえる。

クイズ形式で文化を学ぶ

  • 泊まり込みで実施されたイングリッシュプログラム
    泊まり込みで実施されたイングリッシュプログラム

 さらに、異文化理解を高める授業も行われる。これも生徒の興味を引くためにと、シンガポールの文化をクイズ形式で出題。また、より理解を深めるためにも、事前に設けられているのが、道徳の時間を使った特別授業だ。

 「事前にシンガポールの文化について調べさせ、それをみんなの前でプレゼンしてもらいます。例えば、シンガポールにはガムを持ち込んではならないとか、シンガポールのチキンライスは鶏のだしで炊かれた料理で、日本のチキンライスとは全く違うとか、様々なプレゼンが行われ、現地文化への理解を深めています」(芳賀教諭)

 2日間のイングリッシュプログラムは、異文化理解の授業を経て、ネイティブ講師が話した単語を書くリスニングと進み、クロージングセレモニーで締めくくられる。このセレモニーで司会役を務めるのは生徒だ。自己紹介の前に行われるオープニングセレモニーでも生徒が司会進行を行う。こうした生徒主体の精神は、このプログラムのみならず様々なところで息づいている。

 このほか、同校では、定期的に国際協力機構(JICA)の職員を招いて、海外諸国の文化や経済、日本との関係などの講演も開催している。貧困問題にあえぐ国に対してどんな手を差し伸べたらいいのかなど、教員たちも考えさせられるテーマを取り上げられたこともあり、生徒たちは真剣な様子で聞き入っていたという。実際に海外で業務に就いている講師の話はグローバル教育の神髄といってもいいだろう。

自主性を育む校風

  • シンガポールへの修学旅行で異文化を学ぶ
    シンガポールへの修学旅行で異文化を学ぶ

 「本校の教育方針のひとつに第三教育というものがあります。家庭教育が第一、学校教育が第二、生徒自身が教育をするのが第三教育です。一番重要なのが、自らが主体となって学ぶ第三教育だと考えています」(芳賀教諭)

 自らが考え、行動する姿勢を学ぶ絶好の機会となるのがイングリッシュプログラムの先にある修学旅行だ。渡航先のシンガポールでは、教師の引率なしに、提携したシンガポール大学の学生と街歩きを体験する「ブラザーアンドシスタープログラム」が実施される。

 生徒たちが身ぶり手ぶりで現地大学生に食べたいものや行きたい場所を伝え、観光を楽しむという。また、マレーシアまで足を延ばしてホームステイも実施する。これも教師は関わらず、グループになった生徒たちだけで現地の家庭に寝泊まりする。教師があれこれと口を出すより、生徒自身が考え、行動することで異文化を肌で知るというわけだ。

 こうした生徒主体の精神は、結果としても表れている。例えば、英語検定は学校として課しているものではないが、中学3年生の時点でほとんどの生徒が自主的に3級を取得し、準2級、2級にチャレンジする生徒も少なくないという。

  • 同校では、様々な有識者が講演する「土曜講座」も実施している
    同校では、様々な有識者が講演する「土曜講座」も実施している

 また、同校では米ハーバード大学などの講義をインターネットを通じて受講できるオンライン授業、MOOCを導入している。これは希望者のみだが、高校生に交じって受講する中学生も少なくなく、「ハーバード白熱教室」で知られるサンデル教授の講座で、最後のリポート提出をクリアし修了を獲得した生徒は6割にも上るという。

 「自主性を尊重していますが、自分勝手にやっていいというものではなく、集団行動の大切さも生徒には体得させています。確かに、MOOCはひとりで臨むには難しい点もありますが、グループを作ってそこで発表させたり、協力してリポートの作成をさせたりしています」(芳賀教諭)

 生徒一人ひとりの自主性を重んじ、時には一丸となって目標に取り組む。これは大学受験のときも同じだと芳賀教諭は話す。こうした校風こそが、名だたる難関大学に合格者を輩出する理由といえるのではないか。

 (文と写真・葛西由恵、写真は一部、市川中学校・高等学校提供)

 ⇒市川中学校・高等学校のホームページはこちら