強豪ハンドボール部、強さの秘密は…佼成女子

  • 東京都世田谷区にある校舎の外観
    東京都世田谷区にある校舎の外観

 佼成学園女子中学高等学校(東京都世田谷区)のハンドボール部は、インターハイや全国選抜大会の優勝実績を持つ全国屈指の強豪チームだ。強さの秘密を探った。

厳しい練習も心を合わせて

  • ハンドボール部が獲得したインターハイや全国選抜大会などのトロフィーや賞状
    ハンドボール部が獲得したインターハイや全国選抜大会などのトロフィーや賞状

 ハンドボール部はバスケットボール部と並ぶ同校の「強化指定クラブ」として、全国優勝を目指して活動している。2015年は夏のインターハイで惜しくも3位にとどまったが、10月の国民体育大会では東京都の選抜選手に7人が選ばれ、チーム優勝に貢献した。さらに女子ユースアジア選手権(U―18)で3人が日本代表入りしている。

 練習は平日午後4時から7時まで。土曜、日曜も練習しており、休みは月曜日。取材に訪れたこの日も定刻通り練習が始まった。コートの中央で、全部員が円陣を組んで力強く声を合わせる。唱えていたのはチームの目標や目指す選手像をまとめた五つのスローガンだ。一つ口にするごとに空気が張り詰めていく。「全国優勝に照準を合わせていますので、おのずと練習は厳しくなりますね」と語るのは石川浩和監督。「全員で声に出す」――この“儀式”によって共通認識を深め、皆が同じ気持ちで練習に取り組めるのだ。

  • 今年の夏に行われたインターハイの様子
    今年の夏に行われたインターハイの様子

 練習は体幹トレーニングから試合を想定したセットプレーへ、徐々に激しさを増していった。攻守6対6の練習では、体に動きを染み込ませるように、何度も同じことを繰り返す。ハンドボールは1人のボール保有時間が3秒までと短いため、パス回しが重要だ。右から左へ、前へ、後ろへ。ボールを自在に扱いながら息の合ったパスを繰り出し、相手をかわしてゴールへ。スピード感あふれるプレーは圧巻だった。練習は休憩を挟みながら19時半まで続いたが、休憩中もただ休んでいるだけの部員は一人もいない。ストレッチで体をほぐしたり、仲間とプレーの確認をしたり、自主的に体を動かし続ける姿が印象に残った。

メンタル面を支え、伸ばす

  • 仲間の力になることを大事にしているハンドボール部の石川浩和監督
    仲間の力になることを大事にしているハンドボール部の石川浩和監督

 強さの理由は練習だけではなさそうだ。先に挙げた円陣の話が象徴するように、共通認識を持ち、メンタルを充実させることが選手自身を「強く」するのではないか。

 例えば、同部では全部員が日々の練習記録を記し、毎朝、監督に提出する。「そのノートから『こんなことを考えていたのか』と知ることもありますが、毎日、コートに立っていれば、顔つきやプレーから心の内は見えてきます」と石川監督。個別対応、ミーティング、時には手製の資料と、様々な方法で部員に寄り添い、心を一つにまとめていく。また、共に指導に当たる安藤希沙コーチの存在も大きい。「彼女はこの部のOGで、生徒たちの大先輩。私が話しづらい身体的な相談にも乗ってくれるので本当に助かります」。頼れる教え子を右腕に、サポート体制は万全だ。

試合結果より大事なこと

  • 常に目的意識を持った練習が行われている
    常に目的意識を持った練習が行われている

 さらに石川監督は「自分自身の成長と同時に、仲間の成長の力になれる人になろう」と皆に言い聞かせている。「試合の結果は大事ですが、それはあくまで『目標』でしかない。大事なのは自分自身が3年間でどれだけ伸びたか、どれだけ仲間の力になれたかです」

 その思いはチームにしっかり浸透している。初見実椰子さん(3年)は「一人がシュートに行けるのは、そこまでつないでくれた仲間たちのおかげです。だから息の合ったプレーができるとすごくうれしい」「自分が成長できるのは仲間がいるから。自分一人じゃ成長できない。周りがいてこそ今の自分があると思うので、私も仲間の成長の力になりたい」と真っすぐな目で語ってくれた。

 チームには、もう一つ大事にしている思いがある。それは「礼儀や行動の模範となる『さすが』と言われる選手になる」ことだ。その心もまた、部員にしっかり届いている。鈴木梨美さん(3年)は「プレーのミスは練習量の問題だけじゃなくて、日常の行動からつながっていると学びました。今では教室の汚れが気になると率先して掃除をするなど、普段からちゃんとするよう心がけています」。こうした行いは周囲を感心させるだけでなく、一人ひとりが自信を持って試合に臨める基礎になっていると感じた。

  • 試合を想定し、セットプレーの練習が何度も繰り返される
    試合を想定し、セットプレーの練習が何度も繰り返される

 初見さんと鈴木さんが共通して語った同部の魅力にも強さのヒントがあった。それは「厳格な上下関係のなさ」だ。「たまに上下関係が厳しい学校を目にしますが、佼成にはないですね」(鈴木さん)、「準備や片付けも皆でやるのが当たり前。先輩たちがそうしてくれたお陰で、私たちも余計なストレスがなくプレーに集中できましたから」(初見さん)。コートの中では先輩も後輩も関係ない。風通しのよさがチームワークに表れることを、部員たちは身をもって知っているのだ。

 同校の校訓に「行学二道」の教えがある。行いと学びの道、その両立こそが人間を大きく成長させるというものだ。「学」は「学問」を指すが、部活動での「学び」にも置き換えられそうだ。日々の練習と日ごろの行い、それらが育むメンタルの強さ。すべてが一つになったとき、チームの力が最大限に発揮されるのだ。

 (文・写真:藤井恵菜 一部写真:佼成学園女子中学高等学校提供)

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