愛校心がつむぐ半世紀超えのバザー…清泉女学院

 清泉女学院中学高等学校(神奈川県鎌倉市)で7月8日、在校生の保護者で作る「泉会」が主催する恒例のバザーが開かれた。半世紀以上もの歴史あるバザーで、在校生と保護者に加え、卒業生とその保護者までが力を出し合い、「清泉ファミリー」一体で盛り上がる。「親子で卒業生」というケースも多い、伝統校ならではの強い愛校心をかいまみた。

父親たちも大汗かいて焼きそば作り

  • 「父の会」が運営する模擬店。年に1度のバザーを楽しみに待つ父親も多い
    「父の会」が運営する模擬店。年に1度のバザーを楽しみに待つ父親も多い

 まぶしいほどの好天に恵まれたこの日、同校のバザー会場を訪問した。午前10時半の開始直後、キャンパスはすでに多くの人でにぎわっていた。

 正門を入ると、すぐ右手に紅白などに彩られた大きな集会用テントが目に付いた。中では、焼きそば、焼き鳥、フランクフルトソーセージ、綿菓子などの模擬店がいい匂いをさせている。その奥のテントでは、ビニールプールに浮かんだ色とりどりのゴムボールをすくおうと夢中になっている子供たちの姿がある。

 これらの模擬店で忙しく、楽しげに立ち働いている男性たちは、在校生の父親でつくる「父の会」のメンバーだ。「父の会」を含め、在校生の保護者でつくる「泉会」の会長・緒方啓明さんは「毎年、このバザーのためにスケジュールを空け、楽しみにしている父親も少なくありません。模擬店の運営で1日一緒に汗を流すので、父親同士で交流する、いい機会になっています」と話す。

 参加は自主的なものだが、今年も約200人の父親が顔をそろえた。「子供を姉妹で学校に通わせている家庭も多いです。中には10年、15年とバザーで焼きそばを作ってきたというお父さんもいますよ」。緒方さん自身も、2人の娘が在学中なので、「9年間は関わることになります」と元気な笑顔を見せた。

清泉ファミリー一体のバザー

  • 自身も卒業生という高倉芳子校長
    自身も卒業生という高倉芳子校長

 このバザーは「泉会」の主催だが、これに卒業生の保護者でつくる「白水会」、卒業生の会「ラファエラ・マリア会」、在校生の委員会「福祉委員会」などがそれぞれ協力する。いわば清泉ファミリーが、一体となって作りあげるバザーなのだ。

 バザーの歴史は、思いのほか古い。高倉芳子校長によると、1963年に同校が横須賀から現在地に移転するにあたり、新しい設備を整える必要があるだろうと、保護者たちが自発的に始めた活動が原点らしい。ただ、「当時、私は中学1年生でしたが、既にバザーは行われていました」とのこと。移転準備のために、記録よりも早くに開催されていたのかもしれない。

 「以後、半世紀以上にわたって引き継がれ、収益の一部は、現在では世界の姉妹校を通じて、ベトナムやフィリピンなどで子供たちの福祉のために役立ててもらっています。収益の使い道については、バザーを主催する『泉会』から相談を受けて考えます。東日本大震災の復興支援活動も行っています」

校内では生徒と保護者が一緒に活動

  • 卒業生の保護者による「白水会」会員と、人気の手芸品
    卒業生の保護者による「白水会」会員と、人気の手芸品

 今度は校舎に向かおう。正面にある講堂に沿って左に折れ、お弁当やパンの売り場に目をやりながら進むと、目の前にそびえているのが4階建ての校舎だ。

 中に入ると、来場者が階段に行列を作って待っていた。廊下に机を出して案内係を担当していたMさん(高2)に聞くと、2階の教室で開催している「掘り出し市」の列だという。一緒に案内係を務めるIさん(高2)は、「『掘り出し市』で買ったものを友達同士で交換し合うのが楽しいんですよ」と話す。2人とも、水色のワンピースの盛夏服を着ていて、いかにも涼しげだった。

 「掘り出し市」はバザーの名物で、毎年、来場者が詰めかけるので、混雑を避けるため、廊下を一方通行にしてあるほど。ようやく会場に入ると、中2の保護者の母親が会場の整理や会計を担当していた。テーブルには調理器具や文房具、アクセサリーなど生徒や保護者が持ち寄った品物が、所狭しと並べられ、来場者は品物を手に取って確かめながら、お気に入りの一品を探していた。

 3階の「手芸」の部屋で販売していたのは、在校生の保護者が1年かけて用意してきた手作りの品。いずれも一点物だけに、レッスンバッグやお弁当袋、エプロン、フラワーアートなどを求め、来場者の列ができていた。

  • 「福祉委員会」による会場。今年初めてWWFの商品を扱った
    「福祉委員会」による会場。今年初めてWWFの商品を扱った

 3階には、「福祉委員会」が出している「福祉の店」もあった。企画運営している福祉委員会委員長のOさん(高2)は、地理の授業で地球環境についてのドキュメンタリー映画を見て、少しでも自然保護に貢献したいと、今回初めてWWF(世界自然保護基金)商品の販売を考えたという。会場では、トイレットペーパー、ボールペン、コットンバッグなどのWWFライセンス商品を販売。「WWFって?」と題したポスター展示も行い、商品を買うことがWWFの支援になることを呼びかけていた。

 このほか、4階には、輪投げやビンゴをするゲームの部屋があり、盛んに小学生たちの歓声が上がっていた。

 ゲームの部屋は、高2生と母親など、生徒と保護者が組んで会場を担当しているのが特徴だ。しかも、どのペアも、親子ではない組み合わせにしているのが興味深い。

 高2生の保護者・Nさんに話を聞くと、「教室では、生徒と保護者が一緒になって活動します。ただ、あえて他のお子さんと一緒になるように役員が配慮します。我が子以外と活動することは、親にとっても、非常に良い経験になると思います」と語った。

 生徒も保護者も、共に楽しみ、共に学ぶのが同校のバザーの良き伝統なのだ。

卒業生も、卒業生の保護者も

  • 玉縄城跡に広がるキャンパス
    玉縄城跡に広がるキャンパス

 「手芸の部屋」を見て、そのまま隣の教室に足を向けると、展示台の上に制服姿の熊のぬいぐるみと、着せ替えのミニチュア制服がずらりと並んでいた。このミニチュアの制服は、「白水会」が、一つ一つ手作りで仕上げたものだ。愛らしい上に数が限られているため、特に人気の高い品だという。

 同校の制服といえば、ベージュのブラウスと紺のジャンパースカートの組み合わせが有名。創立以来、変わることのない伝統で、世界中にある姉妹校でも同じ制服を採用している。ぬいぐるみも、この制服や盛夏服、エプロンなどを身に着けており、季節に合わせた衣替えが楽しめる

 「白水会」の名称は、「清泉」の「泉」に由来する。こう説明してくれた会員のSさんは、自身も娘も同校の卒業生だという。同じく会員のIさんは、同校がカトリック教育の学校で、子供それぞれの才能を大切にする点に賛同し、2人の娘を卒業させている。

 会員らの話を聞きながら、在校生の保護者だけでなく、卒業生、卒業生の保護者まで関わってバザーを盛り上げている点に、伝統校ならではの愛校心の深さを感じた。

 広報の野澤俊介先生は「バザーは、中1から高2までの全員が関わる行事です。バザーを楽しむ生徒たちの姿を見ることもできますし、ビンゴや輪投げなどのゲームでは、生徒と直接話ができるので、小学生に学校の様子を知ってもらう良い機会の一つです」と話す。

 会場で出会った小学4年生の女の子は「いとこのお姉さんが在学しているので見に来ました。バザーは、手芸の部屋が楽しく、たくさん買い物しました。学校を見学できて楽しかったです」とうれしそうに話した。

 「教師や在校生の様子を見れば、どういう学校か分かる」と言われるが、その学校は、先人たちが築いてきたものでもある。このバザーを訪れれば、清泉女学院に多くの人が集い、伝統をつむぐ様子を目の当たりにするだろう。

 (文と写真:水崎真智子)