数学好きの生徒を増やし、学校PRにも活躍…数検

 数学好きな生徒をいかに増やすか。「実用数学技能検定(数学検定・算数検定)」(事務局・東京都台東区、以下数検)が、この問題を解決するためのアプローチとして注目されつつある。日出学園中学校・高等学校(千葉県市川市)は、16年前から数検の団体受検を始め、数学が好きになる動機付けや数学的思考力の向上に効果をあげてきた。今年から年に3回行われる個人受検の会場を引き受ける拠点校制度を導入し、学校のPRにも役立てているという。同校が、数検をどのように活用しているかを紹介する。

学力定着を図る絶好の機会

  • 数学の醍醐味を語る白水教諭
    数学の醍醐味を語る白水教諭

 数検の受検志願者は2016年度、全国で延べ36万7000人を数えた。大学、短大、専門学校では440校以上が、数検の資格を評価する入試優遇制度を導入しており、教育関係者や受験生からますます注目が集まっている。

 これにいち早く着目した日出学園中学校・高等学校は、16年前に数検の団体受検を始めた。数学担当の白水淳教諭は、「数学への興味を引き出せるようにと、英検や漢検と並んで、数検も希望者は積極的に受けるように推進してきました」と話す。

 数学検定の階級は、5級(中1程度)、4級(中2程度)、3級(中3程度)、準2級(高1程度、数I・数A)、2級(高2程度、数II・数B)、準1級(高3程度、数III)、1級(大学程度・一般)となっている。同校は学年に合わせた級の受検を勧めているが、数学好きの生徒はどんどん上の級を受検するようになっている。中には、中3で2級に合格する生徒もいる。

 白水教諭によると、同校が団体受検を実施しているのは3学期の2月。行事や入試が一段落する2月半ばは、学校としても実施しやすい時期だからだ。「生徒にとっては、この時期の受検は、その学年で1年間学んだことの総復習になります。中間や期末テストで定着しきれなかった部分も、ここで受検することで定着が図れます。学力を定着させる絶好の機会なのです。また、学校としても、それぞれの生徒の学力チェックにもなります」

数学に親しみ、将来の選択肢を広げる

  • サンライズ入試や、拠点校制度の活用を語る堤校長
    サンライズ入試や、拠点校制度の活用を語る堤校長

 数検の受検前になると、「過去問のコピーを見せてください」「ここが分からないので教えてください」と多くの生徒が職員室に詰めかけるという。希望する生徒には、先生がマンツーマンで丁寧に教える。

 同校の堤雅義校長は、「1学年約100人の少人数教育なので、生徒と先生の距離も、生徒同士の距離も近く、みな仲が良いのが本校の特長です」と話す。「一人一人の生徒を丁寧にきちんと見て、その子に合った学習法、その子に合った進路を見つけて、第1志望の進路実現を目指しています」。先生たちの面倒見のよさも、そんな教育の表れだろう。

 数検をきっかけにして生徒と先生、生徒同士で話題が広がる。「数学に興味、関心のある生徒、意識が高い生徒は、友達同士で競って受けるようになります。さらに上を目指して、『数学オリンピックに出たいね』などと友達と話しています」と白水教諭は話す。逆に、数学が得意ではなかった生徒が、数検に合格したことで自信を持ち、数学に興味を持つようになったケースもあるそうだ。

 こうした数検効果のせいか、同校では理系選択者が比較的多い。「現在の高3は理系が半分を占めています。文系でも、数学選択で受験する生徒が多くいます」。数学の苦手意識を克服することで、進路の幅が広がる。将来の職業の選択肢も増えることだろう。

生徒から数学を楽しむ声がかえってくる

  • 数学では生徒同士が教え合う授業を展開
    数学では生徒同士が教え合う授業を展開

 経済協力開発機構(OECD)が世界の国・地域で15歳を対象に実施している「国際学習到達度調査(PISA)」によると、日本は数学的リテラシー分野で、2000年に1位だったが、06年に10位に下がり、子どもたちの数学離れが危惧された。15年には5位まで浮上したものの、依然としてシンガポールや香港などに上位を譲っている。特に女子は正答率が低く、数学嫌いが懸念されている。

 しかし、日出学園に関する限り、こうした懸念はあてはまらないようだ。「もちろん、数学が苦手な生徒はいますが、女子だから苦手ということは全くないですね。数検を受けるのも女子が半数です」と白水教諭は話す。

 どんな指導をすれば、生徒は数学好きになるのだろう。白水教諭は「『やれ!』と言ってもダメです。生徒が自分で解いて、面白いと思わないといけません。難問を自分で解いていくと、考えることが楽しくなり、数学的なものの見方が面白くなってくるのです。それが数学の醍醐味(だいごみ)です。それには、内発的な動機付けが大事です」と話す。

 数学の面白さを知ってもらうために、白水教諭は、小さなことでも褒めることを大切にしている。生徒の答案をよく見て、答えが違っていても、「ここまでの考え方は合ってるよ」などと声をかけてきた。次第に生徒から、「3日間考え続けて、やっと解けた!」「夢の中で解けた」など、数学を楽しむ声を聞くようになったという。

 こうした楽しさを知ってもらうために、白水教諭が注目しているのが、数検の2次検定だ。数検は記述式で各級とも、1次が計算技能検定、2次が数理技能検定となっている。「1次は計算問題なので基礎学力の確認になりますが、2次の問題は応用力が試されます。問題を解くことで、日常から数学的にものを考える力を伸ばしてほしいと考えています。また、そういった力は20年の大学入試改革でも必要とされている力です。2次の問題に取り組むことで、大学入試にも対応できると考えています」

新しい入試の出願資格にも活用

  • 検定会場として、多くの小中学生らが来校する
    検定会場として、多くの小中学生らが来校する

 数検の活用は、日頃の学習にとどまらない。同校が2018年度入学者試験で、新たに導入する「サンライズ入試」でも、その出願資格の一つに「数学検定6級以上」(算数検定6級:小学校6年程度)が含まれている。

 サンライズ入試は、与えられた問題に口頭で答える新しいタイプの入試。これからの時代に求められる思考力、判断力、表現力などの力を、積極的に評価しようという取り組みだ。ただ、筆記試験ではないだけに、学力を客観的に確認する方法も必要となる。

 「そのため、一定の学力があることを証明できる、数検や英検、漢検などを出願資格としました」と堤校長は説明する。「小学生のうちから、こうした検定を受けているということは本人やご家庭の教育意識が高いことも示しているからです」

 また同校は、今年から数検の個人受検の会場を引き受ける拠点校制度を導入した。自校の生徒が受検するだけでなく、個人受検の一般会場としても学校を利用してもらうためだ。

 「本校は少人数教育なので、在校生や卒業生も多くなく、あまり認知されていないのが悩みです。会場として開放することで、地域の個人受検者、小学生や中学生に来校してもらえるので、とてもよいPRになっています。受検日には部活をしている生徒も校内にいるので、学校の雰囲気を知ってもらえますし、文教地区の静かでよい環境にあることも知ってもらえると、期待しています」。

 さまざまな取り組みに数検を活用することで、同校は学校作りに弾みをつけているようだ。数学が苦手な生徒や親、学校も、何か克服のヒントが見つかるのではないだろうか。

(文と写真:小山美香)

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