女子校にまみれるプレミアムイベント…辛酸なめ子<5>

女子校の授業を体験し、鋭気と若さを吸収

  • 誰も取り乱したりせず、静かに鶏の頭部を解剖している、意識の高い空間
    誰も取り乱したりせず、静かに鶏の頭部を解剖している、意識の高い空間

 最近の女子校は理系教育にも力を入れていて、サイエンス体験ができる教室もありました。生物室では実践女子学園が「ブタの目を解剖しよう!」、化学室では日大豊山女子が「トリの脳を徹底解剖!」、吉祥女子が「イカとハマグリの共通点? 解剖してわかること」と、なぜか解剖が盛り上がっています。解剖したいお年頃なのでしょうか。

 十文字の理系の教室周辺は、廊下にソファがあったり居心地良さそうで、この雰囲気だけでも理系への苦手意識が薄らぎそうです。他校と共同で高度な研究論文も発表していて、「バフンウニを用いて受精の仕組みを探る」という研究が印象的でした。同じ年頃の男子高校生が悶々(もんもん)としている時、十文字の女子高生は冷静にウニの受精を検証しているのです。

 化学室で行われた日大豊山女子の、トリの頭解剖講座を見学。知的美人の教諭が、ニワトリの生態について説明したあと、参加者全員にニワトリの頭の水煮が配られます。サイエンス部の生徒のサポートのもと、キモがる人も怖がる人も出ず、淡々とピンセットで解剖していきます。皮を外し、頭がい骨を取り外し、視神経と脳を取り出し、大脳、中脳、小脳を実際に観察。解剖する我が子の写メを撮る母親もいました。ニワトリ頭部のアップを撮影する人も。この場の知的好奇心ヴァイブスに包まれての行為だと思われますが、あとで我に返ってアルバムに原形をとどめていないニワトリ頭部の写真を発見することになるのでしょうか……(合掌)。

 刺激的な解剖体験教室のあとは、音楽で癒やされたくて講堂へ。十文字のマンドリン部の演奏を拝聴しました。不肖私も中高の部活がマンドリンだったので、感慨深いものがありました。十文字のマンドリン演奏はギターとマンドラだけでなく管楽器と弦楽器も加わって高級感あるハーモニーでした。

  • ソメイヨシノについての講義のあと、桜のハーバリウム作りに挑戦
    ソメイヨシノについての講義のあと、桜のハーバリウム作りに挑戦

 女子力が高まる体験教室もあります。東京家政大学附属女子中の「『桜咲く!』を呼ぶ! ハーバリウムをつくろう」という講習では、花をオイルに漬け込んで美しいまま保つ瓶詰を制作。ハーバリウムといえば愛子さまが宮内庁の文化祭美術展で出展されたやんごとなきアイテムです。ソメイヨシノについての講義も充実していました。「ひさかたの 光のどけき 春の日に……」という和歌のとおり、窓からは午後のやわらかい日差しが差し込み、居眠りばかりしていた自分の中高時代を思い出しました。桜の花を漬けることで、来春の合格にも縁起が良いという、心遣いにあふれた体験教室でした。

 隣の教室では個人的にもぜひ体得したい「リレー作文で感性を磨こう!」という女子聖学院の授業が行われていました。参加者の女子小学生が、ひとりずつ一文を書いて回してゆき、短い文章を制作。「果物をたくさん食べたら母に怒られたのが嫌だったけれど、最終的に母と父が離婚して父に引き取られ、母とは別れた」なんて衝撃的な展開もありました。でも一番多かったのは夢オチです。

 「目が覚めたら夢だった」「そう思ったら夢だった」など……。先生の「結末に困ったら、登場人物を殺しちゃうか、夢オチにするといいです」というアドバイスがあったからでしょうか。全ては夢オチ……今までの自分の人生が夢だったら、という仮定で、改めてどの女子校に行きたいか選びたくなりました。それにしても、女子中高生にまみれてアンチエイジングしつつ、女子校の良さを満喫できる夢のようなイベントでした。

プロフィル
辛酸 なめ子( しんさん・なめこ
 漫画家・コラムニスト。東京都生まれ、埼玉県育ち。武蔵野美術大学短期大学部デザイン科グラフィックデザイン専攻卒業。近著は「大人のコミュニケーション術」(光文社新書)、「おしゃ修行」(双葉社)、「魂活道場」(学研プラス)など。

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