2010年

救われた 街行く人の一言…発言小町大賞2010

気をつけて おかえり 頑張れ 明日!明日!

  • イラスト・山崎のぶこ
    イラスト・山崎のぶこ

 「知らない人の一言に助けられたこと、ありますか?」。インターネット掲示板「発言小町」で、そう尋ねた投稿に多くのドラマチックな体験談が寄せられ、一連のやり取りが今年最も心に残った話題として「発言小町大賞2010」に輝いた。「無縁社会」が流行語になった年に、人の温かさがひときわ共感を広げたようだ。

 投稿者は、仕事も人間関係も八方ふさがりだった時、終電も逃し、タクシーに乗った体験を寄せた。降り際に運転手から言われた「暗いから気をつけて帰るんだよ」の一言が心に響いて号泣。泣いた後はすっきりしたという。

 タクシーで自分も励まされたというエピソードが続々届いた。「初出産で産後(うつ)に。タクシーで泣いて夫に電話をした後、運転手さんが車を止め『今思う存分泣きなさい。つらいことはあっても、かわいい娘さんの笑顔があなたを助けてくれるから頑張るんだよ』と落ち着くまでつきあってくれた」

 別の女性は「20代で両親を亡くし、嫁いで故郷の大阪を離れた。久しぶりの帰郷でタクシーに乗ると『おかえり、大阪はええやろ、いつでも帰っておいでな』。両親が亡くなって初めて耳にした『おかえり』。その言葉を胸に故郷を思い、今も頑張っています」

 すれ違った人の一言に救われた体験も多かった。「孤独な育児でボロボロだった時、スーパーの入り口ですれ違ったおばさんが『つらいのは今だけ。頑張るんだよ!』と肩をたたいてくれた」「失恋して電車で声を殺して泣いていたら、中年男性が降りがてらに『明日! 明日!』と肩をたたきミントガムをくれた」

 息子の障害に悩み、飛び込み自殺を考え行き交う車を見ていた女性は「通りすがりのビジネスマンが息子を見て『おっ、かわいいな』。私の子は他人様から見てもかわいいんだと思ったら、もう少し生きていても良いかもと思った」とつづった。

 精神科医の香山リカさんは、赤の他人という関係に着目する。「身近な家族や友人の励ましがプレッシャーになることもある。利害関係や思惑がない、その場だけの人の言葉だからこそ素直に心に響くのでは」。自分を何者か知らない人から、無条件に励まされ、認められると、その一言がうれしくなるという。

 「希望のつくり方」(岩波新書)の著者で東大教授の玄田有史さんも「人の縁が薄れ、不安や緊張を強いられる世の中になり、『大丈夫』と言ってくれる大人が少ない」と話す。

 だからこそ、悲しみやつらさを知る大人の励ましは、体験に裏打ちされた言葉として心に響く。「ただ、同じ言葉をかけられても響かない人もいる。温かい気持ちになれた人はきっと、気づかない所で他人を助けているんじゃないかな」

 届いた反響は700件以上。響き合う大人がいる限り、きっと、日本もまだ大丈夫だ。