小町拝見

自分を見つめすぎないで…香山リカ

 現代を生きる私たちは、何かにつけて「自分を見つめましょう」と言われる。しかし、私はかねて、ここには大きな落とし穴があると思っている。というのも、「自分を見つめすぎる」ために心のバランスを崩していると思われる人が診察室にも大勢やって来るのだ。


 真面目な人に「自分を見つめて」と言うと、大抵、その視線は厳しくなり、「こういう点が問題なんだ」と欠点を見つけたり、「これじゃ100点満点の20点」などと低すぎる評価を与えたりすることになる。

 すると自信を失い、「私はダメだ、ダメだ」と自己否定してしまい、そうなると、いつもの実力が発揮できなくなって失敗し、さらに自己否定を……という悪いループに入ってしまう。

 どうすればこのループから抜けられるのか。「強情な自己否定をなくしたい」というトピでは、トピ主さんは周りからの励ましや慰めを求めているようにも思われた。しかし、周囲からの評価で自己否定を解消しようとすると、結局は「もっと注目して! もっとほめて!」と、それに依存するようになってしまう。

 つまり、なんとか自分で自分を立て直し、支えられるようにする。そして自分をあまり見つめすぎず、いじめすぎないようにする。自己否定のループから抜け出すには、それしかない。

 診察室では、まずは「十分頑張っているじゃないですか」と励ましの言葉を伝えるが、それからは「大丈夫」と自分で自分に声をかけられるよう、一緒にトレーニングする。同時に、他者の目で「今の私ってどう?」と自分を見つめすぎるクセも直すようにする。

 「空を飛ぶ鳥も野に咲く花も思いわずらわない」という聖書の言葉を、信仰を持たない人もちょっと思い出してみてはどうだろう。

香山リカ(かやま・りか)
 精神科医、立教大教授。1960年、北海道生まれ。豊富な臨床経験を生かし、新聞やラジオ、テレビなど様々なメディアで、現代人の心の問題について発言している。