私の「発言」

(2)美人たちの悩みは理解されにくい…コラムニスト・犬山紙子さん

  • 「『負け』を笑い飛ばせる女性ってカッコイイですよね」
    「『負け』を笑い飛ばせる女性ってカッコイイですよね」

 ――犬山さんは、もともと漫画家を目指していらっしゃったんですね。

 犬山紙子さん)そうなんです。大学を卒業したあと、14歳から住んでいる地元・仙台でファッション誌の編集をやっていました。楽しい職場だったんですが、働き始めて1年半くらいした頃、家族の介護をしなければならなくなって。当時、きょうだいはそれぞれ離れたところにいたので、「じゃあ私が」と会社を辞めたんです。

 その後、きょうだいも戻ってきたので時間に余裕もでき、ニート(若年無業者)生活です……時間がたっぷりあるので、毎日、漫画を読んだりゲームをしたり楽しく過ごしていたんですが、「家でもできる仕事はないかなー」と考えて、以前から漫画家を目指していたこともあり、頑張ってマンガを描いてみました。

 ――どんな作品だったんですか?

 犬山)「ブログウォッチャー嵐」というタイトルで、意地悪な女性が女のぶりっ子ブログにアクセスして、けちょんけちょんに批判するという内容です。ちゃんと定規で線を引いて、コマを割って、16ページの作品に仕上げたんですよ。一応、コンテストに回してもらったのですが、掲載されることなくボツでした。そこで挫折です。

ブログとツイッターが転機に

 ――すごく読んでみたいかも。そこからブログ「犬山紙子のイラストエッセイ」を始めたんですか?

 犬山)そうそう。2009年から10年頃かな、知人の勧めで始めて。人の恋愛を根掘り葉掘り聞いてそれを紹介したり、昔の変な話をまとめたり。

 ――それが注目されて、「負け美女 ルックスが(あだ)になる」(マガジンハウス)として書籍化されたんですね。

 犬山)ブログが本になっている人たちを見て、私も「本にしたい」と野望を抱いていたのでうれしかったです。ブログを書きつつ、ツイッターでいろいろつぶやいていたら、そこから出版のオファーがあって。本当にツイッターのお陰です。でも、このタイトルは誤解を生みやすく、なかなかツライ思いもしましたよ……。

 ――「自分で美女って言うな」ってことですか?

 犬山)そうですね。「犬山が自分のことを負け美女と自称している」とよく勘違いされるんですよ。人のエピソードを集めたものなのですが……。でも、そのときに「自分のことを美人と言う痛い女w」とかネットでいろいろ書かれたりした経験のおかげで、強くなれた部分もあると思っています。

美女を口説いてくる男性は…

  • 犬山紙子さん(東京都内で)
    犬山紙子さん(東京都内で)

 ――「負け美女」には、本当にキレイなのになかなか彼氏ができない女の子たちがたくさん描かれています。

 犬山)みんな大事な友だちです。基本、大好きな女の子のことしか書いてない。飲みながら話を聞いていると、本当にいとおしくなるんですよ。変な男にばっかり引っかかったり、好きな人になかなか告白できなかったり。

 キレイな子って意外と「ビビリ」なんです。かわいくて、女同士で飲んでいると話題も豊富で楽しい子なのに、好きな男性には全然行けない。「10年彼氏がいない」とかよく聞きます。あまりの臆病者ぶりに、「えー、まさかこの子が“チキン”なんて」って驚きますよ。世間の「美女像」とみんなかけ離れてるんです。

 28歳あたりからかな。そのあたりからの美女はしんどくて。年齢の重みも加わるし、経験豊富なイメージもついちゃって男性から「敬遠されてしまう」というか。「口説いてもらって全然いいのに、来てくれるのは妙に自信のあるバブルの残りかすのようなおっさんばかり……」という状態になってしまうんですね。

 ――同年代の男性にとっては、なかなか手が出せない高根の花なんでしょうねえ。

 犬山)なので負け美女たちは肉食化するしかないのかなと。自信を持てればもっと楽しめると思います。また、「自分に好意を寄せる男性のことが好きな女グループにいじめられて会社を辞めた」とか「外見が関係ない仕事でも、実力で見てもらえない」といった悩みも聞きます。

 しかし、同性にその悩みを話すのはモテ自慢と思われてなかなか相談できないのが一番の悩みではと思うんです。小町にもこういう投稿があるとたたかれますよね(笑)。「じゃあブスに整形したらどうですか」とか言われちゃう。「対人関係のコツを聞きたいだけなのに」って話なのですが。そして一人で閉じこもってますます自信をなくしてしまう。

 ――まあ、「キレイってだけで得してるでしょ」と思っているかもしれませんね。

 犬山)得なこともたくさんありますが、損してることも結構あると思います。あんまりその損してるところが伝わらないんですよね。「負け美女」にもいろんな子がいますが、私の周りの子たちは本当にいとおしくなる人たち。ツライことにもめげず、一人でいろんなことを笑い飛ばして、一人で楽しむ方法も知っていて。「負け」だなんてくくりましたが、正直みんなカッコイイなと思っています。

プロフィル

 犬山紙子(いぬやま・かみこ) 1981年生まれ。大学卒業後、仙台市の出版社でファッション誌の編集を担当。家族の介護を機に退職し、ニート(若年無業者)生活を送りながら書いたブログがきっかけで2011年、「負け美女 ルックスが仇あだになる」(マガジンハウス)を出版した。バラエティー番組にも多数出演している。2014年12月発行の女性誌「an・an」(同)で、「これからの日本を楽しくする105人」に選ばれた。柴犬好き。