私の「発言」

(1)仕事を“楽しい”と思ったら職務放棄と同じ…壇蜜さん

 独特の雰囲気と色っぽさが魅力の壇蜜さん。男性だけでなく、女性ファンも急増中です。

 そんな壇蜜さんの日常を赤裸々につづった『壇蜜日記』が刊行されました。昨年の10月7日から今年の8月16日まで、一日も欠かさず書き続けた日記について、また、日々つづっているブログをはじめとしたネットについて、壇蜜さんが物をつづるスタンスや思いを語っていただきました。

『壇蜜日記』で日常を赤裸々に

 ――日記を書くことになった経緯を教えてください。

 壇蜜さん)雑誌の「文藝春秋」に「この人の月間日記」というコーナーがありまして、リレーのように1月ずつ日記をつづるのですが、昨年の8月に私の順番が回ってきたので、1か月書かせていただきました。それがきっかけで、このまま1年間続けて、本にして出版しようということになったんです。

 ――人に読ませることが前提の日記を書くのはいかがでしたか。プライバシーをさらけ出すことに抵抗はありませんでしたか。

 壇蜜)まずは「毎日書くこと」を自分の仕事と思い決めました。それに、私の日常はとくに「おしゃれ」というものではないので、さらしてもいいかなと。この日記で多く人の共感を得たいとか、この日記であわよくば作家デビューとか、何か目標を持って書いていたわけではありません。そういうことをうっかり目指したら、「素の私をみて!」とか訳の分からない感情にとらわれたかもしれません。

 ――毎日、あったことをそのまま書いたのですか? 脚色とかはしなかった?

 壇蜜)話を盛ったのか、ということでしたら、それはないです。「うそはつかない」を約束事にしていました。ただ、人や物が特定されないように「ぼやかして」書くように心がけました。

 ――「ぼやかし」方が独特ですよね。日本シリーズを「臙脂(えんじ)と橙(だいだい)の頂上決定戦」という表現が面白かったです。それから「手や機械で行う、むくみやセルライト除去のマッサージを受けられる施設」とか、「世界的に愛されている日本生まれの猫」とか。

 壇蜜)「パッキンと割るタイプの双子アイス」とか? 学生時代ですが、VTRの長回しのような読書感想文や作文を書くのが大嫌いでした。それを克服するために、一つの単語をどのくらいまどろっこしく書けるか……というトレーニングしたんです。例えばケンタッキーフライドチキンでしたら「白ヒゲのおじいさんが送り出す、世界的に有名なニワトリの空揚げ」。

 ――それは、まどろっこしいですね。では、このペットボトルの玉露のお茶は何と表現しますか?

 壇蜜)そうですね。「何とも高価な茶葉が混入された、日本いにしえの飲料物、カッコ緑、カッコとじ」。

 ――(緑)も付けるんですね。なるほど、お茶には緑色も茶色もありますものね。これなら1行の文章が5行ぐらいに増えそうです。

 壇蜜)1行を5行に増やしたり、逆に5行を1行で表現したり、いろいろなトレーニングをしました。中学、高校、大学とどこまでも作文がつきまとう。嫌で嫌で仕方なかった。あの時代は、文章を紡ぐことに責任感もなく、ただただ単位のためだけに“作文”していました。

 ――その「トレーニング」が実を結んで、『壇蜜日記』が生まれたわけですね。

 壇蜜)昔の私が、いま役に立ったということでしょうか。まさか、こんなことがお金になるとは思いませんでした。

 ――壇蜜さんは、お金にシビアですよね。日記の中に「給料をあぶく銭と言われた」という一文があって、印象的でした。1行にこめられた怒りがとても伝わってきました。

 壇蜜)私、この発言をした人のこと、一生、許さないでしょうね。その人から見たら、私の存在や世間で話題になっていることなどは、偶然の産物で、気楽にやっているように映っているのでしょう。そして、「あぶく銭」と言われて怒る自分でいたいです。「このくらいのこと、何でもないわ。みんな仲良く、地球は一つ」なんて言ってたら、いつまでも、お金はあぶく銭のままですから。忘れないし、許さない。そういう自分のことを好きでいたいです。悪口に腹を立てる自分を失わないで、仕事をしたいですね。

 ――日記を読んでいても、仕事に対する矜持(きょうじ)というか、誇りみたいなものを感じました。

 壇蜜)「仕事を楽しんでいない」と伝えたい気持ちがありました。仕事は楽しいとか、つらいとか思ってはいけないんです。それは娯楽でお金を稼いでいる人間の最低の礼儀だと思っています。“楽しい”と思ったら、それは職務放棄です。

プロフィル

壇蜜(だん・みつ)/1980年秋田県生まれ。調理師免許を取得、冠婚葬祭の専門学校にも通う。和菓子工場、銀座のクラブホステスなど様々な職業を経験した後、2010年に29歳のグラビアアイドルとしてデビュー。2013年に映画「甘い鞭」に出演、日本アカデミー賞新人俳優賞受賞。著書に「蜜の味」「エロスのお作法」「はじしらず」など。

『壇蜜日記』

壇蜜/文藝春秋/570円(税別)

 賞味期限切れのソースで運試し。新聞を読んでいると、つい求人欄に目がいってしまう。ショックなことがあると、食事もせずにひたすら眠り、たまたま入ったコンビニで肌着類の品(ぞろ)えが充実していると、他人事なのにホッとする。抱かれる予定はしばらくなし――。

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