私の「発言」

(2)娘を持って開眼 女性キャラを描く楽しみ…漫画家・中村光さん

  • 中村さんの自画像
    中村さんの自画像
  • 「聖☆おにいさん」のブッダとイエスを描いていただきました
    「聖☆おにいさん」のブッダとイエスを描いていただきました

 検索をしていて、発言小町にたどり着くことが多いという漫画家の中村光さん。出産し、1児の母でもあります。仕事と育児の両立について聞きました。

 ――連載も抱え、忙しい毎日だと思いますが、どういうスケジュールで育児と仕事を両立しているのですか。

 中村)1年目はベビーシッターさんにお願いしていましたが、2年目からは、シッターさんに加え、スポーツジムも使っていました。

 ――スポーツジムですか?

 中村)スポーツジムを利用すれば子どもを3時間預かってくれるので、シッターさんが頼めないときに子どもを預けるために行っていました。ジムに行っても走らずに、待合室でセリフとコマ割りを考えていたり。

 ――それは大変でしたね……。保育園に入れるという選択はなかったんですか。

 中村)保育園に入るのがとても難しい「激戦区」ですし、普通に入れようとすると十数人待ちになってしまって、まず入れないなという思いもあって。「がんばれば入れるよ」とは言われたんですが……。最近、娘がやっと保育園に通い始めたので、圧倒的に楽になりました。今まではなかったですが、たまに夜、お酒を飲みに行ったりすることもあります。

 ――自宅で仕事をしていますが、気分転換は?

 中村)娘と2人で旅行に行くことです。2泊で沖縄県の竹富島に行ったり、アシスタントさんも一緒に海外旅行へ行ったり。仕事のやりくりが大変なんですが。あとは、やっぱり絵を描くのが好きなので、暇なときはずっと絵を描いています。デッサンしたり、映画を停止して、そのシーンをスケッチしたり、絵の上手な人の漫画を延々模写しています。

 ――ほかの漫画家の絵を模写することもあるんですね。

 中村)漫画家はよくやっていると思います。絵がうまくなるのが一番楽しいから、ストレス解消になるんですね。自分でも少し休まなきゃと思っているんですけど、ストレス解消が絵を描くことだから、結局ずっと肩が痛いままだったりして。もっと仕事以外の筋肉を使う趣味をつくらなくちゃ、とは思うんですが、無理やり走りに行ったりしても全く楽しくないので。

育児と仕事の両立 悩んだ時期も

 ――締め切りは遅れないほうですか。

 中村)いえ、すごく遅れて、ぎりぎりにしてもらっています……。それ自体もけっこうストレスになっていて。育児が本当に大変だった時期は、この仕事を続けられないんじゃないかと思ったこともありました。無理がたたってずっと体調が悪かったし。具合が悪くても仕事をやらなきゃいけないから、娘に「今、仕事やっているから向こうに行っていて」と言わなきゃいけないというのが、もう……。仕事をしている意味が全く分からないなと思ったり。でも、何とか続けてこられました。

 ――発言小町には、育児と仕事の両立に悩んでいる相談もたくさん寄せられます。中村さんもそういう気持ちになることはありますか。

 中村)たまにありますね。発言小町では専業主婦の方の意見を聞けるので、「そうか専業主婦も大変そうだな」と共感したり。また、働き方についても、自分が働きすぎなのかどうか分からなくなるので、仕事をやり過ぎているのか、自分ができないだけなのかを確認したりします。でも、「漫画家なんですが」なんて人、いないんですよね。なので、どこに自分を当てはめたらいいのか分からないので、余計混乱するという感じです。

お母さんのネタが描きやすく

  • (C)中村光 講談社
    (C)中村光 講談社

 ――出産する際、休載して産休を約10か月取りましたが、その間はどういう時間でしたか?

 中村)初めて仕事をしない長い時間だったので、最初の1、2か月はすごく不安定になってしまいました。「描けなくなっちゃう」とか不安が出てきて。「大事な時期なのに」と言われているに決まっていると思いこんでいましたね。

 ――仕事を再開するまで、ずっと不安だったのですか。

 中村)いえ、3か月ぐらいたったら、仕事をしないことに慣れてきた(笑)。

 ――産休を取ったことで、作品に生きた部分はありますか。

 中村)やはり聖母マリアやお母さんのネタが描きやすくなったことですね。それまで女性のキャラクターに愛情がなくて、描くのが苦手でしょうがなかったんです。子どもにも興味がなかったので、小さい子どもを描くとき、すごく投げやりに「こんな感じかな」という具合に描いていたんです。でも、今は娘がいるので、子どもとか女の子とか、若い女性を描くのがすごく楽しい。「ほっぺたをこうしよう」とか、力を入れられるようになりましたね。女性がこうだとかわいい、というのが自分の中でできてきたという感じはあります。

娘との遊びは「空想遊び」と「お絵かき」

 ――昨年の発言小町大賞2013は、「毎日イライラ子育てが一転、ニコニコ笑顔になりました」という子育てのトピが選ばれました。子育ての悩みを解決したことを投稿したものですが、中村さん流の楽しく子育てする方法は何かありますか。

 中村)子どもと空想上の遊びをしています。昔から何かを仮定して行動するのが好きなので、小さいころにやっていたことの延長なんですが、子どもがそれを自然にやるのでおもしろいです。娘はすごくノリがいい子で、私が空想で演出をして、「あれって○○なんじゃないの!?」と言うと、「そうだね!」とのって行動してくれるんです。それが楽しくて。あとは娘と「ごっこ遊び」をするのが好き。自分が人形になりきってしゃべったりすると、娘がすごく喜ぶんです。私の言うことは聞かないけど、すぐその辺にあったスプーンとかを出して、「こんにちは」としゃべると、娘はハッとした表情になって「こんにちは!」と返事する。そんな遊びをずっとやっています。それから娘もお絵かきが好きなので、2人で何か描いていたり。お絵かきはストレスに全くならないですね。

 ――お母さんが絵が上手というのは憧れますね。

 中村)上手に描けても別に子どもは喜ばないんですけどね。そのままのものが描かれるので。最近、娘が顔を描いてくれるんですけど、ちゃんと眉毛がついていて笑っているとか、怒っているとか、上手なんですよ。ベビーシッターさんが驚いてくれるのがとてもうれしいです。

プロフィル

中村光(なかむら・ひかる) 漫画家。静岡県出身。2001年、「月刊ガンガンWING」から「海里の陶」でデビュー。02年、デビュー作を含むコメディー短編集「中村工房」が発売される。04年から電波系ラブコメディー「荒川アンダー ザ ブリッジ」を「ヤングガンガン」で連載。06年からは「聖☆おにいさん」をモーニング増刊「モーニング・ツー」で連載開始、新たなジャンルを開く。