私の「発言」

(3)「発言小町」を映画にしたら…… 映画監督・TORICOさん

 ――なぜ、映画を撮ろうと思ったのですか?

 TORICO) 友人に自主映画を撮る監督が多かったんです。私も撮ってみたいな……という軽い気持ちでした。初めて撮った『ミガカガミ』が映画祭で準グランプリをとって、海外への配給も決まっちゃって、次を撮るしかなくなった(笑)。私は映画学校を出たわけでもないし、助監督の経験もない。「映画の作り方」を学んでないんです。こういう「絵」が撮りたいというイメージがあって、それをコンテに起こしていく。コンテを映像に収めていく感じで作りました。経験がないから「ここは難しいからやめておこう」とか「お金がかかりそうだからダメ」というのもないんです。とにかく撮る、難しくてもやる。時間も予算もいつもぎりぎり。2本目の『イケルシニバナ』は6日で撮影しました。予算の関係でロケ地は1か所。寝るヒマも食事の時間もなくて、役者もスタッフもボロボロになりながら撮影を続けました。そんな思いをしても、また映画を撮りたくなる。映画作りはとてもアナログな作業です。多くの人がかかわりますから、まず人間関係の構築から始まる。脚本を書いて、キャストやスタッフを集めて、撮影して、編集して……。ほとんど手作りなんです。時間も手間もかかります。でも、得られるものも大きい。映画はいろいろな要素が集まって一つの世界観を作り上げる「総合芸術」だと思います。ファッションでも音楽でも写真でも、いろいろなことをコネクトして、映画に昇華していきたい。

 ――デジタルを駆使した“3D映画”全盛ですが、手作り派の監督としてはどう思いますか?

 TORICO) 3D映画はすばらしい。いままで映画を見なかった人が、3Dを体験したくて映画館に行くようになった。斜陽を続ける映画業界の救世主です。3Dのおかげで映画館に行く習慣ができるなら、それはいいこと! すてきなこと!

 ――「発言小町」を映画にするとしたら?

 TORICO) じつは、映像化するならどういう形がいいか、ずっと考えていました。よくある再現ドラマ的なものは違う気がします。できればオリジナル脚本で作りたい。「発言小町」はジャンル別にトピが横並びに存在していますよね。あらゆるジャンルのトピを一人の“カリスマ”が牽引(けんいん)し始める。バーチャルな世界で生まれた謎の存在が実体化していくんです。妄想から生まれる悪意が現実をじわじわ侵食していくようなホラーはどうでしょう。

 ――いろんな意味で怖いです。

ブログは2年間、毎日書いています

 ――アートユニット「明和電機」とファッションブランド「Meewee Dinkee (ミーウィーディンキー) 」をコラボしていますが、きっかけは?

 TORICO) 明和電機の土佐信道さんと10年前に知り合って、ずっと気の合う友だちだったんです。明和電機が20周年を迎えたのを機に、何かいっしょにやろうということになって。土佐さんの中にファッションブランドを立ち上げる企画はすでにあって、そこに私のアイデアを乗せた感じですね。私とアーティストのArutaくんがデザインを考えて、土佐さんは「あははは」と笑って……ハンコを押すだけ(笑)。ただ面白がってるだけ。きょうのファッションもMeewee Dinkeeです。明和電機のエーデルワイス(女性の特徴を、架空の結晶の花「EDELWEISS」として象徴化したもの)をモチーフにしたプリントです。

 ――ファッションブログを書いているそうですね。

 TORICO) 2年間、毎日書いています。一日も休んでません。続けることが大事だと思って。ファッションブロガーとしての活動もMeewee Dinkeeに生かされています。ブログのコツは必ず写真を入れること。情報は“絵”で伝える。文章は1行で十分なんです。ブログでは長い文章は読まれないから。そう考えると「発言小町」の文章量ってすごいですよね。ビジュアルがないから、たくさんの言葉で精いっぱい伝えようとしている。思いがあふれている。

 ――ブロガー、デザイナーと多方面で活躍していますが、今後の映画監督としての活動は?

 TORICO) いま、企画を進めている作品が1本あって、脚本を書いています。マンガが原作なんですが、しっかりしたストーリーがあるワケじゃなくて、幻想的でふわっとした展開なんです。原作の世界観を壊さないように、お話には納得できる結末をつけなきゃならない。何度も何度も脚本を書き直して、いま15回目です。そろそろ、撮影に入らないと……。映画もファッションも、きちんと“お金”に還元したい。もうからないと続かないから。お仕事なんで、ちゃんと興行的に成功させたいです。頑張ります。

プロフィル

 TORICO(トリコ)映画監督。クリエイター集団「血ユリ団」団長。2004年、短編映画「ミガカガミ」で監督・脚本・主演をつとめ、注目を集める。同作品はカナダ・モントリールを始めとする7か国11か所の映画祭に招待上映され、国内映画祭で準グランプリ受賞。06年、初劇場映画「イケルシニバナ」を公開。13年、アートユニット「明和電機」が立ち上げた初のファッションブランド「Meewee Dinkee(ミーウィーディンキー)」にトータルディレクター&デザイナーとして参加。ファッションブロガーとしても活動中。著書に「不思議ノ国ノ」(書苑新社)。