私の「発言」

(1)シンパシーを感じ合う快感…映画監督・TORICOさん

 「私の『発言』」3回目は、映画監督、女優、ファッションデザイナーと幅広く活躍中のTORICOさん。読み始めたら時間を忘れてしまう――という、「発言小町」の魅力について話していただきました。

厳しい意見が多いけど、納得できる

 ――「発言小町」を読んだ感想や、印象に残ったトピをおしえてください。

 TORICOさん)初めて読んだときは、「カレーの具を教えて」みたいな、たわいのないトピと、切実で深刻なトピとの落差に驚きました。読み始めたら、時間を忘れるくらいはまりました。自分が納得できないトピには、反論のレスがたくさん投稿されるでしょう。それなのにトピ主さんは、さらに「(たた)かれたいの?」という展開を続ける……。リアルで叱られたらへこみますよね。トピックス越しに叱られるから、怒りを受け止めて、それさえも楽しめる。意地悪と意見を言うのは違う。「発言小町」は厳しい意見が多いけど、心からの言葉なので納得できる。ちゃんと叱られている気がするんです。

 最近の叱られトピで気になったのは、「友だちの海外赴任先に長期滞在して、お礼をしていない私はずうずうしいでしょうか?」という内容。私は一時期、家族とアメリカのサンフランシスコに住んでいたんで、すごく感情移入しました。日本からのお客様が多くて、2週間も滞在されると、「もう、来ないでほしいな」と思うくらい疲れるんです。あのころに「発言小町」を知っていたら、きっと私もトピを立てましたね。

 ――TORICOさんがトピを立てるとしたら「叱られトピ」ですか?

 TORICO)そうですね。すっごいおどろおどろしいタイトルを付けて、中を読んだら「えっ?そんなこと?」というギャップのある「駄トピ」を立てます。それで「ふざけるな!」って、みんなに叱られたいです(笑)。怒るとか泣くとか笑うとか、そういう生の感情を共有したい。

健全だからトラブルが起こる

 ――ファッションブログをしているそうですが、ツイッターやフェイスブックなど、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)は利用されていますか? ほかのSNSにはない「発言小町」の特長はありますか?

 TORICO)私のイメージですが、ツイッターは情報がどんどん流れて未来へ未来へとつながっていく、フェイスブックは出身地とか卒業した学校とかリアルな人間関係に縛られていて、過去につながっている。私は過去より未来につながっていたいので、ツイッターはやっていますが、フェイスブックはやっていないんです。そういう意味では「発言小町」は“いま”を切り取っている。まさに現在につながっている感じがします。

 「発言小町」って毎日、何千もの投稿があると聞きました。こんなにたくさんの人を引きつける魅力って何だろうって考えたんです。日常の退屈さやうっぷんを晴らす人もいると思いますが、いちばんは“共感”と“共有”じゃないかな。例えばテレビのワイドショーで悩み相談とかあるでしょう? あれはコメンテーターのご意見を聞くだけですが、「発言小町」は不特定多数の人の様々な意見が聞ける。トピを立てると「あるある」「そうだよね」とレスが返ってくる。同じ悩みを持った人に「自分はこうだよ」とアドバイスできる。シンパシーを感じ合うのって快感。そこには精神安定剤的な側面もあると思います。

 「発言小町」に投稿する方には、優しさがある。そして、とても健全。お嫁さんとお(しゅうとめ)さんとのもめ事も、ご近所さんとのトラブルも、健全だから起こる。不健康な人は殻に閉じこもって、他人にアドバイスしたり、叱ったりしませんから。

プロフィル

TORICO(トリコ)映画監督。クリエイター集団「血ユリ団」団長。2004年、短編映画「ミガカガミ」で監督・脚本・主演をつとめ、注目を集める。同作品はカナダ・モントリールを始めとする7か国11か所の映画祭に招待上映され、国内映画祭で準グランプリ受賞。06年、初劇場映画「イケルシニバナ」を公開。13年、アートユニット「明和電機」が立ち上げた初のファッションブランド「Meewee Dinkee(ミーウィーディンキー)」にトータルディレクター&デザイナーとして参加。ファッションブロガーとしても活動中。著書に「不思議ノ国ノ」(書苑新社)。