私の「発言」

(2)「つながり」が苦しい…精神科医・香山リカさん

 ――香山さんは東日本大震災のあと、「絆ストレス―『つながりたい』という病」(青春出版社)を出されました。発言小町でも、悩みの多くは人とのつながりが原因です。それでも、つながらずにはいられません。

 香山リカさん)そうですね。人は誰かとつながっていないと不安です。でもつながりすぎるとそこに面倒なことがあって、つらくなる。震災後は、「絆が大切なのに、自分の生活には絆がない」と悩まされ、診察室を訪ねてくる人が多くいました。絆によって苦しめられることを「絆ストレス」と名付けました。


女性同士であるがゆえの「溝」も

 ――女性は特につながりを求める意識が強そうですが。

 香山)「やっぱり女は女同士だよね」と盛り上がりますし、女だから分かり合えるという部分もあるでしょう。しかし「女同士でも」、というか「女同士だからこそ」というか、埋められない深い溝もあるんですよね。結婚しているか・いないか、働いているか・いないか、子どもがいるか・いないか、などなど――。女性は比較的、経済状況や家庭環境の似通った人同士でつながりを築きやすく、「少しでも浮かないように」ともがき出すとだんだん息苦しくなっていくというパターンが多いように思います。ただ、環境が変われば、つながりを断ち切ってしまうこともでき、自由さもありますね。男性は出身地や大学、勤め先などの「属性」がつながりのきっかけになることも多いようで、それはずっとついて回りますから。

 ――そんな実社会のつながりだけでなく、フェイスブックなどソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)でのつながりもストレスになっていますね。

 香山)本当。ネットやSNSは、仕事でも、義務でもないのにね。SNSに書き込まれるキラキラした生活をうらやんで苦しくなる人もいますが、書かれていることが本当かどうか、それがその人のすべてか、確かめるすべはありません。話半分くらいに受け取っておいたほうがいいし、「これって私のこと?」と思うようなことが書かれていても、基本的には「私のことじゃない」と思っておくのが賢明だと考えています。SNSでは、みんなすごく気遣いしていますよね。もはやネットは「気楽なつながり」ではなくなっていると思います。

ほどよい「絆」のあり方とは…

 ――著書「絆ストレス」では、孤独死の問題にも触れていらっしゃいました。いざというときのためには日頃からのつながりが必要で、でも、そのつながりはストレスの原因にもなり……悩ましいですね。

 香山)戦後、私たちは、地縁や血縁などを「しがらみ」ととらえ、“濃いつきあい”がなくても生きられるライフスタイルを築き上げてきました。近所づきあいも必要最低限。さらに個人情報保護が叫ばれるようになり、ますます、どこに誰が住んでいるのか、どんな家族構成なのか、分かりづらくなってきています。極論すれば、「煩わしくても、いざというときのために濃いつながりを大切にしておく」か、「日頃は都市型のライフスタイルを楽しみ、いざというときには潔く孤独死なども受け入れる」のかということなのかもしれません。

 私は、いろいろなつながりのバリエーションがあることが大切かなと考えていて、そのすべてを等しく大切にすることはできなくても、いざというときには機能する「都合のいい絆」がいいと思います。「都合のいい」って言葉が、なかなか絆とフィットしないんですけどね。

プロフィル

 香山リカ(かやま・りか)1960年北海道生まれ。精神科医。立教大学現代心理学部教授。豊富な臨床経験を生かし、新聞・テレビなどのメディアで、現代社会やサブカルチャーも含めた文化批評を行うなど幅広く発信している。プロレスファンとしても知られる。主な著書に「悲しいときは、思いっきり泣けばいい」(七つ森書館)、「しがみつかない生き方―『ふつうの幸せ』を手に入れる10のルール」(幻冬舎)など。