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奨学金頼みで老後破産?…我が家の学費計画

ファイナンシャルプランナー 菅原直子

 住宅費用、老後費用と並ぶ三大費用の一つ、教育費用。子ども1人につき、最低でも1000万円はかかるといわれる。特に費用がかかるのが大学進学だ。「教育費が足りない!」という状況に陥らないためには、どんな準備をしておくべきなのか。教育費に詳しいファイナンシャルプランナーの菅原直子さんに解説してもらった。

進学資金不足、二つの理由

  • 文部科学省の「学校基本調査」などを基に菅原さん作成
    文部科学省の「学校基本調査」などを基に菅原さん作成

 高校生の大学進学率(短期大学含む)が50%を超えて10年近くになる。専修学校専門課程(専門学校)等も含めると、平成27年3月に高校を卒業した生徒の進学率は76.32%。4人に3人は進学した計算だ。都道府県別にみると、複数の府県で80%を超えており、東京都は84.9%。「みんな」が進学していると言っても過言ではないだろう。

 ところが、「みんな」が進学する中、進学資金を十分に用意できず苦しんでいる親子も少なくない。

 実は、大学4年間分の学校納付金を入学前にすべて準備できている家庭には、あまりお目にかからない。「初年度納付金」と呼ばれる入学金と大学1年次の学校納金だけでも家庭で用意できればまだいい方だ。入学手続き時に必要なのは、初年度納付金の6~7割程度。入学試験に合格したにもかかわらず、この額の用意ができず子の進学を断念せざるを得ないケースもある。

 大学の費用は、1年間当たりの費用が高校までとは段違いに高額である。さらに、そもそも月謝制ではないため、毎月の収入から支払うのはまず不可能。あらかじめ()めておかなくてはならないということが、高校までとは異なる特徴だ。

 次の表は、私立大学の初年度納付金を分野別にまとめたものだ。全平均は約143万円である。

 進学資金を家庭で用意できない理由は、主に二つが考えられる。

 (1)大学納付金の額が高く、保護者の収入からの支払いが難しい

 (2)一定額を貯めてきたが、必要額を知らなかったため結果的に不足

 (1)は、その特徴を知らず、入学直前に慌てるというものだ。バブル崩壊後の「失われた20年」を経て、保護者の収入は伸び悩んでいる。にもかかわらず高校までの教育費はそれなりにかかる。目の前の塾代などで支出がかさんで、大学に向けての貯蓄ができなかったということもある。もちろん、塾代どころか日々の生活費でいっぱいいっぱいという家庭も存在する。

 (2)は子どもが生まれて、教育費のためにと学資保険に加入したり、積み立てを始めたりする人たちに起きる。とりあえず支払える金額での契約にとどまり、目標額を把握しないまま18歳を迎えてしまうのだ。とりあえず学資保険に加入している、積立貯蓄をしているという安心感から、根拠なく「ナントカナル」と思っていたりする。自身が大学生だった頃のイメージで、学費を安く見積もってしまっていることもある。また、(1)同様に、収入に余裕がなく学資保険だけで精いっぱいということもある。

 いずれの理由にせよ、かかる費用が手元にないということに変わりはない。

 実際に筆者が相談を受けた事例を以下に紹介する。

妻がパート、学資保険加入も学費足りず…Aさんの場合

 Aさんは、3人の子(長女・長男・次男)を持つ50代の会社員。妻はもともと専業主婦だったが、長女が中学に上がったころ、その塾代を補うためにパートタイムで働くようになった。

 Aさん自身は、家庭の経済的な事情で進学がかなわなかったこともあり、子どもたちが大学進学を希望するのなら、ぜひ応援したいと考え、子どもたちには、それぞれ18歳で100万円を受け取ることのできる学資保険に加入していた。

 100万円では大学4年間の費用には足りないだろうとは思っていたが、具体的な金額を調べたことはなかった。長女が高校3年生になり、オープンキャンパスでもらってきた資料に目を通して驚いた。長女は看護師の資格取得を目指しており、希望する大学の4年間の学校納付金は約700万円となっていたのだ。

 Aさんは十数年前に自宅を購入し、預貯金のほとんどを吐き出していた。貯蓄はしてきたが、住宅ローンの支払いに追われて、やっと300万円が貯まったところである。この300万円を学資保険に足しても、4年間の学費には足りない。下には、まだ2人の子が大学進学を控えている。これから学費をどのように捻出していけばいいのか困って、高校が開催した進学資金セミナーと相談会に参加したのだった。

2016年03月01日 09時21分 Copyright © The Yomiuri Shimbun