自由に描くのに最適…クレヨン
「小学3年の授業でアルミのやかんを描きました。何色も重ね塗りして金属の輝きを表現したら先生に褒められて」。横浜市金沢区、森田吉世江さん(74)の思い出だ。それから絵が面白くなり、今も趣味で描いている。
サクラアートミュージアム(大阪市)によると、「クレヨン」はフランス語で「鉛筆」を指すが、18世紀まではチョークや木炭など棒状の画材の総称だった。顔料とろうを混ぜ合わせた今のクレヨンは、19世紀末から20世紀初めまでの間にヨーロッパで生まれたとみられる。
日本でクレヨンが普及したのは大正時代の半ば以降。当時、小学校では、主に色鉛筆や水彩絵の具が使われていたが、芯が硬く色づきが悪い、色が薄く色彩が乏しいなどの欠点があった。
そうした中、フランス留学を終えて帰国した洋画家の山本
これと相まって、紙への色づきがよく、芯を削る必要もないクレヨンは自由画に適した画材として広まり、文部省(当時)も小学校低学年向けに推奨。販売していた大阪の福井商店(現ライオン事務器)のカタログには「全国小学校に採用せられつつあり」の宣伝文句が躍った。
ただ、当時のクレヨンは硬く、広い範囲を塗ったり、重ね塗りして違う色を出したりするのに向いていなかった。すると、大阪の桜クレィヨン商会(現サクラクレパス)が、軟らかく、塗りやすい「クレパス」(一般名称・オイルパステル)を開発、25年に発売した。
成城学園(東京)はいち早く小学校でクレヨンを取り入れ、今はクレパスを使用。美術担当の秋山朋也教諭(38)は「発色が良く、きれいに描ける。子どもたちに自由に表現する楽しさを感じてほしい」と話している。(伊藤史彦)
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