学校 モノ・風景

みんなで非日常の体験…遠足

読売新聞教育部 朝来野祥子

 「朝、祖母が特大のおにぎりを二つ持たせてくれました」

 長野県伊那市の池田佐意子さん(65)が小学校の遠足の思い出をメールで寄せてくれた。大きさがソフトボールほどもあり、驚いた担任の先生から自分のと交換してほしいと頼まれたという。「具に入っていたキュウリのみそ漬けは絶品だった」

 教育史に詳しい金沢星稜大学の井上好人教授によると、明治初期、初詣や天皇の巡幸の出迎えが学校行事として行われたことが、遠足の始まりと考えられるという。その後、明治20年代の初めに博覧会ブームが起きると、学校で見学に行く動きが広まり、教育的な意味合いが強まった。井上教授は「鉄道網の整備が進み、子どもを新しい物に触れさせようと、遠足として行く学校が急速に増えた」と説明する。

 1958年告示の小学校の学習指導要領で、遠足は学校行事の一つに位置づけられ、現行の指導要領でも「見聞を広め、自然や文化に親しむとともに、集団生活のあり方などについて望ましい体験を積めるような活動を行うこと」と記されている。

 また、鍛錬が目的の「遠足」もある。山梨県立甲府第一高校が大正時代から毎年秋に行っている「強行遠足」は、中断期間を挟んで、昨年、90回を迎えた。

 かつてはゴールを定めず、制限時間内に歩けるだけ歩いた時期もあったが、ここ数年は、男子は24時間で甲府市の同校から長野県小諸市までの約104キロを、女子は9時間で山梨県北杜市から長野県小海町までの約42キロの踏破を目指す。堀井昭校長(58)は「体力の限界に挑むことによって、日常では得られない貴重な体験ができる」と話す。

 一方、埼玉県日高市は今春、「遠足の聖地」を宣言した。秋にはマンジュシャゲが咲く「巾着田」など豊かな自然環境をアピールし、観光客や移住者の誘致につなげるのが狙いだ。

 市によると、2016年度は幼稚園や小学校など約140団体計1万3400人が遠足で訪れた。担当者は「秋にはコスモスも咲く。広場で山を眺めながら食べる弁当もおいしいはず」。思い出に残る楽しい遠足になりそうだ。(朝来野祥子)

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