内定に「大学の推薦状」要求

 内定と引き換えに、企業が学生に大学の推薦状の提出を求める動きが目立っている。推薦状を出せば、学生が内定を辞退しにくくなるとの思惑があるようだ。文部科学省は企業が内定を出す際に推薦状を求めるのは好ましくないとし、推薦状の発行をやめた大学もある。(堀内佑二)

売り手市場 辞退防ぐ意図に批判

  • 明治大も推薦状を1通に限って発行している。20日の就職ガイダンスでは、企業が内定を出す時期が早まっていることなどが説明された(東京都千代田区で)
    明治大も推薦状を1通に限って発行している。20日の就職ガイダンスでは、企業が内定を出す時期が早まっていることなどが説明された(東京都千代田区で)

 大学発行の推薦状は本来、理工系など学校推薦枠の就職に必要な書類として、企業に提出されている。

 だが、複数の企業の選考を同時に受けている学生に、企業が内定(内々定)を出すとき、あとで辞退しないよう推薦状の提出を求める事例が増えているという。学生優位の「売り手市場」が続く中、人材確保を急ぐ企業などが提出を求めており、「後付け推薦」などと呼ばれる。

 こうした動きに、早稲田大は昨年、「学生の自由な企業選択の妨げになる」として、推薦枠がある企業の求人を除き、推薦状の発行を停止した。

 早大の佐々木ひとみ・キャリアセンター長は、「推薦状が、学生を心理的に身動きできなくさせる『足かせ』になっている」と批判する。

 全国の国公私立大などでつくる「就職問題懇談会」は昨年、「選考の最終段階や内々定後」になって推薦状の提出を企業が求めないよう要請することを申し合わせた。

 同懇談会の昨年夏の調査では、就職活動の終了を強要するハラスメント行為について相談を受けた大学の半数が、「内々定後、大学の推薦状を速やかに提出するよう求められた」という相談を受けていた。

 文科省も、同懇談会の申し合わせ内容と同じ見解だ。

「自由な選択の妨げ」発行控える大学も

 一方、国学院大は選考解禁後に学生の意思を確認し1人1通だけ推薦状を発行する。「推薦状を出さず学生が不利益を被ることは避けたい」と木村都・キャリアサポート課長。麗沢れいたく大も同様で、石光俊明・キャリアセンター課長は「安易に提出しないよう推薦状の重みを学生に説明した上で発行している」と説明する。

 推薦状には、学長やキャリアセンター長名で大学として発行するもの以外に、ゼミの指導教授らに依頼して個人名で出してもらう推薦状もあり、これを使う学生もいるという。

 就職情報会社・マイナビの吉本隆男編集長は、「学生も入社の意思が決まっていないなら、推薦状の発行を大学に頼むべきでない。自分に合う企業かよく研究し納得できる選択をすることが大事だ」としている。


推薦状の提出を求められたら

 ・入社の意思が固まっているなら、名義や宛先を確認した上で、大学のキャリアセンターに依頼する

 ・気持ちが決まっていない場合は、正直に企業に伝え、いつまで待ってもらえるのか相談する

 ・大学が推薦状を発行しない場合、キャリアセンターに相談した上で企業に説明する。大学によってはホームページや書面で企業に理由を伝えている

 ・指導教官らの名前の推薦状発行は、個々の判断に任せられていることが多いが、安易に依頼しない

 (大学や就職情報会社の話を基に作成)