最善を尽くすベンツの奥深さを体感 マイバッハ(Vol.529)

  • 今回試乗をしたのは、メルセデス・マイバッハS560・4MATICという四輪駆動車だ
    今回試乗をしたのは、メルセデス・マイバッハS560・4MATICという四輪駆動車だ

 マイバッハは、メルセデス・ベンツSクラスの一車種である。かつて、2002年に独自のマイバッハという車種がダイムラー・クライスラー社(現ダイムラー社)から発売されたが、2013年にいったん姿を消している。

 現行のメルセデス・ベンツSクラスの一車種とはいえ、メルセデス・マイバッハは、前輪と後輪の間隔であるホイールベースがSクラスのロングボディー車より20センチ長い専用車体が与えられている。その分は、すべて後席の快適性に充てられている。これにより、車体全長は5.5メートル近くになり、横から見ると、いかにも長いと感じる姿だ。

  • 真横から見たマイバッハは、いかにも後ろ側が長いと感じる。
    真横から見たマイバッハは、いかにも後ろ側が長いと感じる。
  • 荷室容量は、通常のメルセデス・ベンツSクラスとほぼ変わらず十分な広さがある
    荷室容量は、通常のメルセデス・ベンツSクラスとほぼ変わらず十分な広さがある

 たとえば一般的な5ナンバーの小型車の場合、車体全長は4.5メートルほどだ。それより1メートルも長い車体は一見、運転がさぞむずかしいと思わせる。だが、不思議にも、マイバッハは、車体全長が5.1メートルのメルセデス・ベンツSクラスと変わらぬ感覚で運転できるし、Sクラスそのものも、小型車を操作するときとほぼ変わらぬ感覚で運転できるのである。

 それはなぜだろうと思うが、答えは私にもわからない。しかし、明らかに、他のクルマとは違う運転のしやすさを、メルセデス・ベンツは備えており、それが車体の長いマイバッハにおいても変わらないのである。

 マイバッハを運転して最初に感じるのは、ゆったりとした乗り心地であり、それは、Sクラスのロングボディーを上回る。運転席から後席を振り返ると、同乗者の姿がやや小さく感じられるほど遠い。改めて、これほど車体の長いクルマを自分は運転しているのかと実感させられる。

  • 今回試乗をしたのは、排気量4000ccのV型8気筒ターボエンジンだが、最上級車種には排気量6000ccのV型12気筒エンジンが搭載される
    今回試乗をしたのは、排気量4000ccのV型8気筒ターボエンジンだが、最上級車種には排気量6000ccのV型12気筒エンジンが搭載される

 車両重量が2.3トンを超えるため、走り出しのところでは、排気量4000ccのV型8気筒ターボエンジンでも、若干おっとりとした出足に感じる。だが、469馬力もあるターボエンジンはすぐに力を増して、車両の重さを忘れるほどの軽快さでクルマの流れにのせていく。

 狭い市街地を走行する際には、2メートル近い車体幅の左右が気になるのは事実だ。だが、ボンネットフード先端にメルセデス・ベンツのマスコットであるスリーポインテッドスターが取り付けられているので、このマスコットを目印に、運転席の前方部および左右の車幅を見極め、対向車とすれ違ったり、細い路地に入って行ったりすれば、車体を(こす)ってしまう心配はない。

  • メルセデス・ベンツのスリーポインテッドスターのマスコットがボンネット先端にあり、ラジエーターグリルにマイバッハのバッジが付く
    メルセデス・ベンツのスリーポインテッドスターのマスコットがボンネット先端にあり、ラジエーターグリルにマイバッハのバッジが付く

 近年、マスコットをボンネットフード上に取り付けない高級車が増えているが、マスコットにはそうした運転するうえでの効用もある。もちろん、万一の事故に際しては、マイバッハのマスコットは容易に倒れ、人を傷つけない配慮がなされている。

 高速道路に入ると、マイバッハのゆったりとした乗り心地が一変し、しっかりとした手ごたえを伝えてくる。速度無制限区間のあるドイツのアウトバーンを安定して走る盤石さを感じさせた。なおかつ、高速道路で、ややエンジン回転を上げて走る場面になると、リズミカルに気分よく運転することができる。

 長い車体によって、後席の快適性を最優先したマイバッハではあるが、単に運転手付きで後席の客を優先するというだけでなく、これを運転する者にも喜びを与えるクルマに仕立てられているのである。

  • 後席優先のマイバッハとはいえ、運転も楽しめる優れた操縦安定性と加速性能を備える
    後席優先のマイバッハとはいえ、運転も楽しめる優れた操縦安定性と加速性能を備える
  • メルセデス・ベンツSクラスのロングボディーより20センチ後席のゆとりは増え、後席には足をのせるオットマンが備わる。後席の背もたれはリクライニング機能も付く
    メルセデス・ベンツSクラスのロングボディーより20センチ後席のゆとりは増え、後席には足をのせるオットマンが備わる。後席の背もたれはリクライニング機能も付く

 長さを意識させない、普通車なみの運転感覚、そして、乗員だけでなく運転する者にも喜びをもたらす走行性能、どれをとっても不足のない最高のつくりに感動を覚えるほどだ。

 最善か無か。常にその視点で開発を行うメルセデス・ベンツの奥深さ、(すご)さを体感させるマイバッハであった。