国内市場を意識したSUV マツダ「CX‐8」(Vol.535)

  • 大柄に見えるCX‐8だが、車体全幅は2列シートのCX‐5と同じ寸法
    大柄に見えるCX‐8だが、車体全幅は2列シートのCX‐5と同じ寸法

 マツダに、新しいSUV(スポーツ用多目的車)「CX‐8」が加わった。車体の幅は、同社の2列シート5人乗りのSUV「CX‐5」と比べ、全長が35.5センチ伸びて4.9メートルとなり、3列シートの6~7人乗りを実現した。

 マツダは従来、ミニバンのビアンテ、MPV、プレマシーという3列シートの車種があったが、2012年からはじまった新世代商品群にミニバンの設定はなく、3列シートの車種を選べない状態が続いていた。そこで、ミニバンではないものの、3列シートのSUVを登場させたのだ。

  • レジャー用品を引っ張るためのフックも別注文で装備することができる
    レジャー用品を引っ張るためのフックも別注文で装備することができる

 CX‐8は、最小回転半径もCX‐5に比べ30センチ大きい5.8メートルとなったが、マツダでは「国内で使う上で支障のない大きさに抑えた」と言っており、今回の試乗でも、とくに不便を感じることはなかった。

 エンジンは、排気量2200ccのディーゼルターボのみで、CX‐5で選べたガソリンエンジンの設定はない。同じ排気量のディーゼルターボエンジンをCX‐5にも搭載しているが、200キロ重くなったCX‐8の重量負担を感じさせない走行性能を実現するため、最高出力は15馬力向上させた190馬力となっている。

  • CX‐8のエンジンはディーゼルターボのみで、給油は軽油に限られる
    CX‐8のエンジンはディーゼルターボのみで、給油は軽油に限られる
  • 車両重量の増加に対応して動力性能を高めたディーゼルターボエンジン
    車両重量の増加に対応して動力性能を高めたディーゼルターボエンジン

 CX‐8のディーゼルターボエンジンは、動力性能だけでなく快適性も改善されており、車外ではカラカラというディーゼル特有のエンジン騒音が耳に届くが、車内では走行中もその騒音がほとんど聞こえない。また、信号待ちなどで停車した際にはアイドリングストップが働くため、当然エンジン騒音は出ない。

 最後列の3列目の座席にも座って試乗をしたが、走行中も1列目の運転者と普段と変わらぬ声で会話をすることができ、静かさにこだわったCX‐8の快適さを体感できた。

  • マツダがすべての車種で取り組む、運転姿勢を正しくとれる運転席
    マツダがすべての車種で取り組む、運転姿勢を正しくとれる運転席

 一方、装着されているタイヤが走行性能優先のスポーツタイプであり、これによるタイヤ騒音が気になった。タイヤは、溝のデザインやゴムの質により、グリップ力が高く、カーブでも踏ん張りが利くタイプや燃費の良いタイプ、静粛性に優れるタイプなどに分かれる。スポーツタイプのタイヤは、カーブでの踏ん張りや加減速でのグリップを高める目的で、タイヤ表面に大きめのブロック形状のデザインを採用し、それによってタイヤ騒音が大きくなりやすい。対して快適性を重視するタイヤは、騒音を低減するため接地面のブロック一つひとつを小さくすることで、騒音の発生を抑えている。

  • 2列目の座席は、床と座面との差がしっかり確保され、座面で腿(もも)を支え、姿勢を落ち着かせることができる
    2列目の座席は、床と座面との差がしっかり確保され、座面で腿(もも)を支え、姿勢を落ち着かせることができる

 快適性重視とはいっても、近年はゴムの改良などにより走行性能は上がっており、静粛性にこだわったCX‐8ならば快適性重視のタイヤ銘柄を選択するのが最適と考えられる。しかも、CX‐8は国内市場を優先して開発したクルマであり、国内の速度規制からすれば、極端な高速走行に対応するタイヤへの要求はないはずだ。そうした総合的な商品性の企画に、一考を要するところはある。

 エンジン性能についても、CX‐5に比べ200キロ重くなった車両重量を感じさせない加速を実現したとはいうものの、日常的な走行での、例えば時速40キロから50キロへ、あるいは70キロから80キロといった速度調整をしたい時、思ったように加速が伸びない。もちろん、アクセルペダルを深く踏み込めば速度は上がるが、そうしたわずかな速度調節で意識的にアクセルペダルを強く踏み込むような運転の繰り返しは疲れを呼ぶ。

 3列シートの車種を追加する構想は、顧客の要求にこたえるものである。3列目の座席はやや体育座りのように膝を抱える格好にはなるものの、空間は十分に確保されている。また、荷室床下には追加の小物入れもあり、3列シートすべてに人が乗っても荷物を収納できる配慮はなされている。

  • 床が高く、やや体育座りになる3列目の座席だが、頭上や足元などに余裕はある
    床が高く、やや体育座りになる3列目の座席だが、頭上や足元などに余裕はある
  • 荷室床下に別の収納スペースが設けられ、3列目の座席を使用した際もできるだけ多くの荷物が載せられるよう配慮されている
    荷室床下に別の収納スペースが設けられ、3列目の座席を使用した際もできるだけ多くの荷物が載せられるよう配慮されている

 だが、騒音や市街地での実用的な速度調節など、日常的な使い勝手の作り込みはこれからという印象であった。