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新横綱・稀勢の里~春場所で逆転優勝

 大相撲春場所は26日、大阪府立体育会館(エディオンアリーナ大阪)で千秋楽を迎え、負傷を押して強行出場した新横綱の稀勢の里(30)(本名・萩原寛、茨城県牛久市出身、田子ノ浦部屋)が1敗で単独首位の大関照ノ富士に本割と優勝決定戦で連勝し、逆転優勝を飾りました。稀勢の里のこれまでの歩みを振り返りました。

【2017年 春場所】

日馬富士戦で負傷

  • 日馬富士に寄り倒しで敗れ、負傷した稀勢の里(3月24日)
    日馬富士に寄り倒しで敗れ、負傷した稀勢の里(3月24日)

 寄り倒されて土俵下に落とされた稀勢の里がしばらく立ち上がれなかった。完敗にざわめく館内が、新横綱の姿を見てさらに騒然とした。左胸付近を押さえ、苦悶(くもん)の表情を浮かべる稀勢の里。支度部屋で応急処置を受けた後は、病院に運ばれた。連覇に向け、順調に白星を重ねていた新横綱が、絶体絶命のピンチに追い込まれた。 今場所初の横綱同士の一番。だが、弟弟子の照ノ富士の援護に燃える日馬富士の気迫満点の攻めになすすべがなかった。鋭い出足と低く激しい当たりに起こされ、もろ差しを許すと、一気に土俵下まで運ばれた。(2017/3/25)

逆転優勝…負傷押して出場

 本割で照ノ富士を突き落として13勝2敗で並ぶと、決定戦は小手投げで大関を退け、初場所に続いて2場所連続で賜杯を抱いた。稀勢の里は初黒星を喫した13日目の日馬富士戦で左肩から腕付近を痛め、テーピングをして出場していた。新横綱の賜杯獲得は、稀勢の里の先代師匠だった隆の里(元鳴戸親方)ら史上8人目で、1995年初場所の貴乃花以来22年ぶり。(2017/3/26)

男泣き…「見えない力を感じた」

  • 国歌斉唱の時、感極まり涙を拭う稀勢の里(3月26日)
    国歌斉唱の時、感極まり涙を拭う稀勢の里(3月26日)

 君が代を聞きながら、男泣きした。あふれる涙を赤いタオルでぬぐった。テーピングで固めた左腕の付け根に、痛々しい黒いあざがあった。「最後まで力を出して良かった。何か見えない力を感じた場所だった」。たとえ力士生命を縮める強行出場でも、二度と後悔はしたくなかった。
 「息子は完全主義者だから」。父親の萩原貞彦さん(71)は、そう語る。2014年初場所、右足親指の靱帯じんたいを痛めて千秋楽を休んだ。15歳で入門してから、たった1度の休場に今も悔いを残している。「力士である以上、土俵に上がれるなら、上がるのが僕ら。それしかない」
 横綱としての使命感も、稀勢の里を勝負に駆り立てた。迎えた千秋楽、満員のファンの声援に後押しされ、まさかの2連勝。負傷については「想像にお任せします」と明かさなかった。(2017/3/27)

  • 優勝パレードでファンに手を振る稀勢の里(右、左は高安)
    優勝パレードでファンに手を振る稀勢の里(右、左は高安)

稀勢の里の歩み~「稀」な「勢」いではなかった大器晩成力士の快挙

 2004年九州場所で新入幕を果たしてから、所要73場所で横綱に昇進した稀勢の里。年6場所制となった1958年以降では1番の遅咲きでした。春場所では、いずれもモンゴル出身の白鵬、日馬富士、鶴竜とともに、2000年春場所以来となる4横綱が番付に並びました。稀勢の里の歩みを振り返ります。

【2004年 九州場所】

新入幕~しこ名に込められた「稀なる勢い」

  • 貴乃花に次ぐ最年少記録で新十両に昇進し、喜びの表情
    貴乃花に次ぐ最年少記録で新十両に昇進し、喜びの表情

 萩原改め、稀勢の里。18歳3か月での入幕は、貴乃花に次ぐ史上2番目(昭和以降)の若さだった。しこ名は、中国の故事「稀(まれ)なる勢い」から取った。師匠の鳴戸親方(元横綱隆の里)が以前から胸の奥で温めてきたものだ。 愚直に前に出る相撲が身上。決して派手さはないその取り口同様、本人の性格も誠実そのものだ。会見でも、威勢のいい決意表明が聞かれるかと思いきや、「新入幕はうれしいけど、いつもと同じ気持ちでいく」と控えめな発言が続いた。(2004/11/2)

  • 2005年の秋場所で関脇琴欧州(左)ととともに敢闘賞を受賞
    2005年の秋場所で関脇琴欧州(左)ととともに敢闘賞を受賞

【2010年 九州場所】

白鵬の63連勝を止める~ひたすらの攻め

  • 寄り切りで白鵬の連勝をとめる
    寄り切りで白鵬の連勝をとめる

 とにかく休まなかった。立ち合い、一度は押し込まれた稀勢の里だが、これをこらえて突き返し、後はひたすら攻め続けた。勝ち負けの意識すら消え、勝ち名乗りを受けて「あれ、あれって感じだった」と驚きを隠さなかった。 過去2場所、白鵬に善戦はしたが、2008年の九州場所以来、11連敗。この日朝、「力を全部出すだけ」と、連勝阻止へ静かに燃えていた。(2010/11/16)

【2013年 夏場所】

全勝対決、白鵬に完敗~土俵に「大の字」

  • 2013年の夏場所14日目に、全勝対決で横綱・白鵬(左)にすくい投げで敗れる
    2013年の夏場所14日目に、全勝対決で横綱・白鵬(左)にすくい投げで敗れる

 全勝対決は満員札止めの館内の期待を裏切らない力の入った一番だった。だが最後は、経験、技術、実力のすべてで白鵬が横綱の力を見せつけた。勝負が決まった瞬間、稀勢の里は土俵に大の字で倒れ、勝った白鵬は「ヨシッ」と声を上げた。 「どっかに焦りがあったんですかね。負けは負けです」。悔しさで紅潮した表情に高くそびえる壁を痛感した様子がうかがえた。(2013/05/26)

【2014年 春場所】

期待と重圧~平常心失い、けがに苦しむ

  • 朝げいこに励む(2014年2月27日撮影)
    朝げいこに励む(2014年2月27日撮影)

 期待と重圧を一身に背負った初場所は、場所前から「妙に動きが硬かった」と平常心を失っていた。前半から負けが込んで綱取りムードがしぼんだうえ、千秋楽は生涯初の休場で負け越した。2002年3月の初土俵から皆勤で、現役関取最多記録だった連続出場も953回で止まった。 試練の土俵に立つ27歳は「また一からやり直す」と巻き返しに燃えている。(2014/03/06)

【2016年 九州場所】

3横綱撃破~泰然と、自然体で

  • 2016年の九州場所で白鵬(右)を破り、大きな勝利を手に(2016年11月22日、福岡国際センターで)
    2016年の九州場所で白鵬(右)を破り、大きな勝利を手に(2016年11月22日、福岡国際センターで)

 綱取りに挑んだ先場所までは、取組を待つ土俵下で硬い笑顔を見せるなど、逆に意識しすぎているように見えた。それがここに来て実に泰然としている。 この日の日馬富士戦で、3日連続の横綱撃破。それでも稀勢の里は一切、表情を崩すことはなかった。(2016/11/25)

【2017年 初場所】

待望の初優勝~19年ぶりの日本出身横綱誕生へ

  • 優勝を決めた稀勢の里。後列中央は父の萩原貞彦さん。隣は母の裕美子さん(2017年1月22日、両国国技館で)=永井哲朗撮影
    優勝を決めた稀勢の里。後列中央は父の萩原貞彦さん。隣は母の裕美子さん(2017年1月22日、両国国技館で)=永井哲朗撮影

 14日目に初優勝を決めていた稀勢の里は、横綱白鵬を破って14勝1敗とし、場所後の横綱昇進を確実にした。日本出身の新横綱は、1998年夏場所後に昇進した3代目若乃花以来19年ぶり。日本出身の横綱は、2003年初場所中に貴乃花が引退し、14年間途絶えている。 初の賜杯を手にした大関は、土俵下のインタビューで「(優勝まで)随分長くなりましたけど、色々な人の支えがあってここまで来られた」と感極まった。(2017/1/22)

「横綱の名に恥じぬよう、精進いたします」

  • 横綱昇進の伝達を受け、口上を述べる稀勢の里(中央)(25日午前9時37分、東京都千代田区の帝国ホテルで)=川崎公太撮影
    横綱昇進の伝達を受け、口上を述べる稀勢の里(中央)(25日午前9時37分、東京都千代田区の帝国ホテルで)=川崎公太撮影

 相撲協会から春日野理事(元関脇栃乃和歌)と審判委員の高田川親方(元関脇安芸乃島)が使者に立ち、東京都内のホテルで稀勢の里と師匠の田子ノ浦親方(元幕内隆の鶴)に満場一致での横綱推挙を伝えると、稀勢の里は「謹んでお受けいたします。横綱の名に恥じぬよう、精進いたします」と口上を述べた。(2017/1/25)

明治神宮で初の土俵入り

 八角理事長(元横綱北勝海)から横綱推挙状と真っ白な横綱を受け取った後、太刀持ちに高安、露払いに松鳳山を従えて登場。初代若乃花が使った鬼の図柄の化粧まわしを締め、攻めと守りを表現した「雲竜型」の土俵入りを披露した。新横綱が力強い四股を踏むたび、「よいしょ」「日本一」と声援が飛んだ。約1万8000人が詰めかけ、土俵入りが行われた拝殿前は人であふれた。(2017/1/28)

メディア局ストリーム班撮影、明治神宮で

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  • 千秋楽に白鵬(右)をすくい投げで破る(2017年1月22日、両国国技館で)=永井哲朗撮影
    千秋楽に白鵬(右)をすくい投げで破る(2017年1月22日、両国国技館で)=永井哲朗撮影
  • 横綱昇進伝達式を終え、タイを掲げて笑顔を見せる稀勢の里。両脇は田子ノ浦親方夫妻(25日午前9時42分、東京都千代田区の帝国ホテルで)=川崎公太撮影
    横綱昇進伝達式を終え、タイを掲げて笑顔を見せる稀勢の里。両脇は田子ノ浦親方夫妻(25日午前9時42分、東京都千代田区の帝国ホテルで)=川崎公太撮影