老後破産

退職金が半分に!?…「老後破産」の現実(4)

ファイナンシャルプランナー 村井英一さん

 定年後の余裕資金の投資先といえば、不動産? 株? いや、リスクが比較的低いとされる投資信託(※)がメインだという。
 投資信託は、専門家に株や債券等の投資・運用を任せる商品。この手堅いであろう投資信託を、資産運用の鉄則「分散投資」に従って行えば大丈夫…だろうか?
 老後破産を考えるシリーズ、畠中雅子さんによる 「『貯金2700万円』でも危ない…『老後破産』の現実」「3500万円が底をつく『死角』…『老後破産』の現実 (2)」、村井英一さんによる 「3000万円も不足? インフレの恐怖…『老後破産』の現実(3)」 で老後設計の甘さについて警鐘を鳴らしてもらった。となれば、手元資金を増やそうと考えるであろう、そんな方に向け、今回は資金運用の落とし穴と対策について解説してもらおう。「分散投資さえすれば」の時代ではもはやないのだ。

 ※参考:「そもそも投資信託とは?」(一般社団法人投資信託協会)

 投資信託(ファンド)とは「投資家から集めたお金をひとつの大きな資金としてまとめ、運用の専門家が株式や債券などに投資・運用する商品」。(※元本保証の金融商品ではない)

退職金が600万円も減ってしまった!

 60歳代のAさんが私の事務所に駆け込んできたのは、5年前の2010年のことだ。

 「退職金が3割も減ってしまった。どうすればいいでしょう?」

 聞けば、退職金で金融機関に言われるがまま、投資信託を購入したところ、損失が600万円にも広がってしまったという。

 「資産運用は初めてだったので、銀行に勧められたものを選んだのですが…」

 購入している金融商品は特別にハイリスク・ハイリターンというものではなかった。

 「分散投資が大切だというので、気をつけたつもりだったのですが…」

 購入した投資信託は10本以上。日本国内の株式で運用するものから、海外株式、海外債券と、いろいろなものに分かれていたが、いずれもが大きく値下がりしてしまい、損失となっている。

 Aさんはやみくもに投資をしたわけではなかった。老後に貯蓄が不足しないようにと、退職金での資産運用を計画し、雑誌や書籍で勉強もしていた。銀行の窓口でプロに相談し、慎重に選んだつもりだ。金融機関も決して無理な運用をさせたわけではなく、「ミドルリスク」と言われていたバランス型を中心に、分散投資を勧めていた。

 しかし、タイミングが悪かった。Aさんが退職したのは2007年のことで、退職金が出てすぐに投資信託を購入した。良かったのは最初の半年ほど。その後は株式相場が下がりだした。保有資産はみるみるうちに減りだし、私のところに来た2010年には600万円もの損失になっていた。この時期、このようなケースは多く、退職金が半分に減ってしまう人もいた

 Aさんとはその後、定期的に連絡をとっており、幸い、2013年から回復に向かい、ほとんどが購入価格を回復した。Aさんは、買値に戻ったものから売却し、すべてを銀行預金にした。

 「もう、こんな思いはまっぴらです。あんな恐ろしい思いをするぐらいなら、増えなくても構いません

退職金が600万減った! Aさんのケース
2007年 退職
退職金2000万円で投資信託を購入
2008年 「リーマン・ショック」
株価下落、為替は円高ドル安に
2010年 ここまでに600万円の損失
2013年 徐々に回復、購入価格回復