老後破産

「40代で子宝」夫婦の誤算…「老後破産」の現実(5)

ファイナンシャルプランナー 村井英一さん

 世の晩婚化傾向などに伴い、30歳代後半や40歳代になってから子どもを授かる夫婦が増えてきている。40歳代といえば、正社員であれば会社で管理職となり、収入も安定してくるころ。ならば、遅く生まれた我が子の教育費は惜しむまいと思う人も少なくないだろう。しかし、そこに「老後破産」のワナが…。
 老後破産を考えるシリーズ、畠中雅子さんによる「 『貯金2700万円』でも危ない…『老後破産』の現実 」「 3500万円が底をつく『死角』…『老後破産』の現実(2) 」、村井英一さんによる「 3000万円も不足? インフレの恐怖…『老後破産』の現実(3) 」「 退職金が半分に!?…『老後破産』の現実(4) 」に続き、遅くに子どもが生まれた夫婦が直面する“危機”について解説してもらおう。

余裕があると思っていたのに……

 Aさんが家計診断に訪れたのは、昨年のことだった。念のために、将来の状況を把握しておきたいとの意向だった。Aさんは、上場企業の管理職。45歳で年収は750万円あり、生活には余裕がある。それだけに、子どもにはしっかりとした教育を与えたいと考えている。これからの家族の生活や子どもの教育の方針などを伺い、Aさんの将来の家計状況をシミュレーションすると、以下のグラフのようになった。それを見るなり、Aさんは愕然(がくぜん)とした。

 「もっと余裕があると思っていたんですけど……」

 家計のシミュレーションでは、Aさんが65歳になり完全に退職した段階で、ほとんど貯蓄がない状態になる。そして老後には、ギリギリの生活が続くことが予想された。Aさんは、現在すでに1000万円の貯蓄があり、毎年、貯蓄もできている。それだけに老後破産もありうる状況になることが、にわかには考えられなかったのだ。

<Aさんの家族状況>
Aさん:45歳、会社員、年収750万円(手取り600万円)
    定年は60歳。65歳までは再雇用制度あり。
妻:42歳、専業主婦
長男:5歳、中学校から私立に進学させたいと希望している。
長女:2歳、小学校から私立に進学させたいと希望している。



 実は、Aさんは子どもを授かったのが遅く、上の子は40歳、下の子は43歳の時だった。すると、順調に行っても、子どもが大学を卒業して社会人になるのは、Aさんが60歳代の時だ(以下、この段落中の年齢はAさん)。上の子が大学に入学するのは59歳時点、卒業するのは定年後の63歳である。下の子の場合は大学に入学するのが62歳で定年退職後、卒業するのは定年再雇用も終了した後のことになる。

 それまでの貯蓄があるので、定年になったからといって、直ちに子どもの学費が払えなくなるわけではない。しかし、この年齢まで教育費による支出が続くと、老後の資金が不足するようになる。