老後破産

月32万円の年金で不足? 迫られたホーム転居…「老後破産」の現実(9)

ファイナンシャルプランナー 柳澤美由紀
 高齢の親が認知症になった時、「余裕があるはず」と子が安易に介護施設を決めれば老後資金が大幅に不足する危険もある。きちんと計算し、現実的な選択をしたい。「 『貯金2700万円』でも危ない… 」「 3500万円が底をつく『死角』… 」「 3000万円も不足? インフレの恐怖… 」「 退職金が半分に!?… 」「 『40代で子宝』夫婦の誤算… 」「 独立したら85歳で1600万円借金?!… 」「 子どもがニート? ひきこもり?… 」「 退職金でも住宅ローンが返せない?!… 」と続いてきた「『老後破産』の現実」シリーズ。今回は柳澤美由紀さんが解説する。

介護役の父が倒れ、認知症の母が老人ホームに緊急入所

  • (写真はイメージです)
    (写真はイメージです)

 千葉県在住の会社員男性A氏(49)が私のもとを訪れたのは、昨冬であった(年齢はいずれも相談当時)。

「先生、両親の暮らしが何年もつかシミュレーションしてもらえませんか?」

 両親はA氏の自宅から2駅離れた地域で、2人暮らしをしていた。2年前から母B子さん(76)の認知症による徘徊(はいかい)が始まる。その都度、父C氏(78)がB子さんを捜し歩き、見つける、を繰り返していた。C氏の方の心労がピークに達して倒れてしまい、緊急入院。B子さんの介護者不在となり、A氏がケアマネジャーに介護施設を相談したところ、「要介護度2なので特別養護老人ホームには入れない」と言われた。そこで、認知症専門の有料老人ホームに絞って探したところ、比較的に近場で月額利用料28万円、入所一時金無しの施設が見つかり、入所することになった。

 「両親はずっと共働きでしたので、年金や退職金は人並み以上にもらっています。だから、今回の施設でもやっていけると思っていたのですが、退院した父に話をすると、それでは暮らせない、と言い出しまして。本当にそうなのか、専門家に試算してもらおうと思い、相談に来ました」とA氏。

 A氏からの依頼を受けて筆者は、退院したC氏が待つ実家に向かった。C氏は、妻B子さんが認知症になってから、一人で家事と家計管理を担っていた。2人の生活費は月25万円以上かかり、孫が遊びに来たりすると、臨時出費などで月30万円を超えることもあったという。

 「世間一般の水準よりも使っていたのかもしれないが、年金収入が手取りで月額32万円あったので気にならなかった」とC氏。しかし、妻B子さんの施設利用料(月28万円)は確実に貯蓄を取り崩して払うことになる。5年くらいで資金がショートしてしまうことに不安を感じていた。そんなに払わなければいけないなら、自分が最後まで自宅で介護すると譲らない。

今のままでは10年で資金ショート

 そこで生活費の内訳を確認した。C氏は料理が作れないため、B子さんが認知症となった後は2人暮らしで外食か配食サービスを利用していた。B子さんが施設に入所したことで、食費が1人分と介護保険の在宅介護サービス費などがかからなくなったので、その費用を差し引くと、家計収支は図表1の結果になった。