日本人宇宙飛行士 3人の決意

世界の宇宙開発のキープレーヤーになる…日の丸飛行士座談会(下)

  • ISS内の燃焼実験装置の前に立つ大西さん(JAXA/NASA提供)
    ISS内の燃焼実験装置の前に立つ大西さん(JAXA/NASA提供)

 油井(ゆい)亀美也(きみや)さん(47)、大西(おおにし)卓哉(たくや)さん(41)、金井(かない)宣茂(のりしげ)さん(40)の宇宙航空研究開発機構(JAXA=ジャクサ)の日本人宇宙飛行士3人による座談会詳報の最終回では、未来の宇宙開発への決意を語ります。

無重力での仕事のコツ…日の丸飛行士座談会(上)

日本の宇宙開発の力を見せたい…日の丸飛行士座談会(中)

油井さんメッセージ「楽しいと思うことは才能の一部」

Q:若い人へのメッセージを色紙に書いてもらいました。メッセージの意味を教えてください。

油井:私が書いたのは「楽しいと思うことは才能の一部である」です。私がこれを実感したのは宇宙飛行士の訓練で、大変ですけど好きだし、楽しいと思っているので続けられて、最終的に(宇宙飛行という)成果を出すことができました。

 ロシア語の勉強が最初嫌いで、なかなか成果が出なかったんですけど、その時に「やらなきゃいけないことだし、楽しまなきゃいけないな」と思って、その方法を考えたんですね。楽しくなり始めたら続けることができて、成果を残すことができた。

 さらに言うと、楽しいと思うことは自分で作ることができるんです。つまり、才能は自分で作ることができる、ということを伝えたくて書きました。

金井さん「夢に向かってがんばって」

金井:私は「夢に向かってがんばってください」です。私はまだ宇宙ミッションも終わっていない半人前の宇宙飛行士ですが、私の夢のゴールは宇宙飛行ではなく、「日本の宇宙開発の中で役立ちたい」「誰もが海外旅行に行くような感覚で宇宙旅行が楽しめるような社会を実現したい」というのが私の夢で、私自身も夢に向かってがんばっています。

 若い皆さんもご自身の夢に向かって目標に向かって、一生懸命がんばってください、ということで書かせていただきました。

大西さん「一人はみんなのために、みんなは一人のために」

大西:私は「One For All , All For One」です。ラグビーでよく使われる言葉ですが、この精神が僕はすごく好きです。

 宇宙飛行士は目立ちますけど、大きなチームの一員なんですよね。地上では管制官の方々、研究者の方々、私たちの(宇宙)滞在を支援してくれる多くの方々がいて、どの一人が欠けてもミッションは達成できないと僕は思っているんです。

 ですから「一人はみんなのために、みんなは一人のためにいるんだよ」という精神は、とても自分の仕事に合っているなと思います。

金井さんの採血訓練「俺の腕もまだまだ落ちていないなあ」

  • 大西さんがISSから撮影したアフリカの風紋(JAXA/NASA提供)
    大西さんがISSから撮影したアフリカの風紋(JAXA/NASA提供)

Q:宇宙飛行士になってからの成功や失敗の体験を教えてください。

大西:得意分野と苦手分野って、やっぱりありますよね。

油井:ありますね。

大西:金井さんが言ってましたように、ロボットアームの操縦って、パイロットにとっては有利ですよ。

油井:まったく同じですからね! 考えずにできちゃいますね。

大西:体が覚えているので。ああいうのは僕は得意ですけど、逆に採血はものすごく苦手でしたよ。

金井:ははは。

大西:国際宇宙ステーション(ISS)では(医学研究のため)頻繁に採血するんですけれど、自分でやるのはあきらめましたもの。毎回大騒ぎだった。

油井:採血、私は結構、得意で好きでした。やっぱり好きになるのは大事かな、と。興味を持ってやれば楽しくなるし、楽しいと思うと何回もチャレンジできるので。地上では結構失敗しましたよ。

Q:(医師の)金井さんは(採血は)お手の物?

金井:私も10年近く医療行為をやっていなかったので。訓練で久しぶりに点滴の針を渡された時に一発でうまくいって、あれは素晴らしい成功体験ですね(笑)。「俺の腕もまだまだ落ちていないなあ」と。

 ちょっとお二人にお聞きしたいんですが、(ISS滞在中に)17メートルある巨大アームを使って補給船の実機をキャプチャー(=キャッチ)した時の達成感は、どうでしたか?

アーム操作…油井さん「100%の成功は求めない」

油井:あれは、そこまで難しくないですね。訓練やっているから。

大西:難しくはないですよ。

油井:でもプレッシャーはかかりますよ。(補給船に)すごく貴重な物資がたくさんあって、そこは失敗できないなというプレッシャーはある。

大西:ロボットアームって実機のほうが安定していると思いませんでした?

油井:思いました、思いました。

大西:シミュレーターだと急に動かしたりすると再現されますけど、実機は多少のことでは振動しないので。安定度はあるんですけど、「これが本番だ」という緊張だけですよね。

油井:あとはカメラが見ずらかったりとか。

大西:ただ(自分の)出来はあまりよくなかったですよ。普通の人は見ていて分からないレベルですけど、自分の中ではどちらかというと納得いかなかった。

金井:ああ、そういう感じ。

油井:私もまったくそうですね。

金井:あまり成功体験という感じではないですね。

油井:私も自分でずれたのは分かりましたけど、100%(の成功)を求めにいかなかったですね。(自分のやるべきことは)そこじゃないなと。安全に行くべきだということで、マージンをとりました。あそこで、さらに(アーム操作を)自分で直して難しくする必要はないなと。その辺は瞬時の判断でしたけど。