• 女子団体追い抜き、日本「銀」以上確定…冬季最多11個目メダル
冬のオリンピックこぼれ話

世界一幸運な男【2002年 ソルトレークシティー】

 1924年(大正13年)の第1回大会以来、今回の韓国・ 平昌 ( ピョンチャン ) で23回目を迎える冬季オリンピック。雪と氷の祭典の長い歴史には、笑いや涙を誘うエピソードもたくさん詰まっています。読売新聞の過去の記事を振り返り、異色の選手、思わぬ結末、式典の舞台裏など、観戦の楽しみが増す「こぼれ話」を拾い上げ紹介します。

 「失礼ながら、最も笑いを取った金メダリスト」

 読売新聞のインタビュー記事で、こう紹介された選手がいます。2002年にソルトレークシティー(アメリカ)で開かれた第19回大会で、ショートトラック男子1000メートルを制したオーストラリアのスピードスケート選手、スティーブン・ブラッドバリーさん(44)です。

 ショートトラックは、コース分けのない1周約110メートルのトラックを、選手たちが同時に滑り、上位2人が次のレースに進出します。小回りのため、激しいライン取りが見どころの一つで、接触、転倒も珍しくありません。

ライバルが次々転倒 まさかの金

  • ショートトラック男子1000メートル決勝のゴール直前で他の4選手全員が次々と転倒、思わぬ金メダルに両手をあげて喜ぶスティーブン・ブラッドバリー選手(2002年2月16日、米ユタ州のソルトレーク・アイスセンターで)
    ショートトラック男子1000メートル決勝のゴール直前で他の4選手全員が次々と転倒、思わぬ金メダルに両手をあげて喜ぶスティーブン・ブラッドバリー選手(2002年2月16日、米ユタ州のソルトレーク・アイスセンターで)

 ソルトレーク五輪のショートトラック男子1000メートルは、まさに大荒れでした。ブラッドバリー選手はそこで、笑ってしまうような「まさかの金」をつかみます。

 ブラッドバリー選手の準々決勝。「アッと言う間に後方に置かれ、4位。すべてが終わったと思った瞬間、カナダの選手が進路妨害で失格するなどして2位に繰り上がり」

 準決勝は「『集団の後ろにいれば、何かが起きるかも』と苦肉の“待機作戦”。それがはまる。長野で金の韓国選手がまず脱落し、ゴール直前で先行していた2人が転倒、(中略)1位が転がりこんだ」

 そして決勝。「(本命の米国選手ら)他の4選手全員がゴール直前に転倒したのだ。はるか後ろにいたブラッドバリーは事故に巻き込まれず、わきをするりと抜け」、一人悠々とゴールしました。オーストラリアのみならず、南半球で初の冬季オリンピックの金メダルでした。

 「強運3連発 まさかの金」の見出しと、転倒したライバルたちを尻目に、両手をあげ、笑顔でゴールインするブラッドバリー選手の写真が読売新聞の五輪ニュースのトップを飾りました。

111針の大けがも 苦闘の末に

  • 金メダルを手に悠々自適の生活を語るスティーブン・ブラッドバリーさん(2003年11月5日、豪州ブリスベーンで)
    金メダルを手に悠々自適の生活を語るスティーブン・ブラッドバリーさん(2003年11月5日、豪州ブリスベーンで)

 翌年の2003年11月、すでに現役を引退したブラッドバリーさんのインタビュー記事「“世界一幸運な男”は今」が読売新聞に載りました。
 地元オーストラリアでは偉業をたたえて記念切手が発行され、パレードも行われたそうで、「今はトップの数人を除けば、ラグビー選手よりも知名度がある」と金メダルの恩恵を満喫。
 そして、あの日の幸運については、「確かに最善を尽くしても優勝の可能性はほとんどなかった。2人転べば銅メダルと思って後方で待機したら、4人も転倒した」「帰りにラスベガスに寄ろうか迷ったけど、たぶん運は使い果たしていたと思う」と振り返りました。

 ソルトレークでは本命選手ではなかったものの、1994年リレハンメル大会の男子5000メートルリレーで銅メダル、冬季オリンピックに3大会連続出場と実績は十分で、オーストラリア国内では第一人者だったブラッドバリーさん。以前にレース中の衝突事故で足を111針も縫う大けがや、練習中に脊椎を損傷する事故も経験していました。
 それを乗り越えての栄冠とあって、勝利した直後、「金メダルは1分半のこのレースで与えられたとは思っていない。10年間の苦労に対して天が与えてくれたと思う」としみじみ語ったといいます。

 「棚からぼたモチ」呼ばわりは失礼で、長い苦闘の末の幸運だったことは間違いありません。(データベース部 武藤泰之)

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2017年12月26日06:00 Copyright © The Yomiuri Shimbun

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