スピードスケート

【スケート解説】女子マススタート・外ノ池亜希の目…日本が有終の美 冷静な勝負勘で金メダルつかんだ高木菜那

 持久力と瞬時のスプリント力、そして技術と駆け引きがかみ合って初めて勝利できるマススタート。高木菜那選手の会心の試合運びだった。

  • スピードスケート女子マススタートで金メダルを獲得し、笑顔で手を上げる高木菜那選手(24日、韓国・江陵で)=武藤要撮影
    スピードスケート女子マススタートで金メダルを獲得し、笑顔で手を上げる高木菜那選手(24日、韓国・江陵で)=武藤要撮影

 集団の中でじわじわ我慢しながら、体格の大きなオランダ選手の後ろについた。風よけに利用し、1メートル55の小さな体をすっぽりと隠す。スタミナを温存して迎えた最後の1周、最終カーブの出口で空いたインをついて先頭に出た。

 終盤に足が疲れてくると、小さいカーブをきれいに曲がりきるのは難しいものだ。特にマススタートは、リンクの内側の練習用レーンの、最も半径の小さなカーブを通る。遠心力が強くバランスを崩しやすいから膨らんでしまうし、無理せず外側から勝負に行く選択肢もある。

 この種目を数多く経験している高木選手は、最後の場面で内側が空くことを十分に予想していたのだろう。狙いがあたり、最短距離を突いて最後のスプリント勝負に持ち込めた。勝ちたいという強い気持ち、執念とともに、冷静な勝負勘も忘れなかった。

 佐藤綾乃選手の敗退により、決勝の日本勢は1人だけになった。オランダは2人が残ったが、日本にさほど不利には働かなかったのではないか。「チーム戦略」のためにあれこれ考えすぎず、自分の滑りに集中できる1人の方が楽なこともある。

 1人の場合、2人の場合、日本選手はW杯で様々な状況に応じた対処法を試しており、高木選手にとっても織り込み済みの展開だったと思う。

 日本のスピードスケート陣は、女子が金3つを含む6つのメダルと大躍進した。男子も価値ある入賞があり、若い選手も出てきて4年後が楽しみになった。

 スケート人口が年々減り、底辺が薄くなる中での危機感から、メダルなしに終わった前回のソチ五輪以降はナショナルチームでの一貫した強化態勢が本格的になった。オランダ人コーチを招いて、これまでにはない高いレベルで具体的かつ科学的なトレーニング方法も取り入れ、質とメンタルを高めていった。

 私の時代はナショナルでの強化という概念はなく、所属する実業団チームでの練習がほとんど。現役終盤のころは短距離選手がほかにおらずに1人で練習していて「これではいけない」と感じたものだ。今大会の日本の成果を見て、トップ選手が集まって練習すればレベルは上がっていくのだなということも実感せずにはいられない。

解説者プロフィル

外ノ池 亜希(とのいけ・あき) 1979年3月3日、長野県生まれ。18歳で出場した98年長野オリンピックから、ソルトレークシティー、トリノと五輪3大会に出場。ソルトレークシティー大会では女子1000メートルで当時の日本記録となる1分14秒6で7位入賞。

2018年2月25日12:00 Copyright © The Yomiuri Shimbun

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