スノーボード

メダル候補・成田緑夢、丁寧に語るスポーツの魅力

 左足のけがでパラの選手になってから、僕はスポーツの良さに目覚めた――。 平昌 ( ピョンチャン ) パラリンピック(2018年3月9~18日)でのメダル獲得が期待されるスノーボード男子の成田 緑夢 ( ぐりむ ) 選手(23)が25日、東京・赤坂の日本財団ビル内で記者会見した。4年に1度の大舞台やパラ競技への思いを、柔らかな物腰で雄弁に語った。(読売新聞メディア局編集部・込山駿)

今季2勝にも向上心 「ターン上達したい」

  • パラ競技の魅力や感動を語る成田緑夢選手(2017年12月25日、東京・赤坂の日本財団ビルで)=込山駿撮影
    パラ競技の魅力や感動を語る成田緑夢選手(2017年12月25日、東京・赤坂の日本財団ビルで)=込山駿撮影

 成田選手は今季、11月14日にオランダで欧州杯を制覇。12月2日にはフィンランドでのワールドカップ(W杯)でも優勝した。2006年トリノ五輪でスノーボードのハーフパイプ競技に出場した成田童夢(どうむ)選手を兄に、今井メロ選手を姉に持つ生粋のスノーボーダーが、パラ競技で豊かな素養を存分に発揮している。

 「僕は直線が得意で、カーブが苦手。まだ平昌まで時間があるので、ターン上達を意識し、プレーの平均点を上げていきたい」と語った。好成績の背景には「障害のある左足に、スノーボード用ではなくスキー用の硬いブーツをはくようになってから、スピードと安定性が増した」ことがあるとも明かした。丁寧に言葉を選ぶ話しぶり。自由奔放な兄姉とは、ちょっと違ったイメージを与える。

 スノーボードには1歳から親しみ、トランポリンやフリースタイルスキーでも頭角を現すなど、順調なアスリート人生を歩んでいた。ところが、19歳だった2013年4月、自宅でトランポリンの練習中に大けがを負う。左足の切断こそ免れたものの、何度も手術を受け、膝から下にまひが残った。「もう競技としてのスポーツはやめよう」と落ち込んだ時期もあった。

 退院から約半年後、転機が訪れる。友人に誘われ、ロープに引かれたボードに乗って水上で技を繰り出すウェークボードをやってみて、スポーツの楽しさに改めて気付いた。ウェークボード大会に出場し、健常者たちを退けて優勝を飾るようになると、ある障害者から「緑夢くんが頑張るのを見て、またスポーツをやってみようかなという勇気をもらった。ありがとう」といった内容のメッセージが寄せられた。

 驚いた。「自分がスポーツをすることで、人にこういう影響を与えることができるのか」と。「これを、もっと大きな舞台でやれないか」と考え、パラリンピックを目指し始めた。スノーボードだけでなく、走り幅跳びなどの陸上競技で夏季パラリンピック出場も狙っている。向上心はとどまるところを知らず、「パラリンピックとオリンピックの両方に出たい」という将来の夢も抱く。

パラ転向後に知った感動

  • パラリンピックの新たなウェアをまとい、ガッツポーズする成田選手(前列右端)ら日本選手団の中心メンバーたち=2017年12月25日、東京・赤坂の日本財団ビル内で
    パラリンピックの新たなウェアをまとい、ガッツポーズする成田選手(前列右端)ら日本選手団の中心メンバーたち=2017年12月25日、東京・赤坂の日本財団ビル内で

 パラ競技の魅力は「選手一人一人に、障害があるからこそのストーリーがあるところ」だと思っている。パラ転向後、陸上競技の大会で周回遅れの選手がゴールした時、会場に大きな拍手が沸いた場面を経験した。「感動したし、スポーツ本来の意味を学んだ。『オリンピックで3位以内に入ることが一番素晴らしい』という気持ちでスポーツをしていた頃には気付けなかったこと」だと強調する。

 平昌パラリンピックでは、タイムの速さを競う「バンクドスラローム」と、対戦型の「スノーボードクロス」の両種目への出場が見込まれる。前者では「細かなテクニックの積み重ねがタイムの短縮につながるところ」を、後者では「スピード勝負のハラハラする感覚」を見せて、ファンを楽しませたいという。自身の思惑通りに滑れたら、おのずと表彰台に立てる実力者だ。

トップ選手たちが平昌への抱負

 成田選手が出席したのは、日本障害者スキー連盟が開いた「2017/18 キックオフ記者会見」。アルペンスキー、ノルディックスキー、スノーボードの有力選手8人が日本代表の新ウェアを着て集まり、平昌パラリンピックへの抱負や近況を語った。各選手の発言は以下の通り。(敬称略)

■アルペンスキー

森井 大輝「今季のW杯初戦は、最高順位が4位。(年間総合王者になった直近の2季と比べ)あまりいい成績を残せなかったが、用具を一新し、技術的な部分も充実している。最大の目標であるパラリンピックの表彰台の真ん中に立つことを目指し、しっかりと調整したい」

村岡 桃佳「トレーニングではすごく調子がよく、手応えを感じて臨んだシーズンなのに、レースになると体が硬くなって発揮できていない。そんな自分の弱い部分を改善して、3月の平昌ではいい成績を残したい」

■ノルディックスキー距離

新田 佳浩「シーズン前の練習は順調だったが、12月の国際大会では他国の選手が力を上げてきたのを感じた。(6大会連続のパラリンピックとなる)平昌大会に向けて、海外勢との差を埋めるよう、しっかり準備を進めたい」

阿部 友里香「今シーズンは、後半の粘りを意識してプレーしている。平昌まで、成果と課題を見つめ直し、突き詰めたい」 (バイアスロンにも出場予定)

岩本 啓吾「今季の目標は、クラシカル種目でみなさんに感動を与える滑りをすること」

高村 和人「仕事をしながら、やれる範囲でしっかりと練習を積んできた。周囲のみなさんへの感謝の気持ちをパワーに変えて、完走したい」(バイアスロンにも出場予定)

■スノーボード

小栗 大地「今季ここまでは、W杯での成績が(2~6位と)昨季より良く、いいスタートが切れた。義足の膝を曲げる動きもスムーズになってきた」

2017年12月26日16:20 Copyright © The Yomiuri Shimbun