なぜか小倉では抜群の強さ、愛され続ける余生

  • 小倉競馬場の厩舎で過ごすメイショウカイドウ
    小倉競馬場の厩舎で過ごすメイショウカイドウ

 なぜか小倉競馬場(北九州市小倉南区)を走ると、抜群の強さを誇った馬がいる。

 生涯成績43戦11勝のうち、小倉で8勝を挙げたメイショウカイドウ。2007年に現役を退いてからもファンに愛され、今も小倉の地で乗馬を練習する子どもたちを背中に乗せている。

 500キロを超える馬体が、雄らしい風格を漂わせる。小倉競馬場内の厩舎きゅうしゃ。カメラのレンズを向けると、首をすっと持ち上げた。

 「写真を撮られるのが分かっていて、ポーズを決めているんです。『うまく撮れよ』ってね」

 世話を担当する井上智之さん(33)は目を細め、体を優しくなでた。現役引退後、出走馬をパドックから馬場まで先導する「誘導馬」として約10年間働いた。その役目も果たし終え、今は約10頭いる乗馬用の馬に仲間入りしている。

 1999年、北海道の小さな牧場で生まれた。血統が重視される世界で、決して良血馬とは言えなかった。滋賀県の栗東トレーニングセンターを拠点に、02年に競走馬としてデビューしたが、勝てない日々が続いた。

 「性格にムラがあって、練習嫌い。トレーニングを始めようとしても、馬場の手前で頑として動かなかった。だけど小倉で走ると、なぜか強かった」

 元調教師でメイショウカイドウを現役時代に担当した競馬評論家、坂口正大さん(77)は振り返る。

 ようやく最初の勝ち星を挙げたのは10戦目。小倉競馬場でのレースだった。重勝の初勝利も、04年夏の「小倉記念」(G3)。翌年にはいずれもG3の「小倉大賞典」「北九州記念」「小倉記念」を制し、単年で「小倉三冠」を達成した初めての馬として話題になった。

 小倉競馬場の芝のコースは1周1615メートル。中央競馬では福島競馬場に次いで短い。直線に坂はなく、起伏が少ないのが特徴だ。

 メイショウカイドウは小倉を走る際、栗東から陸路でレース前日に移動していた。坂口さんは「前日入りのスケジュールが向いていたのかもしれないが、本当のところは馬自身に聞いてみないと分からない」と笑う。

 決まったレース場でばかり輝きを放つその馬は、人の心を引き付けた。

 「第二の人生も小倉で送らせてあげたい」

 現役引退の際、坂口さんは小倉競馬場の誘導馬になれるよう日本中央競馬会(JRA)にかけ合った。昨年8月には、誘導馬としては異例の引退式があり、多くのファンに囲まれた。5勝した重賞レースのすべてで鞍上あんじょうに乗った武豊騎手も駆けつけた。

 今年で19歳になった。人間で言えば70~80歳くらい。運が良ければ小倉競馬場の乗馬エリアで出会えるという。

 坂口さんはこう語る。

 「いつまでも競馬ファンに愛され続ける幸せ者。不思議な魅力を持った馬ですよ」(山根秀太)