花粉は食べ物や薬にも

国立科学博物館で企画展

  • 植物の姿と花粉の形を見比べてみるとおもしろい
    植物の姿と花粉の形を見比べてみるとおもしろい

 毎年あたたかくなると、私たちをなやませる花粉症かふんしょう

 今や国民病こくみんびょうともいわれるまでになりました。その原因げんいんとなっている“花粉”に焦点しょうてんをあてた企画展きかくてん「花粉と花粉症の科学」が国立科学博物館こくりつかがくはくぶつかん(東京都台東区)で20日まで開かれています。身近なようで、よく知らなかった、花粉の世界をのぞいてみました。

誕生から人間との関わりまで

 展示てんじスペースでは、花粉の誕生たんじょうから花粉症の対策たいさくまでを四つのゾーンで紹介しょうかいしています。最初さいしょは「植物にとっての花粉」を学びました。花粉を持つ植物が最初にあらわれたのはやく2億9000万年前のこと。それまでの植物は水中にいたので、受精じゅせいには水が必要ひつようでした。しかし、乾燥かんそうに強い花粉がうまれたことで、風にのってより遠くの自分と同じ種類しゅるい個体こたいに花粉をとどけられるようになりました。

 はじめは風で花粉をばしていましたが、やがてみつを作って動物をおびきせ、花粉を運んでもらうものが現れ、花も多様化していきます。「ツツジの花びらをよく見ると、斑点はんてんがついているのがわかりますよね?」と、種子しゅし植物にくわしい田中伸幸たなかのぶゆき博士はかせ観察かんさつのポイントを教えてくれました。「ネクターガイドといって、昆虫こんちゅうに蜜のありかを教えるためのものです。いかに花粉を運ばせるかという点で進化しんかしているのです」

 花粉症患者かんじゃにはやっかいものの花粉ですが、植物の繁殖以外はんしょくいがいにも、役に立つ側面そくめん紹介しょうかいされていました。一つは、丈夫じょうぶ分解ぶんかいされにくいため、地層ちそうの中にのこった花粉化石かせき分析ぶんせきすることで、どんな植物が生えていたのかを知ることができます。

 また、花粉は食べ物や薬にもなります。ハチミツには元々もともと花粉がふくまれていますし、花粉は健康食品けんこうしょくひんに使われることもあります。いなばの白ウサギの神話では、かわがされたウサギが、体に植物のガマの花粉をつけて回復かいふくする話が知られています。古くから、人間が花粉を利用してきたことをしめすエピソードだと考えられているそうです。

 企画展では、花粉症を引き起こすとされる花粉のうち、やく20種の花粉の電子顕微鏡でんしけんびきょう写真と植物標本ひょうほんとをあわせて展示しています。花粉には、丸かったりあなが開いていたりと、様々さまざま形状けいじょうのものがありました。

 「スギ花粉による花粉症は、戦後せんご木材もくざいとして利用りようするために植えられたスギが花粉を大量たいりょうに飛ばしているのが主な原因」と田中さん。人間の行為こういが自らを苦しめることになってしまったということに、複雑ふくざつな気持ちをおぼえました。

日進月歩の花粉症対策

 展示の最後には、最新の花粉症対策も紹介されていました。花粉がほとんどないスギの普及ふきゅうや、スギの雄花おばなだけをらすカビを使って花粉の量をらす研究けんきゅうが進んでいるそうです。

 治療ちりょうや、症状しょうじょうやわらげるためのケアも重要じゅうようです。したの下にスギ花粉症のアレルゲン(アレルギーの原因となる物質ぶっしつ)を投与とうよするだけの簡単かんたん治療法ちりょうほうや、発酵食品はっこうしょくひんに多くふくまれる乳酸菌にゅうさんきんが花粉症の症状しょうじょうを和らげることも分かりました。遺伝子いでんし組み技術ぎじゅつによりアレルゲンをんだ、食べるだけで対策ができるお米の研究開発も進んでいます。日進月歩にっしんげっぽの花粉症対策にこれからも期待きたいしたいと思いました。

 (高2・林里穂はやしりほ、中3・木下純一きのしたじゅんいち西沢にしざわ桃佳ももか、中2・蟹田光かにたひかる記者、写真=三浦邦彦みうらくにひこ

2017年03月13日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun