「孤立」救うには…(1)孤立社会―日本の現状

つながり取り戻そう

 忙しい日常の中でふと足を止めて、まわりを見る。みなさんのそばには誰か頼れる人はいるだろうか?

 親やきょうだい、親友、学校の先生……。いろんな顔が浮かぶに違いない。

 だが、日本社会全体に目を向けてみると、どうだろう。高齢者のみの世帯の半数以上が介護または支援が必要な人を抱え、社会に参加できない「ひきこもり」は若い世代を中心に推計54万人。これ以外にも、自ら命を絶つ自殺者の割合は先進国最悪レベルであり、虐待(ぎゃくたい)を受ける子供も数多くいる。多くの人が、誰にもSOSを発信できずに苦しんでいるのだ。

 こうした問題は、人口減が進む未来の日本社会ではより深刻になる恐れがある。10代にとっても、近い将来、自分の身に降りかかってくるはずだ。

 読売中高生新聞ではこの度、社会から孤立し、苦しむ人を救うアイデアを募る「中高生未来創造コンテスト」を企画した。10代ならではの自由な発想で、人と人、人と地域とのつながりを取り戻すためのアイデアを送ってほしい。

 身のまわりにきっといるであろう孤立した人々に何ができるのかを、ともに考えよう。

「支え合い」希薄化

 日本では今、社会から孤立し、苦しむ人たちの存在が社会問題化している。家族のあり方の変容や急速に進む少子高齢化、地域社会の崩壊(ほうかい)などで、かつて存在していた「支え合い」や「助け合い」が失われつつあることがその背景にある。

高齢男性の「孤立」深刻

 孤立に悩む人々が増えている要因の一つが家族のあり方の変化だ。

 右図を見てほしい。日本の世帯構造はかつて、祖父母、父母、子どもで構成される3世代家族が約4割を占めていた。こうしたアニメ「サザエさん」のような3世代の同居世帯では、子育てを祖父母が手伝ったり、祖父母の介護を父母がサポートしたりすることもできた。

急速な核家族増

 ところが、高度経済成長期の1960年代に入ると、若者たちが仕事を求めて、東京などの都市部に流入。「夫婦」または「親と子ども」で構成される核家族化が急速に進み、世代を超えた支え合いが難しくなった。70年代初め頃には「育児ノイローゼ(いわゆる育児不安)」が注目を集めるようになった。

 さらに近年、増加傾向にあるのは独り暮らしによる単独世帯だ。高齢者世帯で夫婦のいずれかが亡くなり、独りになるケースが増えていることが影響している。

 特に深刻化しているのが、男性高齢者の社会的な孤立だ。国立社会保障・人口問題研究所の調査では、独り暮らしの65歳以上男性の16%超が電話も含めて「2週間に1回以下しか誰かと話さない」と答えた。

親の介護 負担大

 家族同士の支え合いについても、今後はますます失われていくとみられる。

 最大の原因は少子化だ。夫婦1組が産む子どもの平均数とみなされる「完結出生児数」というデータがある。これは、結婚してから15~19年が経過した夫婦の平均出生児数を指す。かつては4を超えていたが、2015年段階では1.94人にまで落ち込んだ。子供が多くいた時代は分担できていた親の介護の負担も当然、大きくなる。

ひきこもり 相談なく長期化

 社会とのつながりを絶つ人も少なくない。

 近年、社会問題になっているのが、自宅からほとんど出ない「ひきこもり」だ。

 国が2015年、15~39歳を対象に行った調査では、ひきこもりは全国に約54万人いると推計された。きっかけは、学校や職場への不適応、就職活動の失敗、人間関係がうまくいかないことなど多岐(たき)にわたる。NPO法人「KHJ全国ひきこもり家族会連合会」によると、ひきこもりがいる家庭の中には、まわりに相談せず、支援も受けられないケースが多く、ひきこもりの長期化や高齢化につながっている。

高い「自殺死亡率」

 自ら命を絶つ自殺も深刻だ。昨年、日本では自殺者数は2万人を超え、15~39歳の死因のトップは自殺だった。人口10万人あたりの自殺者数を指す「自殺死亡率」でも、日本が主要先進国7か国の中で最も高い。

「誰でも直面する可能性」 中央大・山田昌弘教授

 社会からの孤立が問題になっている日本の現状を、どう(とら)えればいいのか? 家族や人間関係の専門家である中央大学の山田昌弘教授(家族社会学)に聞いた。

 社会から孤立する人たちのことを聞いて、「なぜまわりに相談しないの?」と思う人がいるかもしれません。しかし、日本ではみなさんの親世代が子どもの頃から、身近に相談できる家族や親族がどんどん減ってきていますし、地域のつながりも希薄化しています。

 加えて、日本人は体面を気にする傾向が強く、悩んでいたり、苦しんでいたりすることを言うのが恥ずかしいと思う人が少なくない。まわりに迷惑をかけたくない、(みじ)めだと思われたくないとの思いから、孤立を深めていくのです。

 さらに問題を深刻化させているのが「格差」です。例えば、地方と都市の人口格差。若者が流出し続けている地方では、お年寄りだけの世帯がどんどん増えている。逆に東京などの都会では、裕福な家庭とそうでない家庭の経済格差が生まれている。それぞれが抱える問題の中身は違いますが、共通しているのは、心から頼れる相手がいないことです。

 孤立は日本人であれば、誰でも直面する可能性がある問題です。高齢化が進むこれからの時代はもっと深刻になる恐れもある。中高生のみなさんにはぜひ自分事として考えてほしいと思います。

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