資本は地元愛(4)

岡山県立倉敷 鷲羽 ( わしゅう ) 高 ビジネス研究部

こんな話です

 倉敷鷲羽高校ビジネス研究部の僕、晴人(はると)ら2年生部員3人は、宇垣(うがき)先生との新体制で、地元を活性化させるビジネスプラン作りをスタートさせた。人口減に悩む地元・児島地区に観光客を呼び込むプロジェクトだ。

▽過去の連載

資本は地元愛(1)(2)(3)

観光客の笑顔思い、見えた答え。

 4月、2年生3人の僕らビジネス研究部は新たなパートナーを加え、新年度の活動をスタートさせた。

 語学や数字に強いスーパー新入生でも入ってきた?って思った人、不正解。残念ながら、うちの部の今年の新入部員は今のところ、ゼロ……だ。

 僕らの新たなパートナーとは、昨年度までは副顧問だった宇垣先生。前の顧問・福岡先生が転勤したため、顧問に就任した。

 ビジネスには新陳代謝(しんちんたいしゃ)が必要だけど、宇垣先生という新キャラが加わったことで、僕らのアイデアも広がりつつある。連載初回で紹介した「空き家民泊プロジェクト」もその一つだ。

突破口

 「これ、児島でできない?」

 僕らがネットサーフ中に、民家などを活用した宿泊施設「民泊」の存在を知ったのは今春のこと。地元の倉敷市児島地区は瀬戸大橋や瀬戸内の海の幸など観光資源が多い一方、宿泊で訪れる観光客は少ない。僕は直感的に「何かできる」と感じた。

 ただ、ビジネスプラン立案の最大の難所は、直感を具体的な計画に仕上げるところだ。民泊をどう活用できるのか。僕らはすぐ壁にぶち当たった。

 そんな時、突破口を与えてくれたのが宇垣先生だ。

 「まぁ、とりあえず話を聞きにいくか。観光は商工会議所、漁業は漁協だ」

お試し

 聞き取りでわかったことは、児島では、人口減が続き、空き家が増加している、ということ。大切な海の幸を採る漁師の数も減っているという。

 う~ん、何となく形が見えてきた気がするけど……。

 「よ~し、次は出前授業を頼むぞ」と宇垣先生。「わからないことは、とにかく聞く」が宇垣流。全国コンテスト「高校生ビジネスプラン・グランプリ」を主催する日本政策金融公庫の職員を呼び、プロの視点でアドバイスをもらうという。

 出前授業は5月の連休明けに実現した。僕はそこで、宿泊客を増やすために空き家を民泊として活用する案を披露(ひろう)したんだけど、心の底で抱いていたもっと大きな夢をぶつけてみた。

 「最終的には、児島を気に入った人にここで暮らしてほしいと思っています」

 公庫の職員は一瞬、目を丸くした後、こうアドバイスしてくれた。「島根では、移住者を増やす政策が成功しているよ。調べれば、ヒントがあるかもしれない。あと、いきなり移住はハードルが高いから、まずは1週間滞在するお試しプランから考えてみたらどうだろう」

 視界がパッと開けた。

 その後、僕らは児島への移住者を増やすプランを考え始めた、と言いたいとこだけど、実際はそうでもない。「思い立ったが吉日」が宇垣流。児島の活性化に関わる様々な活動を次々と提案してくれていて、僕らは“ビジネスプラン千本ノック”のような日々を送っている。

 つい2週間前も、締め切りまであと5日という観光プランコンテストへの応募を持ちかけられ、大あわてで倉敷市の観光ツアープランを作ったりした。

 でも、最近ちょっと気付いたことがある。1年前の僕だったら、こんなにも地元のことを考えただろうか? 児島を訪れる人の笑顔を想像しただろうか?

 ビジネスって何なのか。僕なりの答えが少しずつ見えてきた気がする。

(高校生の登場人物はすべて仮名です。完) 文・吉田拓矢 写真・守屋由子