俺の噺を聴け(1)

浦和高(埼玉県) 落語研究部

銀杏 ( いちょう ) 」に魂。話芸を磨く。

 エー、どうも。このたびはお暑い中、部活の惑星にお越しいただき、ありがとうございます。これから1か月、話芸の道に身を投じた私ども浦高オチケンについてお話をさせていただきます。しばしの間、どうぞお付き合いくださいまし。


オチのある話

 初回ということで、今回は知ってるようで知らない伝統芸能「落語」について、部長の私、銀杏亭(いちょうてい)師弦(しげん)がお話しさせていただきます。

 落語とはもともと〈落とし話〉――現代風に言えば、「オチのある話」ということになりましょうか――を漢語風に言ったものでありまして、大衆芸能として花開いたのは江戸時代のことでございます。

 その特徴は何と言っても、(はなし)()が身ぶりと手ぶりで話を進め、1人で何人もの人物を演じることでしょう。顔の向きをクルッと変えることで、人物の違いを表現するんです。ちょっと試しにやってみると――。

 若者「ごめん下さい」

 ご隠居「あぁ、お前さんか。こんな朝早くにどうしたんだい。まぁ、お上がり」

 ま、こういった具合です。

 そうそう。落語と言えば、気になるのは、何だかへんてこりんな名前かもしれません。

 これは「高座(こうざ)名」と呼ばれるもの。高座ってぇのは、寄席(よせ)で噺家が落語を披露する舞台のことで、要は舞台用の名前ってことです。浦高オチケンの場合は、部員10人全員が「銀杏亭+(なにがし)」と名乗っています。銀杏は、1895年創立と長い歴史を誇る浦高のシンボル。校章にも刻まれる、まあ、我々の魂みたいなものです。

 ただ、下の「某」の部分には、悲喜こもごものドラマが生まれます。新入部員の高座名は先輩たちが勝手に決めるのがならわしだからです。

 2年前にその儀式を受けた私の場合――

 先輩「キミ、将来の夢は?」

 私「えっとぉ、医師です!」

 先輩「じゃ、『師』の字を使おう。そう言えば、室内楽部(いわゆる弦楽部)にも入ってるんだろ?」

 私「はい!」

 先輩「じゃ『弦』を使おう。師弦」

 私「ありがとうございます!」

 拍子抜けするぐらいのまともな決まり方! でも、そこは男子校のオチケン。時折、テキトー過ぎる名前も登場します。今年の春もそうでした。

 同級生「自己紹介して」

 後輩「黒い犬が好きです!」

 同級生「じゃキミ、『銀杏亭(ブラック)(ドギー)』ね」

 後輩「………」

珍妙な名前も

 浦高のオチケンは少なくとも1940年代から活動していたのですが、当初は「銀杏亭」とは名乗っていなかったみたいで、資料をさかのぼると、珍妙な名前も少なくありません。

 「月見亭うどん」「星廼(ほしの)()こんぶ」「三柳亭(さんりゅうてい)みかん」

 食い意地が張った男子高生ならではと言えば、ならではですが、もしも彼らが会話をしたら、なんて想像しちゃうと思わず笑っちゃいます。

 みかん「おい、こんぶ。不機嫌そうな顔をしてどうした」

 こんぶ「いや、実はうどんの野郎と大げんかしたんだ」

 みかん「おやおや、相性抜群のお二人さんがどうした?」

 こんぶ「だってうどんのヤツ、俺をダシにして、いつもおいしい思いをしてやがるんだ」

 な~んてね。