闘論(2)

洛南高付属中(京都府) ディベート部

こんな話です

 古都・京都の洛南高校付属中でディベート部に入った僕、大林。徹底的な自主練で技量を磨いた先輩たちは創部2年目にして、全国大会出場という快挙を成し遂げるが、新チームは見えない壁に直面する。

▽過去の連載

 闘論(1)

大切なのは個の力か チームワークか

 我が洛南高校付属中のルーツは約1200年前の平安時代、弘法(こうぼう)大師(だいし)が庶民の教育のために開いた私立学校「綜芸(しゅげい)種智院(しゅちいん)」にまで(さかのぼ)る。校舎も世界遺産「東寺」の境内にあるから、生徒たちはいつも歴史と伝統を肌で感じながら学校生活を送っているんだけど、僕、大林が部長を務めるディベート部について言えば、そんな時の重みとは無縁の存在かもしれない。

 中学ディベート部は僕が入部したとき、創部わずか1年というできたてほやほやの部だったのだ。先輩は3年が1人、2年が2人。そして右も左もわからない僕ら1年が6人。伝統の練習法もないから、試行錯誤で討論の腕を磨いていた。

1分で450字読む

 「ディベートで大切なのは個の力か、それともチームワークか」――。おそらく多くのディベート部がチーム作りで悩むテーマだと思う。

 1チーム最大4人で討論に臨むのがディベートだけど、当時のうちの部は、間違いなく、サッカーで言えば南米流、個の力を重視したスタイルだった。

 月、水、土に行われる練習は、驚くほど地味な“自主練”の繰り返し。ある先輩はノートパソコンで原稿を書き続け、別の先輩は右手にストップウォッチ、左手に紙を持ち、ひたすら原稿を読む。しかもその早口がまた、半端ない。

 「○×□だから、%$#で、ほにゃららすべきなんです!!」

 何やっ! 聞き取れへん!

 先輩たちによると、これは「読み練」という練習。何でも全国レベルでは、限られた時間でより多くの情報を伝えるために、1分で450字ほどを読むスピードが求められるらしい。

 ちなみにテレビ局のアナウンサーが原稿を読むスピードは1分間で約300字。「アナウンサーよりも速く、かまへんように原稿を読まないとアカンねん」と誇らしげに語る先輩が、僕には熟練の職人のように見えた。

 この夏、僕ら洛南は先輩たち3人だけで、「ディベート甲子園」の近畿・北陸地区予選に臨み、なんと創部2年目にして初の全国大会出場を決めた。全国では、優勝した東京の開成中に決勝トーナメント1回戦で敗れたけど、まさかの快進撃に「このまま行けば、いずれ全国制覇も」って淡い期待も芽生えた。

全国の壁

 夏の甲子園が終わると、ディベート部も野球部と同じく新チームに代替わりする。先輩たちが試合で使うデータ集めの手伝いや、読み練のサポートなど、球拾いみたいなことをしてきた僕ら1年も、ついに試合に出場することになった。

 これまでと同様、個々で読み練をひたすら反復し、練習試合を重ねた新チーム。ディベート特有の早口や瞬発的な思考回路は身に付いたし、個々の力量も決して他のチームと比べて劣っていないはずだった。

 ただ、僕らはそこで壁にぶつかった。前年超えをめざして出場した夏のディベート甲子園では、なんとか地区予選を通過したけど、全国では予選リーグで1勝もできずに敗退したのだ。

 このままでは、来年も同じ結果になる。直感的にそう思った僕は、新チーム最初の部活で部長に立候補し、仲間に告げた。

 「全国で勝つには、技術を磨くだけやなくて、チーム戦術が大切なんやないかな。みんなで議論しながら練習しよう」

(高校生の登場人物はすべて仮名です)