闘論(3)

洛南高付属中(京都府) ディベート部

こんな話です

 創部3年目の洛南高校付属中ディベート部の部長に就任した僕、大林は昨秋から組織力強化を第一としたチーム改革に取り組むことにした。チーム力は着実に上がり、3月1日、ついに夏のディベート甲子園の論題発表の日を迎えた。

▽過去の連載

 闘論(1)(2)

みんなの思い、意見を共有する

 個人技中心から組織力重視へ――。昨秋、創部3年目のディベート部で部長に就任した僕、大林が掲げたチーム改革のテーマだ。

 チームの基本方針は「みんなの思い、意見を共有する」。1こ下も含めた部員10人でできるだけ多くの時間を過ごし、議論を重ねる。もちろん、原稿書きや読み練など、手探りで個の力を高めてきた先輩たちの遺産は、それぞれが自主的に積み重ねるべきトレーニングとして受け継ぎつつね。

全員で資料準備

 僕らが考える組織力とはなにか? まずそこを説明しよう。

 ディベートは、事前に提示されたある論題に対して、1チーム4人ずつで肯定側と否定側に分かれて戦う。

 論拠となるのは、官公庁や民間の調査研究機関などの統計、新聞記事など客観性の高い資料。本番では、事前の準備期間にこうした資料をどれだけ多く集め、議論の行方に応じて使いこなせるかが勝敗の鍵を握る。

 これまでは部員数が少ないこともあって、出場する選手がそれぞれデータを収集し、簡単な打ち合わせをして本番に臨んでいたんだけど、僕らは日々の練習から部員全員で資料の収集と吟味を行い、全員が手持ちの資料を自在に操れる体制を作り上げることにした。

 練習の題材で活用したのは、1996年から始まったディベート甲子園の論題。まず各自が自宅のパソコンで調べ、印刷して持ち寄った膨大な資料を全員で検討する。

 「肯定側で柱になるデータはこれやろ」

 「この統計は突っ込まれたら、ちょっと反論できないかも」

 本番を意識して、何日もかけて議論すると、武器として使える資料は大体50点に1点ほどに絞り込まれる。その後は、勝ち残った資料を基に肯定側と否定側双方の立論(自分たちの主張)を練り上げ、想定される質問や反論を3日間かけて話し合う。

 最後の仕上げの部内試合が終わるまで一つの論題を仕上げるのに1か月半かかるけど、このやり方を始めてすぐ、僕は手応えを感じた。全員が自分たちが使う資料の意味、想定される反論への準備ができているのはもちろん、武器として採用しなかった資料の弱点まで共有できるようになっていたからだ。

 スカイプを使って行う遠隔地の強豪校との練習試合でも、いつの間にか僕らは、互角の戦いを演じられるようになった。

甲子園の論題

 3月1日は全国の中高生ディベーターにとって特別な日になった。夏のディベート甲子園での論題が発表されたからだ。

 今年の論題は「日本は小売店の深夜営業を禁止すべきである。是か非か」――。主題は24時間営業のコンビニというのは誰にでもわかると思う。さて、この論題をどう切るか……。

 「肯定側の主張やったら、売り上げは低いけど、人件費が高くなる深夜営業を店のオーナーに強いるのは不当という意見でいけそうな気がするな」

 「否定側なら、深夜営業の店は防犯施設としても機能しているところかな」

 本番を前にこれまで以上に活発に交わされる激しい議論と厳しい資料の選別。ディベート甲子園地区予選を3勝1敗の2位で通過した僕らは、中学生活最後の夏を前に、今年の目標をもう一度、確認した。そう。全国制覇だ。

(高校生の登場人物はすべて仮名です)