闘論(4)

洛南高付属中(京都府) ディベート部

こんな話です

 「全国優勝」を目標にディベート甲子園に臨む洛南高校付属中ディベート部。部長を務める僕、大林を中心に組織力を強化したチームは初戦から勢いに乗り、準決勝まで勝ち進んだのだが……。

▽過去の連載

 闘論(1)(2)(3)

一夜で新たな主張 全国制覇へ「かけ」

 8月6日、ついに全国大会当日がやってきた。僕、大林にとって中学生活最後の夏。僕らの組織力は強豪相手にどこまで通用するのか。胸を高鳴らせ、会場となる東京・池袋の立教大学に向かった。

難敵下し準決勝

 「日本は小売店の深夜営業を禁止すべきである。是か非か」という論題で戦う今年のディベート甲子園。中学の部には各地区予選を突破した24校が出場し、3校ずつ8グループに分かれた予選リーグの上位2校が決勝トーナメントに進む。

 1試合目の相手は初出場の札幌光星中(北海道)。既に1敗して後がない相手に、否定側に立った僕らは「肯定側は、国が深夜営業を禁止すれば店のオーナーの負担が減ると主張するが、そもそもその負担は経営者であるオーナーが自己責任で負うべきもの」との反論で完勝。決勝トーナメント進出を決めた。

 グループ1位をかけた2試合目は過去3度の優勝を誇る名門、東海中(愛知県)だ。

 肯定側の僕らの主張は「店のオーナーの過労を減らせる」で、実は第1試合で倒した相手と同じ内容。この試合は、論の進め方次第で展開が全く変わるディベートというゲームの醍醐(だいご)味を体感できる好勝負となった。

 相手は僕らの主張に「深夜営業は防犯施設としての役目も果たしており、救われている人も多い」と反論。

 よしっ、チャンス!! ここで相手に反論する役の高野が「そもそも小売店の役割って防犯じゃないですよ」と流れをこちらに持ってくると、フィニッシュは僕。「防犯は本来、警察の役割で、過労で苦しむオーナーに押しつける必要はない」とたたみかけ、難敵を下した。

 勢いに乗った僕らは、午後の決勝トーナメント1回戦、準々決勝で相次いで強豪の関東勢を破り、翌日の準決勝に進んだ。

 「このまま全国制覇や!!」

 普通ならテンションマックスになってるはずなんだけど、その夜、僕らはまるでお通夜のようにどんより沈んでいた。

 僕らは準決勝で否定側に立つことが決まっていたが、相手のいわき市立中央台北中(福島県)を偵察したメンバーから、「今のままでは勝つのは難しい」との報告が上がっていたからだ。

 これまでの主張でいくか、新たな主張を作るか――。全員で最後の議論が始まった。

 出した結論は「優勝するには、かけに出るしかない」。その後はほぼ徹夜で「深夜営業を禁止すれば失業者が増える」との新たな主張を作り上げた。

 が……。やはり一夜漬けで勝てるほど、全国4強は甘くなかった。相手の意見を全く崩せず、最後のアピールを担当する僕も、慣れない論展開に「え~と」を連発。自分たちの戦いができないまま、僕らの夏は終わった。

長い歴史の礎

 世界遺産「東寺」のシンボル・五重塔が見えるいつもの部室。ここでは今も後輩が山積みの資料を前にあ~でもない、こ~でもないと議論を続けている。

 聞けば、来年も組織力重視で臨むのだとか。いや、もしかしたら今年以上かも。全国制覇には、肯定、否定それぞれの主張をもっと磨き上げないといけないとわかったから。

 創部4年目で全国3位という偉業を成し遂げた僕らディベート部。誇らしく、少しだけほろ苦いあの経験はきっと、これから続く長い歴史と伝統の礎となってくれるはずだ。

(高校生の登場人物はすべて仮名です。完)(文・吉田拓矢 写真・金沢修)