Action!(3)

米子高専(鳥取県) 放送部

こんな話です

 高校生向けの映画コンクール「eiga worldcup」に向け、米子高専放送部はこの夏、新作映画「夢見る乙女のcontinue」をハードスケジュールで撮影していた。脚本作り、撮影の後には当然、膨大な編集作業が待っていて――。

▽過去の連載

 Action!(1)(2)

自称・次期監督 「編集漬け」の14日間

 9月末、「eiga worldcup」に向けた撮影はクライマックスを迎えていた。映画はただ撮って終わりではない。作品の出来栄えを左右するのが同時進行で進む編集作業だ。

 「俺、編集やりますよ」

 撮影メンバーに声をかけたのは2年の島崎。もともと動画編集が好きで入部した自称・次期監督候補だ。「頼む」。現監督の河本(かわもと)からSDカードを手渡された島崎は、意気(いき)揚々(ようよう)とパソコンを開いた。それが受難の始まりとは知らずに……。

テイク数多すぎ

 〈シーン10のテイク数30〉

 えっ、多くね……。まず目を疑ったのはテイク数。カメラ2台を回し、広い画角と狭い画角、両方撮っておくことは、ままある。だけど、ワンシーンの数がこんなに多いと、OKカットを探すのも一苦労だ。

 「あの河本さん、これは?」

 「あー」という河本の気のない返事にイラッときた島崎。

 そうだ、忘れていた。ロケが大好きで超楽観主義者のこの人はいつも編集のことなんか後回し。これまでも何度、痛い目を見たことか。

 「いや、『あー』じゃなくて。多すぎでしょ。そもそも絵コンテもない」

 「僕の頭の中にあるよ」

 「はぁ?」

 撮影前後に参考にする絵コンテは、コマ割りの漫画のようなイメージでいわば完成品の下書き。編集作業には必須だ。

 「ピンぼけも多いんですけど」

 「そう? じゃ、今から撮りに行こっか」

 絶句する島崎を尻目に、河本は軽やかに部室を出て行った。

顧問は救世主

 「絶対俺は次期監督。絶対俺は……」

 島崎はブツブツと言いながらデータと格闘した。やっかいだったのは、今回の作品が、主人公の女子生徒が描く小説の中の世界と、彼女の現実世界が複雑に交錯しながら進んでいくこと。どうすれば、二つの異なる世界をうまく描き分けられるか……島崎は最後まで頭を悩ませた。

 「色調を変えてみたら?」

 救世主となったのは、顧問の田中(すすむ)先生。学生時代から映画を撮り、アルバイトでも結婚式場のビデオカメラマンをしていた経歴の持ち主で、動画の編集能力はプロ級だ。

 なるほど!! 小説の世界に少しだけ青っぽく補正をかけると、あら不思議。ぐっと幻想的な雰囲気が増し、見違えるような仕上がりに。最大の難所を突破した島崎はパソコンに向かってぐっと身を乗り出した。

ギリギリで完成

 「お、終わった……。セーフ」

 作業が終了したのは、作品の提出締め切り1日前。部室の片隅でぐったりしていた島崎だったが、その日は「40時間の動画と音声を14日で編集した男」として部員全員から喝采(かっさい)を浴びた。

 「ザッキー、ありがたや~」

 主演女優の升田(ますだ)に褒められ、ようやく現実世界に戻る。

 「まあ、この部にライバルとかいないね! 独占禁止法にひっかかるくらいのレベルで!」といつものように軽口をたたくと、すかさず田中先生が笑顔でツッコミを入れた。

 「でも、現場を知らない次期監督って、ちょーっとなあ」

 いや、そんな時間は……と言いかけてやめた。これを機に河本さんが大事にする現場ってのにも、少しは足を運ぼうか。次期監督の一歩になるなら――。

 島崎はそう思った。