社会

大好き!灯台~今年は「灯台150周年」~

 ダムや橋など公共施設を観光するインフラツーリズム。その一つとして「灯台」が注目を集めている。その魅力を情報発信する愛好家「灯台女子」もいる。今年は、日本初の洋式灯台「 観音埼 ( かんのんさき ) 灯台」(神奈川県横須賀市)の起工から150年。今も変わらず暗い海を照らし、船の道しるべとなっている。節目の年に灯台と関係者を訪ねた。(地方部・斎藤健二)

日本初の洋式灯台が建てられた岬をドローンで空中散歩

1世紀半、船の安全守り続けた光

  • 「観音埼灯台」
    「観音埼灯台」

 4月中旬、空があかね色に染まる頃、観音埼灯台のランプが点灯し、レンズが回転を始めた。

 「ピカッ、ピカッ」。記者が操縦するドローンに強い光が向けられる。15秒ごとに2回きらめき、光は35キロ先まで届く。ドローンで上空から見る姿は、暗い東京湾を照らす孤高の存在。150年間、日々船を見守り、安全を支えてきた歴史の証人だ。

  • 「初代の観音埼灯台。大正時代の地震で壊れた(公益社団法人「燈光会」提供)
    「初代の観音埼灯台。大正時代の地震で壊れた(公益社団法人「燈光会」提供)
  • 「2代目は完成後9か月で関東大震災に遭遇」(公益社団法人「燈光会」提供)
    「2代目は完成後9か月で関東大震災に遭遇」(公益社団法人「燈光会」提供)

 この灯台は1868年(明治元年)11月1日、フランス人技師によって起工され、その日は現在、灯台記念日と定められている。点灯したのは翌年(明治2年)2月11日。関東大震災などで2回倒壊した。現在の灯台は、1925年に再建された3代目だ。

 内部のらせん階段を上ると、展望台から東京湾と対岸の房総半島を一望できる。

 灯台の隣には、資料室(旧官舎)があり、歴史や仕組みが学べる。通年で一般に開放する「参観灯台」(全国15基)の一つで、毎年3万人以上が訪れる。

 所管する横須賀海上保安部は、11月に地元が主催する「観音崎フェスタ」に合わせて150周年記念事業を計画中だ。

 GPSの普及や省エネなどが理由で、国内の灯台の数はピークだった2003年度の3348基から17年度は3181基と減少している。06年度には全灯台が無人化した。

  • 「暗闇の中、きらめく観音埼灯台」
    「暗闇の中、きらめく観音埼灯台」
  • (東京周辺の参観灯台)
    (東京周辺の参観灯台)

灯台守 今は昔

  • 「観音埼灯台ての勤務を振り返る古賀貞夫さん」
    「観音埼灯台ての勤務を振り返る古賀貞夫さん」

 観音埼灯台は、灯台守(とうだいもり)の生活を描いた映画「喜びも悲しみも幾歳月(いくとしつき)」(1957年)の舞台にもなった。横浜市港南区の古賀貞夫さん(93)は60歳で海上保安庁を定年退職するまでの3年間、観音埼で灯台守を務めた。隣接の官舎に住み込み、ライトの管理はもちろん、特定の無線電波を発して船に位置や方位を伝えたり、濃霧や吹雪で視界が悪いときに霧笛を鳴らしたりするのも仕事だった。東京湾は世界有数の過密海域だけに、毎日が緊張の連続。ストレスで心臓を悪くしたという。

  • (観音埼灯台の構造)
    (観音埼灯台の構造)

 北は北海道、南は鹿児島。無人島の灯台に勤務したこともある。妻と娘2人を連れて、辺地への転勤の連続だった。

 退職から3年後の1989年、観音埼灯台は無人化された。古賀さんは「家族には迷惑をかけたが、各地の灯台で40年間無事故を守ったことが誇り」と胸を張る。


輪を広げる「灯台女子」も

  • 「灯台女子」の不動まゆうさん
    「灯台女子」の不動まゆうさん

 「灯台どうだい?」オヤジギャグのようなタイトルのフリーペーパーは2014年、東京都の不動まゆうさん(41)が始めた。灯台守へのインタビューや世界の灯台巡りなど、様々な情報を盛り込んでいる。同灯台が起工した11月1日に企画書を書いて、初点灯した2月11日に創刊した凝りよう。国内外の灯台を巡り歩いている。

 本業は大学の学芸員。建築とは関係のない音楽が専門分野だが、13年ほど前、羽田空港の沖合で光を放つ灯台に目を奪われて以来、とりこになった。灯台が「光を発する姿は、宝石から彗星(すいせい)の尾がでているようだった」。

 「灯台女子」として、年4回、12ページのカラー版を毎号3000部発行し、年間1000円のサポーターは300人を超えるまでになった。

  • (日本各地のデザイン灯台)
    (日本各地のデザイン灯台)
  • (世界にはこんな灯台も)
    (世界にはこんな灯台も)

 取材や印刷、各地の灯台や関連施設に置いてもらうための発送などの年間経費が約100万円かかるが、「灯台を訪れた人たちが手にし、共感してくれればうれしい」といい、「朝、夕、夜と時間帯によって、いろいろな見え方を楽しめ、灯台守の人間ドラマもある。観光にも一役買える」と訴える。

 不動さんは、ほかにも年1回の灯台フォーラムを主催したり、ロマンスの聖地として観光資源化を図る「恋する灯台プロジェクト」(日本財団・日本ロマンチスト協会主催)に参加したりしている。今年11月には海外からもゲストを招くイベントを開く予定で、灯台愛は尽きることがない。


[参考:リンク先]

 ・灯台どうだい?

 ・燈光会(見学できる灯台など)

 ・日本航路標識協会(デザイン灯台など)

 ・恋する灯台プロジェクト

灯台の内部に潜入!


 *動画と記事にカシミール3D(http://www.kashmir3d.com/)で作成した地図を使いました