データジャーナリズムは報道を革新したのか

ローラ・ハザード・オーウェン(ニーマン・ラボ副編集長)
  • データジャーナリズムは、まず自らを分析してみては?(画像はイメージ)
    データジャーナリズムは、まず自らを分析してみては?(画像はイメージ)

 「データジャーナリズム(世論調査やソーシャルメディアの書き込みなどのデータを解析・分析する報道手法)」と聞くと、「革新的」とか「未来の」といった枕ことばがついてくるという印象はないだろうか。だが、過去4年間にデータジャーナリズムを対象とした賞に推薦された国際的なデータジャーナリズムの企画200件以上を検証した最近の論文によると、報道自体は一般的に思われているほど変わっていないことがわかった。

 「我々の調査結果は、データ活用型ジャーナリズムは報道手法を劇的に変え、伝統的なニュースの発掘と報道に取って代わるものだという、広く浸透した見方に異議を唱えるものである」。10月にオンライン版「ジャーナリズム」誌で発表された論文の執筆者たちはそう指摘する。論文でドイツの研究者3氏は、2013~16年にデータジャーナリズムを対象とした賞に推薦され、最終選考まで残った225の企画を分析し、基のデータとその種類を記録し、ビジュアル化されているか、インタラクティブ(双方向性)機能は付いているか、どのような分野の話題か、制作者は誰かなどを検証した。

 以下は、この225企画から浮かび上がった傾向である。

■データジャーナリズムは今も労働集約的だ。署名が入っていた192の企画は「平均5人以上の個人名を筆者や寄稿者として紹介」していた。ほぼ3分の1(32.7%)が、「分析かビジュアル化のため外部パートナーの協力があったことを明記していた」。

■新聞が依然、データジャーナリズムの主な担い手であり、大半を受賞している。推薦作品の43.1%、受賞作の37.8%は新聞社が提出したものだった。続いて多かったのは、調査報道専門組織、雑誌とオンラインメディア、公共・民間放送、通信社の順だった。

■主な対象は政治分野だ。半数近い48.2%は政治の話題で、これに国勢調査や犯罪報告書など社会分野(36.6%)、ビジネスと経済(28.1%)、健康と科学(21.4%)が続いた。一つの分野だけを扱うものが多いのも特徴で、例えば武器を規制する法律が銃撃事件の件数にどう影響するかといった、政治と社会など二つ以上の分野にまたがる企画は少なかった。

■企画の大半は、独自に収集したデータではなく、公的機関のデータに依拠していた。実際に賞を受賞した作品の多くは、「申請によってか、自前の収集によって、あるいはリークによって取得したデータ」を含んでいた。しかし、報告執筆者によると、データジャーナリズムはしばしば公開性や透明性と結びつけられているにもかかわらず、検証した記事の実に5分の2以上で、使用したデータにどうアクセスしたかが明記されていなかったという。

■ビジュアル化に洗練はみられない。静止画像と図表が多くみられ、特に典型的なのは画像と図表の組み合わせ(40%)で、画像と地図の組み合わせが32.4%。地図と図表の組み合わせも31.1%だった。

■インタラクティブ機能でも洗練されたものはまれだ。拡大できる地図やフィルター機能がよくみられたが、これらはデータジャーナリストが使いそうな無料アプリにも多く含まれているからなのかもしれない。そもそも、ニュース報道を見たい人がどこまで双方向性のビジュアル化を欲しているかという疑問がある。

 結論として、データジャーナリズムはまだ労働集約的であり、突発ニュースへの対応も遅く、選挙に典型的にみられるように定期的にデータを得られる分野を扱うものが多い。「最新情報とテーマの広範さというジャーナリズムの重要な要素が欠落しているデータジャーナリズムは、伝統的な報道を補うものであっても、取って代わるものではないだろう」と研究者たちは結論付けている。

(10月16日配信記事から抜粋。全文は こちら

プロフィル
ローラ・ハザード・オーウェン( Laura Hazard Owen
 ニーマン・ラボ副編集長。新興のインターネットメディアのリポートで知られる米カリフォルニア州の「GIGAOM」では、編集長を務めたことも。ネットメディアに造詣が深く、駆けだしの頃からの得意分野だった。

2017年11月2日10:00 Copyright © The Yomiuri Shimbun